恋の事情は秘密の二乗

白妙 スイ@書籍&電子書籍発刊!

恋は痛みと共に

 誰にも言えない恋がある。

 口に出したらきっと壊れてしまう恋だ。

 壊れてしまうのは恋だけじゃない。

 ほかにも私にとって大切なものが、きっと色々壊れてしまう。



「ひまり! ごめん、今日一緒に帰る約束、今度にしてもらっていいかな?」

 授業が全部終わった放課後。帰り支度をしていたら親友がやってきた。軽く手を合わせてくる。

「いいよ。なにか用事?」

 軽く聞いたけど、親友・亜沙あさの返事を聞いて、どきっとした。

「うん、薫先輩と……一緒に帰ろうって言われて」

 ちょっと恥ずかしそうにかおる先輩、と言われた名前。

 私は数秒止まってしまった。

 でもハッとした。持っていたペンケースを、やや乱暴にバッグへ突っ込む。

「そ、そうなんだ。良かったね。行ってきなよ」

 顔も笑顔にした。ヘンなふうに思われないように。

 幸い、亜沙は気付かなかったようで、ほっとしたように笑った。

「ありがとう。明日は一緒に帰ろうね!」

「うん、ありがとう」

 それだけ言って、亜沙は教室の出口へ向かった。私はそれを見送ったけど、胸がずしりと重くなる。

 約束をナシにされたからではない。

 亜沙がこれから『薫先輩』と帰る。

 その事実が私の胸をちくちく刺してくるだけ。

 薫先輩と連れ立って帰る亜沙は、きっととても幸せなのだろう。

 一週間ほど前、彼氏になった彼と一緒に帰るというのは、さぞかし幸せなのだろう。

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