第95話 「ライギョ」が美味しくないわけがない

毎週家族で楽しみにしている「鉄腕DASH」。今日は「グリル厄介」というテーマで放送を組み立てていた。在来種の生態を脅かす外来種を捕まえ、多少は駆除し、それをおいしくいただく、という規格である。


番組の最初では、ターゲットとなる生物は明らかにならない。それがどれだけ在来種にとっての脅威なのか、というのが主題になる。それを見ながら次男君が「ライギョじゃない?」とボソッとつぶやいた。もうしばらく番組を見ていると、今回の厄介者が明らかになり、次男君の予想通り、「ライギョ」だった。次男君、お見事!


今回の舞台は佐賀県。佐賀県と言えば忘れられない思い出がある。テーマは忘れたが、何かの講演会があり、それに参加するために佐賀市に行った。結婚して間もなく、土曜に講演会があったので、佐賀の観光も兼ねて妻と二人で出かけた。講演会を聞いて、ホテルにチェックイン。「夕食は地元の料理が食べたいね」と二人で相談し、佐賀の郷土料理店で夕食とした。

有明海の干潟、と言えば「ムツゴロウ」。料理に「ムツゴロウの煮物?」らしきものが出た。ムツゴロウは一口サイズだったので、何も考えず一口でパクッ!と口に入れてしまった。


ところがムツゴロウ、サイズの割に骨が強く、しかも小骨が多い。口の中の骨を取り出すのにずいぶん苦労したし、骨を取り除いても、口の中は傷だらけになってしまった。もう20年ほど前のことだが、今でも佐賀旅行の思い出話をすると、「私がムツゴロウで苦労したこと」が笑い話として出てくるほど印象に残っている。


閑話休題。今回の「グリル厄介」がライギョだとわかって、ゴールが見えてしまった。「ライギョ」を生食すると「顎口虫」という寄生虫に感染し、幼虫が皮膚の下を這いまわる「幼虫移行症」を発症するので、絶対に生食してはいけないのだが、戦前の記録では、「ライギョの刺身はとてもおいしかったが、あとで苦労する」という記載が散見されていた、というのを、大学院生時代(寄生虫学講座に所属)によく目にしていたからである。


予想通り、取れたライギョは泥臭いにおいが身についていたものの、シェフが臭いを処理したら、やはりおいしい料理になったようで、出演者はみんな「おいしい、おいしい」と食べていた。なので問題は、どうやって継続的にライギョを確保するか、というところになるのであろう。番組では大規模に置き網漁を行なっていたが、大繁殖しているライギョを駆除する業者が、それを仕事として成り立てばライギョは商業ベースに乗るのだろうなぁ、なんてことを考えた。「ライギョ」もともとは朝鮮半島などが原産地であり、そこでは食用とされているので、おいしくないわけがないのである。そういえば、鉄腕DASHの別企画(確か、利根川を特集していた記憶があるのだが)で、澱みの中に潜んでいた大きなライギョを捕まえて、フィッシュハンバーガーに調理し、みんなで「おいしい、おいしい」と食べていた記憶がある。


戦前に多くの人が書いているのを読んだが、「ライギョはおいしいが、生では食べるな」というのが正しいのであろう。

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