第48話 それは「施設の問題」ではないのでは?
7/28 読売新聞の朝刊(いつも朝は長男が先に起床し、朝刊を取ってしまうので、どうしても仕事から帰宅後に朝刊と夕刊を読むことになる)で、高齢者施設での施設内死亡の問題が取り上げられていた。
施設内死亡の上位には、「誤嚥」、「転倒」が挙げられており、施設側の回答として最も多かったのは「人員不足」とのことだった。
施設の種類にもよるが、基本的には元気でスタスタ歩ける高齢者が施設に入ることはまれである。何らかの問題があり、「自宅での生活が困難」となった人が施設に入所するわけである。なので、入所者は「転倒する」のは当たり前、加齢とともに特記すべき疾患のない人でも誤嚥傾向は強くなるので、脳血管障害や認知症を有する方は「誤嚥」するのが当たり前である。
施設の人手が少ないのは、介護に対して国が十分なお金を掛けていないことが大きく、施設の運営側も、人にお金を掛けない傾向があることは大きい。
とはいえ、人手が足りていれば、転倒を防げるのか、あるいは誤嚥を防げるのか、というと必ずしもそうとは言えない。施設利用者側の要素が一番大きいように思える。
識者のコメントとしてNPO団体「安全な介護」という施設の方がコメントしていたが、指摘された問題を改善することによって「施設内死亡」は減るかもしれないが、「回復不能な寝たきり状態」の人を増やすだけ、のことではないかと思われた。
こう言ってしまうと身も蓋もないが、誤嚥窒息は「飲み込む機能の極めて低下した」ご本人の問題であり、転倒は、安定して歩行ができない本人の問題である。転倒については施設スタッフは「どこかに動きたいときは呼んでくださいね」と言って、スタッフのコールボタンを教えているわけである。その指示が守れず、自分で動いてしまって転倒するのは、少なくとも施設やスタッフに責任がある、とは言えないと思う。
「北欧では寝たきりの人はいない」と言われるが、それは簡単なことであって、寝たきりになりそうな人を積極的に生かそうとはしないからである。「口から食べられなくなったら人生の終わり」「動けなくなったら人生の終わり」という事が共通認識としてあるので、寝たきりになる前に旅立つからである。
誰もがいつかは亡くなる運命であり、いつ亡くなるかは誰にもわからない。ただ亡くなるリスクには違いがあり、高齢であるほど、基礎疾患があるほど高くなるのは事実である。
そういう点で、「高齢者施設での事故死」とセンセーショナルに報道する必要があるのかないのか、悩ましいところだなぁ、と記事を読みながら感じた次第である。
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