母と子(4)
カーテンから朝日が射し込み、私は欠伸をしながら体を起こしました。
「気持ちの良い朝ですね。」
ベッドから出て軽く身支度を済ませると、私はダイニングへと向かいました。
「おはよう御座います、お父さま。」
「おはよう、ユナウ。丁度今朝ご飯が出来たところだよ。」
「運ぶの手伝います。」
お父さまから料理の乗ったお皿を受け取り、私はそれをテーブルに並べていきました。
戦争が起きたあの日から二カ月――。
私は学院を卒業し、十一年ぶりの実家に戻ってきていました。
「いただきます。」
スクランブルエッグに塩をかけ、ハムで挟んで口へ運びます。
ふわふわの卵の触感とハムの噛みごたえは相性が良く、食材本来の味と塩のしょっぱさが合わさって口一杯にその風味が広がります。
「今日はお城へ行くんだったかな?」
「はい。ファラと一緒に女王陛下に呼ばれて。何でも今後のことでお話があるとか。」
「気をつけて行くんだよ。陛下にご無礼の無いようにね。」
「はい、ありがとう御座います。」
お父さまは十一年ぶりでも変わりありませんでした。
柔らかで落ち着いた物腰に、優しい声――。
それでも久々の再会に慣れず、戻って来て二カ月経った今も敬語が抜けません。
「それと、彼にも宜しくね。」
「ファラに?」
「彼にも今度ちゃんと挨拶をしないといけないね。ユナウの将来の旦那さんになるかもしれないんだから。」
「ちょっ、お父さま!!」
この時々冗談めかして弄ってくる感じも全く変わっていません。
「ほらほら、早く食べないと謁見に遅れてしまうよ。」
お父さまは楽しそうに笑いながらコーヒーを飲んで誤魔化していました。
「まったくもう……。」
頬が熱くなるのを感じながら私は早々に朝食を済ませ家を出ました。
お城に着くと正門の所でファラと丁度鉢合わせました。
「久しぶり……でもないか。見舞いにも来てくれてたもんな。」
「うん。もう体は平気なの?」
「取り敢えずはな。まだ経過観察は必要みたいだけど。」
「それなら良かった。」
私達はお城の中を歩きながらここ二カ月のことを話しました。
あの後ファラは病院の一室を借りると同時に入院しました。
取り急ぎどこが悪い訳ではありませんでしたが、六年も土だけを食べていただけに一度検査した方が良いという事になったんです。
結果として、人体の中にいてはいけない微生物がウジャウジャ見つかって、長期入院が必要と分かった時はどうなることかと心配になりましたが、今は薬を飲んで大分良くなっているようで一安心です。
「そういえば眼鏡、コンタクトにしたんだね。」
「ああ、こっちの方が楽でさ。」
「眼鏡の方が見慣れてるけど、付けてない方が格好いい。」
「そ、そうか。」
ファラは照れるように顔を反らしては人差し指で頬を掻いていました。
「義指の方はどう?」
「かなり良いな。流石にまだ違和感はあるけど、ない時に比べたら全然マシだ。上界の技術は凄いな。」
「トンベリさんの息子さんに感謝だね。」
「だな。もう二度と戻らないと覚悟してたから、感謝してもし足りないよ。」
あの日から数日後――ファラが丁度病院に掛かった時に、担当してくれたお医者さんの紹介で私とファラはトンベリさんの息子さんに会いに行きました。
トンベリさんの息子さんは精巧技師で、その腕前はヘイルベンで一番との評判でした。
その息子さんに、ファラはダメ元で両指の義指を作ってもらえないか頼んだところ快く引き受けてくださいました。
その精巧さは正に職人の技によるもので、一目では本物と見分けがつかない程でした。
人体とくっ付けても拒絶反応が起きることもなく、ファラは再び自分の指を手に入れたことで今までにないくらい喜んでいました。
「着いたな。」
そんなこんなで話をしている内に、気づけば謁見の間の扉前まで着いていました。
「おお、お待ちしておりました。ささ、女王陛下がお待ちです。どうぞこちらへ。」
扉の前にいた憲兵さんに促され、私達は玉座に坐す陛下の御前に立ちました。
「お二人とも、お呼び立てに応えていただき感謝します。」
「いえ!こちらこそお招きいただきありがとう御座います、女王陛下。」
私は一礼して、再び陛下を仰ぎ見ました。
あの日から、ガイラさんの活躍によって王法規律に則りレクロリクス王家に王位が返還されたことは良かったのですが、ナスタシア様がレクロリクス王家の人間であることが分かった以上、上界のことをまだほとんど知らないファラよりも、ナスタシア様を女王とした方が良いという判断になり、こうして即位されました。
そういえば、マルクス君もあの後スイルリード家に引き取られることになり、そういったことも含めて色々収まるところに収まりました。
「前置きは良いよ、母さん。それで今日はどうしたんだ?」
「ファラ、職務中は陛下と呼ぶように言ったはずですよ。母さんは止しなさい。」
「はいはい。で、陛下、今日はどういったご用件で?」
ファラは若干面倒臭そうに溜息をついて答えました。
ファラと陛下はお城以外でも良く会っているらしく、すっかり打ち解けているようでした。
親子ですから当たり前のことかもしれませんが、言い合う二人を見ていると何だか微笑ましくなります。
側近の方達もクスクスと笑っていて、陛下は少しお恥ずかしそうにされていました。
「全く貴方は……。まあいいでしょう。今日あなた方を呼んだのは他でもありません。」
陛下は一度咳払いをして仕切り直すと、先程とは打って変わって真剣な面持ちでその口をお開きになりました。
「下界の者達の協力もあり、昨日ようやく決壊していた結びの階段の修復が完了しました。」
「やっとか。」
「ええ。これで上界と下界の行き来が自由に出来るようになりました。そこで、今日まで帰れずにいる下界人の皆さんを一週間後を目途に送り届けようと考えています。今、憲兵や侍従達に準備させているところです。」
「そっか。ようやくみんな帰れるんだな。」
ファラは安堵の溜息をつきました。
カルフデラのカタピラで決壊してしまった結びの階段が二カ月かけて完成した。
それ自体は喜ばしいことです。
ガイラさんを始めとする公爵様達が先導し、下界の人達との間の橋渡しとなったことで、下界の人達の協力も得ることが出来ました。
それは、言うなれば上界と下界の初めての共同作業なわけで、これがきっかけで互いに手を取り合っていけたら良いと心から望みます。
でも、私は内心複雑な思いでした。
何故か――。
それは本当に我が儘で、どうしようもない理由です。
これまでは結びの階段が壊れてしまっていたから上界に留まるしかありませんでした。
しかし、修復が終わったということはつまり――。
「ファラも下界に帰っちゃうの?」
元々ファラは下界の人です。
将来的にこの国の王様になるのだとしても、一度馴染んだ土地に戻りたいと思うのはごく自然なことだと思います。
でも、一度戻ろうと思ったら次にファラと会えるのは最短でも二年後になってしまいます。
離れ離れになってしまう――。
そう考えれば考える程、一緒にいたいという気持ちが益々募ります。
「まあ、あっちに置いてきたものも多いからな……。こっちに住むにしても、やっぱり一度は戻らないと……。」
ファラは私の気持ちを察してくれたようでした。
困った顔で頭を掻く彼の姿に、自分の所為にもかかわらず申し訳なくなります。
「気持ちは分かりますが、本題に入らせて下さい。」
「すみません……。」
陛下に対して失礼だとは承知していましたが、私は覇気のない返事を返してしまいました。
「ファラ、貴方にお願いしたいことがあります。」
「お願い?」
何やら改まる陛下の御様子にファラは怪訝な顔を向けました。
「上界と下界の行き来が自由になったとはいえ、今すぐ無条件に開放する訳にはいきません。結びの階段には中継地点に食糧庫や休憩所がありますが、とはいえ下りるには一年もの時が必要です。それは過酷な登山と同じで、無暗に開放すれば死者が出かねないからです。」
「確かに。下界でも登った人間は父さん以外に帰って来た記録がないし、気楽に開放はできないか。」
「ええ。ですから往来には暫くは制限を設けることになります。」
「なるほどね。それで、俺へのお願いってのは?」
「ファラ、貴方には下界側の大使となって欲しいのです。」
「は?大使?俺が?」
全く考えていなかったのか、それは間の抜けた返事でした。
「レクロリクスの血――すなわち上界の血を引きながら下界人でもある貴方が一番適任なのです。」
「そう言われてもな。」
ファラはあまり気が乗らない様子でした。
頭を掻きつつ困った様子で目を泳がせていました。
「私に残された時間はもうあまり長くはありません。」
しかし、陛下のその言葉でファラの気持ちは一変したようでした。
陛下の言葉の意味は、ファラにも、私にも一目瞭然です。
「貴方も知っての通り、ここ数百年のレクロリクス家の人間で四十を超えて生きた例はほとんどありません。私も今年で三十八。短く見積もってもあと二年前後が限界でしょう。」
「そんな……。」
レクロリクス王家の人達は、短命という近親相姦の代償を負っている。
それはファラだけでなくナスタシア女王陛下も同じで、そう考えるとファラが国王になる日もそう遠くはないのでしょう。
側近の人達も悲痛な顔をして悔しそうにしています。
「私がいなくなるまでにレクロリクス王家の悲願である王制の撤廃――延いては、民主制を確立するのは恐らく難しいでしょう。私の後を継ぐのはファラ、貴方です。上界と下界双方を良き未来に導く為にも、貴方には大使となって見聞を広め、多くの経験を積んで欲しいのです。」
「母さん……。」
「もう【影大使】などと言う必要はありません。これからは公に、言うなれば【
それは、一般人の私からすればあまりにも重責でした。
けれど、王族として一国を背負うということは、そういうことなのだとも思います。
ファラの顔を見た時、彼もまた王族の血を引いているのだ、と私は改めて理解しました。
「やるよ、俺。どれだけ上手くやれるか分かんないけど、自分なりにやってみる。それが父さんの望みでもあるだろうからさ。」
「ありがとう。」
陛下とファラは互いに笑顔で答えました。
「さて、これで次の話が出来ますね。」
「次の話?」
ファラが怪訝な表情を陛下に向けると同時、今度は私が陛下と目が合いました。
「あなた方を呼んだ理由はもう一つあるのです。ユナウさん。」
「は、はい!」
いったい何でしょうか。
ここまでの話は確かに私には関係ありませんでした。
私まで呼ばれたということは、私にも何か役目を与えようということでしょうか。
私に出来ることなんてあまり無いように思いますが。
「今回の件、貴女には幾度となく助けられました。貴女がいなければ、レクロリクス王家は何れ闇に葬られていたことでしょう。」
「そんな、私はそこまで大層なことは――」
「しかし、それは禁を犯してのこと。相応の罰を下さないわけにはいきません。」
陛下にお褒めいただいて私は一瞬気持ちが逸りました。
昂った気持ちは徐々に鎮静され、逆に冷めた空気が身を蝕みます。
「陛下それは……。」
「この国を救ってくれた貴女の行動には勿論感謝はしています。しかし、何事においても良い結末を迎えれば禁を破っても良いことにはなりません。」
「いや、でも母さん、それは――!!」
「陛下。」
「へ、陛下……ユナウの功績は、禁を破ったことも払拭するくらいのことだろ!今回は大目に見てくれよ!」
「良い結末を迎えたのは結果論でしかありません。今回の件を良しとしてしまえば、無茶無謀に禁を破る者が今後出て来てしまうかもしれません。」
「でも――!!」
執拗に食い下がってくれるファラに涙しそうになるも、私はぐっとこらえてファラを止めました。
「良いのファラ。私、罰を受けるよ。」
「良くねえよ!せっかく全部丸く収まってるのに、ユナウだけ……。こんなのあんまりだ。」
納得いかない様子のファラを何とか押さえ、私は再び陛下に頭を下げました。
「陛下、私は陛下の判断を受け入れます。」
納得いかない部分は私にももちろんあります。
けれど、陛下のお考えも理解出来ます。
それに陛下もこの判断を下さないといけないことに心を痛めておられるのはその口調や声のトーンから肌に感じます。
これ以上陛下を困らせてはいけない。
陛下にとってこれが示しを付けることになるのであれば――。
そう思えばこそ、私はどんな罰でも甘んじて受け入れます。
「すみません。」
「いいえ、陛下のお気持ちを尊重します。それで、罰と言うのは?」
禁足の森に幾度となく侵入し、卒業前に学院を抜け出し、法廷で場を混乱させてしまい、その規律を乱してしまった。
どんな罰が下されるのか、怖くて震えそうになります。
喉の奥に溜まった唾を飲み込んだのと同時に、陛下は仰りました。
「ファラを【下界側の公大使】としたように、貴女には【上界側の公大使】になってその務めを果たしてもらいます。」
陛下のご発言の意味を私は直ぐに理解が出来ませんでした。
もっと罰らしいものを想像していただけに唖然としてしまいます。
「ロースハイム家やエリメラ達はこれまでに多くの下界人を殺してきました。先の戦争でも死者こそ出ませんでしたが、上界側も下界側も多くの負傷者を抱えました。その者達を始め、上界にも、下界にも、双方ともに良く思わない者がまだまだ数多くいるでしょう。上界と下界が手を取り合い、助け合っていく為にも、あなた方二人にはその手本――懸け橋となって欲しいのです。」
陛下のお考えは分かりました。
でも、それって――。
「ええっと……それはつまり、ユナウも俺と同行したり、上界と下界を好きに行き来していいってことだよな?」
ファラの問いに、陛下は微笑んで頷かれました。
「い、いいんですか?それじゃあ罰にならないんじゃ……。」
「これはこの国千年の歴史を遡っても、まだ誰も担ったことのない役目です。その苦労、責任は誰にも計り知れないでしょう。罰と呼ぶには十分です。」
それは、罰という名の事実上は褒美でした。
ファラとずっと一緒にいられる。
上界でも、下界でも、何処までもファラと一緒に行けるということ。
「やったな、ユナウ!これでずっと一緒にいられる!」
「うん!うん……!!」
気づけば私は目に涙を浮かべて笑っていました。
ファラも満面の笑みで喜んでくれています。
「ありがとう、母さん!」
「ありがとう御座います、陛下!」
私とファラはお礼を述べると、深々と頭を下げました。
そんな私達を見て陛下は玉座から立ち上がり、段差を下りて私達の前まで歩み寄られました。
「さて、では行きましょうか。」
そう言って陛下は玉座の方を向かれました。
「行く?行くって何処に?」
ファラが小首を傾げるのも構わず陛下は再び段差を上がり、私達はその後ろをついて行きました。
玉座の後ろには通路があり、そこを下っていくと最奥に白い光が見えてきます。
更に進んで行くと光の正体が陽光であると分かり、私達は外へと出ました。
「ここって……。」
そこは見晴らしが良く、どこまでも続く青い空はもちろん、遠くの建物までよく見えます。
「うわっ、何だよこの人だかり!?一体何人いるんだ!?」
ファラの声に下を見てみると、そこにはどうしたことでしょう。
この国の人口の過半数は占めそうなくらい視界いっぱいに人々が私達を見上げ、騒いでいました。
「そっか、ここって啓示の間だ!でも、どうしてこんな沢山の人が……。」
「あ、あそこ!ガイラ達がいるぞ!」
ファラが指差した方に視線を送ると、確かにガイラさんとクリスちゃんの姿がありました。
「公爵様達も一緒だよ!」
「おいおい、あっちにはモルガフの爺さん達もいるぞ。」
上界の皆はもちろん、帰れずにいた下界の人達までいるとなると、下の広場にいるのは数百人どころではないのかもしれません。
「ここにいる皆には重大な公表をすると、あなた方とは別に招集を掛けていました。」
「いつの間に。」
「全然気づかなかった。」
私達が驚いて眺めるのを尻目に、陛下は前に出て大声で叫ばれました。
「皆の者よ、今ここに、上界と下界を繋ぐ懸け橋が生まれました。ファラ=レクロリクス、ユナウ・レスクレイズ=アルバートン、以上の二名をそれぞれ下界の公大使、上界の公大使として任命することをここに宣言します。彼等はその責を全うし、尽力することでしょう。ヘイルベンの民よ、下界の民よ、皆そのことを胸に刻み、ゆめゆめ忘れることなきよう努めなさい。」
陛下の宣言に、民衆は一瞬の沈黙の後、賛同の意として拍手の嵐でそれに応えました。
「凄い……。」
陛下のその堂々たる姿に、私は思わず見惚れていました。
「さあ、次はあなた方が皆に応える番ですよ。」
そう言って陛下は後ろに下がり、私達の背中を押しました。
「ええっと……。」
応えるといってもどうすれば――。
陛下のように何か宣言すればいいのでしょうか。
でも、何を言ったらいいのか思いつきません。
「ユナウ。」
その声に横を向くと、笑顔で左手を差し出すファラがいました。
そっか――。
ファラの考えを察して私も気がつきました。
何かを言う必要なんてない。
言葉が無くても、こうするだけで皆にも私達の想いはきっと伝わる。
「ファラ!」
私は右手でファラの手を取り、そして一緒にその繋いだ手を天高く掲げました。
〝 これが、私(俺)達の想い――。 〟
同時にそう呟いた瞬間、さっきよりもずっと大きな拍手喝采と歓声が広場を包み込みました。
その拍手と歓声だけで皆にも届いたのだと確信できます。
「すべての上界人、下界人が、手を取り合うことに肯定的なわけではないでしょう。あなた方二人を待ち受けているのは、天災よりもどうにもならない困難ばかりかもしれません。ですが、少なくともここにいる民達は、私も含めてあなた方と同じ気持ちです。あなた方二人ならきっと素晴らしい未来を築ける、とそう信じていますよ。」
殿下の言葉に、私達は二人で頷きました。
「さあ、皆のものよ!お固い啓示はここまでです。遅ればせながら、これからは皆で派手に盛り上げて下さい!今日は〝千年祭〟です!」
陛下のその言葉に、待ってましたと言わんばかりに皆さん何処からともなくお酒や楽器を取り出し、飲んでは踊り出し、益々盛り上がりをみせました。
「俺達も行こう!」
「うん!」
ファラと私は広場に向かって駆け出しました。
公大使としての責――。
それは想像しているよりもずっと重いものかもしれない。
けれど、ガイラさんがいて、クリスちゃんがいて、陛下がいて、皆がいる。
そして何より、私の隣にはファラがいる。
何があっても大丈夫。
みんなと力を合わせれば、どんな苦難も乗り越えられる。
私はそう信じています。
そして、いつかきっとファラに応えたい――。
あの日、あの石室で、最後にファラが陛下から貰ったオルゴール。
その中に残されたファラのお父さまの言葉。
その日が来るまで、ファラのお父さまの期待に応えられるように、ファラにとってのその人で在り続けられるように、私は今の気持ちを大切にしようと思います。
ファラ、ようやくここまで来たんだね。
それならもう真実も知ったはずだ。
でも、ここがゴールじゃないよ。
むしろ真実を知った今が始まりなんだ。
レクロリクスの遺志は継いでもいいし、継がなくてもいい。
お前はお前がしたいようにしなさい。
誰かに縛られた人生ではなく、自分自身で人生を切り拓くんだ。
お前が自分で決めた道なら、遺志を継がなかったとしても誰も怒らない。
私も、母さんも、お前の幸せを一番に願っているよ。
最後に、願うことならいつか私達にお前の愛する人を紹介しておくれ。
お前はどんな人を好きになるんだろうね。
ファラが好きになって、ファラを好きになってくれた人だから、きっと世界で一番素敵な女性に違いないだろうね。
お前がその人を紹介してくれる日を〝ずっとずっと上〟で楽しみに待っているよ。
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