魔術学校編
入学式
「ここが、魔術学校」
入学の当日。正門に入っていくたくさんの生徒と道を抜けた所に、その学び舎はあった。
小さめの城くらいある校舎に、大規模な魔術の行使のための平地や、広場などが見える。まるでちょっとした街のようだ。
「お待たせしましたグレイ! 正門から校舎までだけでも、ちょっと遠いですね」
アーネット様に声をかけられ、俺はそちらを向く。
黒と金を
「お……お似合いです、アーネット様」
「そう? お世辞でも嬉しいわ。それにグレイもなかなかかっこいいわよ」
俺の姿を見てくすくすと笑うアーネット様に、恥ずかしくなった俺はそっぽを向いて、アーネット様の含み笑いを背に入学式が行われる式館に向かって歩き出した。
「え~、皆さん、試験を突破されてね、ご入学していただいて、本当おめでとうございますね、ええ本当にね」
入学式では市民福祉を担当する貴族であるファーブル卿、つまりこの学校の校長先生が汗を拭きながら長いスピーチを披露した。生徒の中には寝ている奴までいた。俺も退屈しながら周りを見る。アーネット様に何かあったときのためにも、これから同期となる人間の顔を少しでも多く覚えておきたかった。
やっぱり、大抵は貴族が多いようだ。平民に多い黒髪はそこまで数が見えず、金髪が比較的多い。しかしその中でも、輝く様な美しい金の髪をのばしたアーネット様は目立っていた。周囲の男子生徒がちらちらと目線を送っているのを感じる。おい、不敬罪で
「ええと、それではこれで話を終わります。授業の説明などは明日からいたしますので、今日はみなさんこの後は寮に戻ってゆっくり休んでください」
その言葉に、やっと解放された……と俺は伸びをする。周りも大抵同じなようで、すぐに話し声などがちらほらと聞こえてくるようになった。俺はひとまずアーネット様に話しかけようと椅子を立つが、
「ファーラウェイ様ですわね!? 噂通りお綺麗です!」
「ファーラウェイ様。お初にお目にかかります。俺はリンブルグ子爵の息子で……」
彼女は既に、特に煌びやかな数人に囲まれていた。彼女は貴族の間でも一目置かれる存在であり、まあ当然である。俺は、困った顔をしながらも笑いながら話をする彼女を見て、彼女には楽しく学校生活を送って欲しいと思いながら黙ってその場を後にした。
一人で寮に戻った俺は、荷物を一通り片付けると、ふうと息をついてベッドに寝ころんだ。サタンが不機嫌そうに声をかけてくる。
『……人間の儀式は長い』
「前世、護衛で貴族の議会とか行ってたけど、これと比じゃないくらい長いぜ」
『はん、時間の無駄だな』
「お前がそれを言うのか? 時間を
そんなくだらない話をしながら、俺は明日から始まる学校生活に思いをはせる。授業で知らなかったことを知り、アーネット様と学校行事なんかをやったりして。それから学校生活を、気の合う
……友人。そういや友人って存在は、前世ではいなかった。ふと入学式の様子を思い出す。既に知り合いを作ってる奴はいたな、と気付いて、少しばかり出遅れた気にもなったが、まあ、明日からどうにでもなるだろう、と俺は楽観的にあくびをした。
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