第5話:ありのままのあんたが好き
高校を卒業すると、私達三人は別々の大学に進学した。それでも、定期的に会っていたが、光とは相変わらず疎遠だった。メッセージのやりとりはしてくれたが、会うことはなかった。電話のやりとりさえしてくれなかった。明日早いからとか、風邪ひいて声が出ないからとか、何かと理由をつけて電話を避けた。
ある日、ついにグループチャットで明凛が踏み込んだ。「光、あたし達のこと避けてない?」と。すると彼女は避けてることを認めた。理由は話してくれなかったが「成人するまで会いたくない」と彼女は言った。「今はみんなに会う勇気がない」と。私は高校に入る前に彼女が言っていたことを思い出した。思い切って、個別のチャットで彼女に問う。「整形したの?」と。彼女からは「まだ」と返ってきた。そしてグループチャットの方に「お願い。今はそっとしておいて。どうせ成人式で会うでしょ。その時に全て話すから。だから今はそっとしておいてよ」と続いた。
「……光」
私は彼女が好きだった。彼女の顔も、身体も、それからもちろん中身も。「整形なんてしなくても私はありのままの光が好きだよ」私は軽率に、そう送ってしまった。あの時同じことを言って傷つけたことを、私は失念していた。すぐに思い出して謝罪するが、光からは「頼むからもう放っておいてくれ」と一言。それ以降、どれだけ謝罪の文を送っても既読すらつかなかった。
やがて光は、グループチャットからも抜けた。「みんなのこと嫌いになったわけじゃない。月華に対する個人的な怒りはあるけど、私を傷つけようとして言ったわけじゃないことは理解してる。理解してるけど、傷ついた。ごめん。今は少し、みんなと距離を取りたい。成人式で再会したら、全て話す。どうかそれまで待っててほしい。何も言えなくてごめん。だけどどうかお願い。今はそっとしておいて。一人にして」という長文を残して。個別チャットの方も、何を送っても既読すらつかなかった。明凛と夕菜が送っても結果は同じだった。
「月華ちゃん、光ちゃんに何言ったの?」
夕菜からメッセージが送られてくる。「言えない」と返すと「分かった」と一言。それ以上は私を責めなかった。
「成人するまでそっとしておこう。ムカつくし、心配だし、もやもやするけど、光は約束を破るやつじゃない。今はただ、成人式で再会したら話すって言葉を信じよう」
と、明凛からのメッセージ。夕菜はそれに賛成した。私も渋々賛成した。するしかなかった。彼女がグループから抜けるきっかけを作ったのは私だから。私が何を言ったところで、彼女は応えてくれないと分かっていたから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます