ニラカナのリレー小説企画4話

霜月二十三

第4話

「た、助けてー!」

 エイリンゲール・ドゥマニティア・パッキャオが今後どうしようかと考えていたその刹那、助けを求める声が聞こえた。

「あの声は、マーシー! オレの弟だ、急ぐぞ!」

 ロレンソの焦る声につられて、パッキャオとペレスもロレンソに同行する。

 

 マーシーは小ぶりな棍棒を片手に持った魔物にポカポカ殴られていた。

 殴られている音は可愛らしいが、マーシーの周りに魔物が十匹以上いるとなったら、とても和んではいられまい。

 ロレンソは、そばに立てかけてあった農具を振り回して魔物を追い払い、ペレスは深く息を吸い込んで今以上に筋骨隆々とした体になって魔物を薙ぎ払い、パッキャオはそこらの石を魔物に投げつけ、パッキャオに向かってきた魔物を殴り倒す。


 どうにかマーシーや牛達を救い、牛小屋に避難させたはいいものの、数では魔物の方が優勢だった。

「くっそぉ! 数がっ! 多いっ!」

「――サンダー!」

 少女が杖を天に掲げ、そう唱えると、残りの魔物たちが雷を食らって黒焦げになる。

「その声、やはりマリー嬢ちゃんか!」

 脅威が去り、少女に駆け寄るペレス。

「ペレスさん! そっちの人は?」

「オレはロレンソだ」

「えっと、あなたじゃなくて……そっちの――」

「聞いたら驚くぞ、エイリンゲール・ドゥマニティア・パッキャオじゃ」

「パッキャオ?! 師匠と似てるなとは思ってたけど、名前まで一緒だなんて……!」


 戸惑うパッキャオに、ペレスとマリーは説明する。

 パッキャオという、ペレスをはじめとした強者達を雇えるほどの大金持ちで優秀な魔法使いがいること。王都へ招集されたのち行方知れずになっていること。マリーはその師匠を探して旅をしていることなどだ。


 二人はロレンソとマーシーとペレスに見送られて、牧場群を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ニラカナのリレー小説企画4話 霜月二十三 @vEAqs1123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ