第35話 リンドウ対アズワド

 ◇◇◇◇◇


 アズワドはリンドウを攻撃しつつも、少年の方の様子も伺っていたが、予想外の黒兵全滅に驚きを隠せない。


(あいつそんなに強かったか?わからんな。

 こっちは余裕だし、まずはあいつを殺っとくか。)


 飛剣の1本が音も立てずにリオに向かって飛んでいった。


 それにはリンドウも気付いていたが、あえて放っておいた。


(カゲロウが何とかするでしょ。)


 リオは飛剣にまったく気づいていない!

 が、リオの目の前で飛剣が弾かれた。


(はぁ!?なぜだ?)


 それ以降も飛剣はリオを連続攻撃するが、ことごとくリオの目の前で弾かれている。


(なんだ!?どうなってんだよ!)


 リオの周りで凄い勢いで剣が弾かれているのだが、リオ本人は放心状態でそれすらも気づいていない。



「幹部さん。よそ見してて大丈夫なの?」


「うるせえ!お前こそ、もう余裕がないだろうがよ!」


「あら。私が余裕がないと思っているのかしら?可哀想ね。

 相手の強さもわからないなんて残念。

 ヘルサイズの幹部ってこんなもんなのね。

 リオも心配だし、そろそろ決着をつけましょうか?」


「そのまま、そっくり返してやるぜ。」


 リオは放心状態のまま、リンドウとアズワドの戦いを眺めていた。


 なんだか、周りが静かだなぁ。

 リンドウ、大丈夫かなぁ?


 リオの心ここにあらず。


「じゃあね。そろそろ時間よ。

 幹部さん。さよなら。」


 リンドウが一瞬消えた。

 と同時にアズワドの前に現れて一閃。


 シュパ!


 バサッ!ゴロン!


 アズワドの頭が地面に転がっていた。

 リンドウはすでに刀を鞘に収めている。


 あ。リンドウが勝ったみたいだ。

 良かったな。良かった。


 リオは何かの映像を見ているように呟いた。


 リンドウはすぐにリオに駆け寄って抱き締めている。


「リオ!しっかりしなさい!リオ!」


「あ!リンドウ……。」


「リオ!目を覚ましなさい!」



「リンドウーーーーー!」


 リオは我に返った。

 そして。

 リンドウを力いっぱい抱きしめて号泣した。


「わ゛ーーーーーーーーーーーーーーー!」


「リオ。よく頑張ったわね。」


 リンドウも泣きじゃくるリオを力いっぱい抱きしめて、背中をさすっていた。

 カゲロウもここは迷彩を解かずにそれを見て想った。


(まだ、13歳やもんな。よく頑張ったわ。

 リンドウも辛いけど頑張ったわな。

 でも、これは必要なことや。

 これでええんやろな。)



 リオたちが感傷に耽っているところに、どこからともなく、ひとりの男がリオたちの目の前に現れた。


「いや、すごかったな。大したもんだよ。」


「誰?」


 リンドウはすぐに臨戦体制を取った。


(なんやねん!まだおったんかいな!

 気配はしとらんかったんやけどな。

 結構やばいやつかもしれん。)


「待て待て!俺はハンターズのものだ。

 敵じゃない。落ち着け!」


「あなた誰なの?ハンターズが何の用?」


「いきなりすまないな。俺はゼビウス・ミルドラというもんだ。

 ハンターズ本部から派遣されてこの国に来た。ほら、俺の冒険者証だ。見てみろ。」


(なんやて!S級やんか!?)


「間違いないみたいね。

 で、Sランクのゼビウスさんがなぜここにいるのかしら?」


「ああ。この国のヘルサイズがちょっとヤンチャしてるんで、見てこいってことだったんでな。ギルド支社に行く前にちょっと拠点を見て来たわけだ。

 そしたら、幹部がお前たちを追って出て行ったって聞いたものでな。

 それを追って来たってわけよ。

 ついでに拠点の連中は潰しといたがね。

 もう、拠点には誰もおらんよ。」


「ふーん。そういうことね。理解したわ。」


「それにしても、幹部を瞬殺とはな。

 ヘルサイズ幹部となれば、普通のSランクなら互角ってとこだが、お前は底が見えんな。

 たしか、リンドウ・ササキだよな。」


「そうよ。リンドウよ。

 あなたも底が見えないわね。ゼビウスさん。」


「それがわかるお前が凄いかもな。

 あとはそこの少年がリオ・ルナベルだったか。それと隠れてるのが、カゲロウ・モモチか。」


 カゲロウは迷彩の術を解いた。


「へえ。うちの術を見破るんや。

 これはやばいなぁ。

 Sランクちゅうのはみんなそうなんか?」


「いや、普通は気づかないだろうな。

 ただ、リンドウ。お前もわかるんだろ?」


「まあ、戦闘状態ならね。

 気にしなければ、気づかないわね。

 それくらい、カゲロウの術は優秀だと思うけど。」


「まあ、それは俺も同じだ。

 そういう意味では、リンドウとカゲロウは、そこらのSランクよりも上ってことになるんだろうな。なぜ、今まで世に出てないのかが不思議だよ。」


「そうね。それは秘密よ。

 ただ、私たちはリオのためにいるのよ。

 リオの敵は私たちの敵になるから注意することね。」


「はいはい。

 じゃあ、それはリオ次第ってことだな。

 ハンターズに所属している限りは、敵にはならないと思うぞ。」


 ゼビウスはリオを見て何か言ってくるか待っていたが、リオは無言であった。



「まあ、いい。

 リオが道を間違えないようにしてもらえると助かるな。

 お前たちとは敵になりたくないからな。


 じゃあ、挨拶はこれくらいにして、俺は先にギルド支部に行ってくる。

 お前ら、幹部の首を忘れるなよ。

 そいつは、飛剣のアズワド。1億ペロの賞金首だ。そいつの首が証明になる。

 じゃあ、また王都でな。」


 ゼビウスはそう言うと、リオたちの前から姿を消した。


「リオ。大丈夫?」


「うん。ごめんなさい。もう大丈夫です。」


「リオ。無理せんでええんやで。

 気持ちはわかるさかいにな。」


「うん。ありがとう。カゲロウ。

 もう大丈夫だよ。」


「そしたらええんやけどな。」


「リオ。一旦、王都に戻りましょう。」


「せやな。」


 リオたちは、ハプニングがありつつも、北東の魔物の森での合宿を終了して、王都に戻ることにした。


 この合宿で、リオのステータスはだいぶと上がったので、上々の成果である。

 それ以上に、今回の経験はステータスに現れないリオの心を成長させた合宿でもあった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 リオ・ルナベル 13歳

 レベル:22

 最大生命力:756

 最大魔法力:784

 戦 闘 力:606

 防 御 力:628

 瞬 発 力:700

 〈スキル〉

  ・剣術系統

   スラッシュLV2

  ・火魔法系統

   ファイアボールLV2

  ・水魔法系統

   ウォーターボールLV1

  ・風魔法系統

   ウィンドカッターLV2

  ・土魔法系統

   アースウォールLV1

  ・無魔法系統

   フィジカルアップLV2

  ・光魔法系統

   ヒールLV2

   キュアLV1

   ピュリフィケーションLV1

  ・闇魔法系統

   シャドウアバターLV1

  ・耐性系統

   物理耐性LV5

   魔法耐性LV1

   精神耐性LV7

   毒物耐性LV1

 〈固有スキル〉

  マイ・ガチャ

 〈加護〉

  女神ナスヴィーの使徒〈真〉

 〈従者〉

  リンドウ・ササキ〈サムライ〉

  カゲロウ・モモチ〈クノイチ〉

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 神装備ナスヴィーシリーズ


 *神剣+1

 *神盾

 *神兜+2

 *神手+1

 *神鎧+1

 *神足+2


 召喚獣


 ゼータ・ルナベル《シルバーウルフ+5》

 サラン・ルナベル《ゴールドウルフ+2》


 ◇◇◇◇◇

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