第1章 サウルの街
第4話 冒険者登録
◇◇◇◇◇
街道をまっすぐ歩いて行くとすぐに街らしきものが見えて来た。元いた辺境伯領都に比べれば、かなり小さい規模の街だと思われる。
リオ:「意外と近くにありましたね。」
リンドウ:「そうね。リオ、お金は持ってるの?」
リオ:「はい、持ってますけど、所持金は銀貨3枚の3000ペロです。
養子に預けられることになってたので、あまりお金は持たされてなかったので。」
リンドウ:「でしょうね。私は金貨を1枚預かっているの。街に着いたら渡すように言われているわ。
お金の管理は主人であるリオの役目なの。
当分はこれでいけると思うけど、冒険者で稼ぐ必要があるわね。
それとガチャも定期的に引くように女神様から言われてるからね。」
リオ:「はい。ありがとうございます。良かった〜。
実はお金をどうしようかと思ってたんです。
僕もガチャは、すごく引きたいです。
あの興奮は本当にクセになりますよ。」
こちらの通貨は貨幣で価値は以下の通り。
銭 貨=1ペロ(現在は流通していない)
銅 貨=10ペロ
大銅貨=100ペロ
銀 貨=1000ペロ
大銀貨=10000ペロ
金 貨=100000ペロ
大金貨=1000000ペロ
白金貨=10000000ペロ
リンドウ:「じゃあ、街に向かうわよ。」
リオ:「はい!」
リオは初対面の人は苦手なのだが、どういうわけか、リンドウには最初から不思議と温かいものを感じていた。
従者とはそういう雰囲気になるのか?
リンドウがそういう雰囲気なのか?
◇◇◇◇◇
しばらく歩いて、街の門に到着した。
小さい街なので門番も暇そうである。
門番:「大陸最南端の街サウルへようこそ!
お前たち2人か?」
リンドウ:「そうよ。通してもらえる?」
門番:「冒険者証とか身分がわかるものはあるか?」
リオとリンドウは、知らない街に入るのが初めてなので、勝手がよくわからない。
リンドウ:「……ないわね。」
門番:「お前たち、どこから来たんだ?」
リンドウ:「言わなきゃだめなの?」
門番:「まあ、これも仕事なんでな。」
リオ:「はい、ドルアド帝国のエドワーズ辺境伯領から来ました。」
門番:「ほぅ。それはずいぶんと遠くから来たんだな。
うーん、まあ、いいか。
身分証なしだと1人銀貨1枚だ。」
リンドウ:「お金を取るのね。」
門番:「まあ、そういう決まりだからな。」
リオは、なけなしの銀貨2枚を渡した。
門番:「よし。通っていいぞ!」
リオ:「あのー、すいません。
この街に冒険者ギルドはありますか?」
門番:「はぁ?何言ってんだ?
あるに決まってんだろ。
ここから真っ直ぐだ。
小さい街だからすぐわかる。」
リオ:「ありがとうございます。」
門を通って街に入ると確かに冒険者ギルドの建物はすぐにわかった。
リオ:「リンドウ!まずはギルドでもいい?」
リンドウ:「お好きなようにどーぞ。」
リオたちが冒険者ギルドに入るとたむろして依頼書を眺めていた冒険者と思われる人たちが一斉にこちらを見ている。
リオ:「僕たち、見られてるみたいだけど。」
リンドウ:「気にしなくていいんじゃない。」
そうしていると、明らかにガラの悪そうな冒険者の一人が話しかけて来た。
ブラン:「お前ら冒険者か?」
リンドウはそれを無視している。
僕も無視はしたくないけど、リンドウに話しかけているみたいなので、無言でその様子を見ていた。
ブラン:「おい!聞こえてるよな!嬢ちゃんよ!」
リンドウ:「なんか用なの?」
ブラン:「お!いいねぇ!気の強いのは好きだぜ!
俺がいろいろ教えてあげてもいいぜ!」
リンドウ:「いらないわ。」
リンドウは冷静に対処している。
そこに話しかけた奴の連れと思われる冒険者が割って入って来て話しかけた。
マッド:「はっはっは。ブランよ。気持ちよく振られたなぁ。
俺はこの街で最高のCランク冒険者のマッドと言うもんだ。
嬢ちゃん。いい女だな。俺が面倒見てやるから、仲良くしようぜ。」
リンドウ:「いらないわね。」
マッド:「そうか。まあいい。
この街で俺に逆らわない方がいいぞ。
そのうちわかると思うがな。」
リンドウは完全に無視して受付のある方向に歩いて行く。僕もそれについて行く。
それにしてもリンドウはすごいなぁ。
僕は怖くて喋ることも出来ないのに。
受付まで行くと、今まで見て見ぬふりをしていた受付の人が、話しかけて来た。
受付:「初めての方ですね。今日はどのようなご用件ですか?」
リンドウ:「冒険者登録よ。2人ね。」
それを聞いていたブランが笑いながら、他のやつにも聞こえるように大声で喋っている。
ブラン:「ひー!こいつら冒険者でもなかったのかよ!ウケるぜ〜!ヒーヒヒ!」
受付:「はい、承知しました。
登録料は1人10000ペロになります。
よろしいでしょうか?」
リンドウ:「いいわよ。」
リンドウは懐から金貨を1枚出して渡す。
お釣りは大銀貨8枚で、これは僕が預かることになった。
受付:「はい、ありがとうございます。
では、この魔道具に右手を乗せて魔法力を流してください。」
リンドウ:「それじゃ、まずリオからね。」
僕は言われた通りに右手を魔道具に乗せた。
続いてリンドウも同じく。
受付:「はい、これで完了です。
お二人はFランクからのスタートになります。
こちらが冒険者証になりますので、無くさないようにお願いしますね。
何か質問はございますか?」
実は僕は冒険者に興味があったので、ある程度の知識は持っている。
冒険者ランクは最低のFランクから始まり、依頼の実績や強さを考慮してランクが徐々に上がって行く仕組みだ。
リンドウ:「私は大丈夫よ。リオは?」
リオ:「はい、僕も大丈夫です。」
さっきの絡んできた輩は、すでに冒険者ギルドの外に出て行ったみたいだ。助かった!
受付:「ありがとうございます。
あと、これは内緒ですが、さっきのマッドさんのパーティには気をつけてください。
この街の代官のご子息なので、誰も逆らえないんです。
冒険者ギルドは関与出来ないんで申し訳ないんですが……。」
リンドウ:「ふーん。厄介ね。」
リオ:「リンドウ。どうしよう。」
リンドウ:「まあ、その時に考えるわ。
それじゃ、リオ。依頼書見て行く?
それとも宿の確保を先にする?」
ふぅ。不安だけど、リンドウが一緒でよかった。安心するなぁ。
リオ:「まずは依頼書見たいです。」
リンドウ:「じゃあ、そうしましょう。」
リオたちは、依頼書の貼られた掲示板の前まで行き、依頼書を見ている。
すごい!いろいろあるなぁ。
でも、たしか依頼はランクの1つ上までだったよね。EランクとFランクだな。
Fランクは簡単なお仕事で、Eランクは素材収集や魔物討伐かぁ。
やっぱり、Fから始めた方がいいのかなぁ。
リンドウ:「リオ。スライムだったらいけるんじゃない?
これは討伐数で報酬がもらえるからちょうどいいんじゃない?期限も無制限だしね。
ゴブリンなんかもあるわよ。」
リオ:「そうですか。大丈夫かなぁ。」
リンドウ:「リオは鍛えないとだめよ。っていうのもあるけど、私は戦闘がいいのよね。
やるならEランクね。」
リオ:「はい、教えてください。」
とりあえず、ここはEランクの依頼をこなしつつ、僕を鍛えてくれることになった。
ああ、僕も冒険者かぁ。
家は追い出されたけど、夢が叶ったなぁ。
◇◇◇◇◇
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