第32話 水族館作戦その1がついに決行されるまで
俺たちはあの2人にバレないように追いかけながら、作戦を会議する。
俺が視た未来ではあの2人がイルカショーに来るのはイルカショーが始まる5分前くらいだろう(正確な時間は分からないが)。
5分前になると既にほとんどの席が埋まっており、中々いい場所はもう座ることが出来ない。
そして、空いている前の席に座ればどうなるか。
そう、濡れるな。
つまり、それを狙う。
あの2人は奇跡的に空いていた数少ない2人分の席に座れていた。
ならすべきことはただ1つ。
「俺たちであの2人を前に座らすんだ」
「前に座らす?」
「イルカショーで前に座ったらどうなる?」
「ああー。濡れるってこと?」
「そうだ。これは渡辺さん自身のドジでは無いが、多分茨木さんは喜ぶだろう」
「友達がこんなことで喜ぶなんて言いたくないけど、確かに喜びそう」
「それでイルカショーは何時から始まるの?」
「3時からだからまあ、まだ結構時間あるな。一応2人を追いかけつつ、他もなんか考えてみるか」
「そうだね。ついでに普通に水族館楽しみたいし」
「うわー魚がいっぱいいる〜」
「それが水族館だろ」
「こら。キヨアキくん。女の子に対してそういう反応しないの」
「東京湾にいる魚が展示されているようだね」
「身近な場所にこんな生き物がいっぱいいるんだって思ったら凄いね」
「もう2人行っちゃったよ」
「俺らがすぐ行ってもバレる可能性が高くなるだけだし、行くルートは大体決まってるから別に大丈夫だと思う」
「そうなんだ」
「ねえ、見て。品川の海ってこんなに綺麗なんだって」
「いや、なんか失われた海域って書いてるし。昔の再現してるんじゃないか?」
「あーなるほど」
「なんかこういうの見ると悲しい気持ちになるなあ」
「そうだな」
「次ペンギンだって。可愛いー」
「梨花はペンギン好きなのか?」
「別に特に好きって程じゃないけど。水族館来て見たらテンション上がるくない?」
「それはそうか」
色々考えていると、純粋に水族館が楽しめていないな。
「あのマイペースなの
「僕ですか?」
「うん。なんか我を貫く感じ。私は結構好きだけど」
「僕ってそんな風に見えますか?」
「うん。結構見えるよ」
「ああ、見えるぞ。ちょっと所じゃないくらい」
この一週間共に居て、本当に芦屋は結構自分を持っているタイプなんだと感じた。
しっかりと自分の考えていることを言葉にすることは勇気がいるし、すごいことだと思う。
「ちょっと待ってくれ梨花」
「ふぇ?」
先に進もうとした梨花に対して少し大きな声で止める。
「何? ビックリしたんだけど?」
「ここ、わかるか?」
俺はペンギンエリアの近くにある大きな入口を指さす。
「イルカショーのとこじゃん」
「そうだ」
今はもう2時40分。
時間が経つのは本当にあっという間で早い。
そして、何となくわかったのが恐らくあの2人はこの階を一周してからイルカショーに来る。
つまり、このまま追いかけて行ってしまうと鉢合わせてしまう可能性が高くなる。
「一旦待とう」
「ここで?」
「ああ」
「座らないの?」
「このイルカショーって10分前くらいから結構席が埋まり出すらしい。ネット情報によると」
5分前に来ると言ってもあくまで予想でしかなく、鉢合わせをしたらそれこそ一貫の終わり。
だから、出来る限り早く俺達も席に着く方が良いのだが。
確実にあの2人の座るスペースを潰さないといけないため、今度は早く座りすぎても俺が視た未来とは違う場所が空く可能性が高い。
「だから一応俺が2人を追いかける」
「もし、来そうになったら連絡するからその時になったら急いで後ろら辺の空いてる席を潰してくれ」
「りょうかい。気をつけてね」
「うちはペンギン見とくわ」
「じゃあまた後で」
俺はそのまま2人の跡を後ろからついて行く。
1つの失敗も許されやしない中で……。
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