第55話
その日の晩、夕食後、不意に電話が鳴った。
僕が出ると声の主は僕のマネージャーの絹美空良くんだった。
「守さん、守さんのファンクラブの人で保世屋って人知ってます?」
「保世屋。ぽよやんくん。知ってます、知ってます!」
「彼が連絡をしたいって言ってます。守さんの携帯のメール知ってるらしくて」
ああ、そういえば僕携帯。しばらくどこかに放り投げてたんだ。
電源も切っていたはずだ。
「すみません、僕から連絡してみます」
「守さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。心配しないで」
「僕も何度か稽古場に行ったんです。でも守さんが泊まるって決まった翌日から入ろうとしても劇団の関係者から締め出されてしまって。情けないです。守さんが辛いときに僕、少しも力になれなくて」
電話口の空良くんの声はいつになく暗く感じた。
「そんなことないよ。いつもほんとありがとう……そうだな。うん。よかったら稽古を観にきてくれませんか? 今度はちゃんと入れるようにしてもらいますから」
「本当ですか?! わかりました!」
空良くんの声がいつもと同じような抜けるような青空みたいに元気になって、僕はほっとした。
彼にまで心配をかけてしまったことに少し心が痛くなる。
自分の携帯を探して改めて電源を入れると、色々な人のメールの中から保世屋くんのメールも何通か入っていた。
随分色々な人に心配かけちゃったんだな。
あれだけ観覧席に人がくるくらいだからたぶんどこかからか漏れたのかもしれない。
最初はほとんど隆二のファンクラブの人達だけだった。
たぶん来風さんがそうさせたのだと思う。
とにかく僕は保世屋くんに連絡を入れることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます