第39話
隆二は戸惑いながらそれでも久しぶりの再会で後はリラックスしたいのか、しばらく大人しく僕が出す料理を食べていた。
「ワイン、こんなんでいいかな?」
僕がそれを見せると少し驚いた顔をして僕を見つめる。
が僕が栓を抜き空けると、手元にあったグラスを傾けた。
「なんか。変な感じだな」
「そうかな? はは……」
しばらく僕に出されるままワインを飲み、料理を食べていた隆二だけど、ふとフォークとナイフを動かす手が止まった。ちょっと困惑した顔をしている。
「うーーん。これももちろん美味しいけど、でもなぁ。僕は守の作った煮物が食べたいな、魚とか、和食。あの優しい味、こういうのはレストランとか外食で幾らでも食べられるし」
「でも、隆二は僕の下手な料理より、お洒落な方がいいと思うよ、僕の田舎料理より……」
僕が俯いていると流石に何かを察したのか、隆二は僕の顔を見つめた。
「……どうした? お前ちょっとヤツれてないか? 俺がいない間に何かあったのか?」
僕は首を横に振り、思い切り笑顔を向けた。
「ううん、なんでもない、なんにもないよ」
僕は隆二が食べたお皿をすぐにキッチンに運んだ。
それらを俯きながらしばらく洗って、ふと顔を上げると、キッチンの傍にあるパソコンの前に隆二が立っていた。
僕はしまったと思った。僕が見ていた隆二のファンサイトのページに隆二が見入っている。
「なんだこれは?」
「……な、なんでもないよ」
「なんでもないことあるか。これは僕のファンクラブのファンサイトのページだ。しばらく見てなかったからこんなことになってるなんて思わなかった」
「ううん、ぼ、僕こそごめん……。隆二のファンサイトの人達の言うとおりだよ。僕ダメなんだよ。これじゃみっともないから、だから……」
「何言ってるんだ。こんなの見て。誰が教えたんだこんなところ」
隆二の画面を見る視線が次第に険くなってきた。
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