判断
シヨゥ
第1話
「自分に嫌気がさしたら、判断をしていることを自覚すると良いよ」
愚痴を聞いてくれていた友達がそんな事を言う。
「判断をしていることを自覚すると言うと?」
「例えば君は僕を話しやすい相手だと判断しているだろう?」
「そう……なるか」
「なるなる。判断をした結果、君は僕に愚痴ろうと思ったわけだ。違うかい?」
「そうだな」
そうだ、と言わされている感もあるが。
「じゃあここで君が自分に嫌気がさしたという対人関係に着目してみよう。要するに君は相手を嫌っている自分が嫌なわけだ」
「そうだな」
「つまり、君は相手が嫌いだと判断しているわけだ」
「そう、なるか」
「だから判断をしていることを自覚するんだ。相手を嫌いだと判断している。これを自覚する。すると相手を嫌うことが悪じゃなくなる。相手を嫌う判断をすることが悪になるんだ。つまりは判断をして区別することがいけないんだ」
「なるほど。分からん」
「今は分からなくてもいい。好きだとか嫌いだとかを感じた時に『ああ自分は判断しているんだ』と思ってみるんだ。そうして『判断をしたらいけない』と思ってみる。思うだけでいいんだ。そうすれば好きでも嫌いでもない人がただそこに居るだけになる。つまりはそこに人が居ると実感するだけになる。実感を持つだけなら自分に嫌気がさすことなんてないだろう?」
「そりゃあそうだ。なるほど。判断か」
無意識にしているだろう判断が頭の中によぎる。
「たしかに判断してばかりだわ」
「生きる上で必要だからね。仕方がない。それを捨てられて初めて解放されることもあると思う」
「なんとなく分かった気がする。ところでお前は判断しないのか?」
「そこまでにはなれていないな」
「じゃあ俺を見てどう判断しているんだ?」
「それは……言わぬが花かな」
「おいおいおい。気になるじゃないか」
「言わぬが仏。そんなもんだ」
その口ぶりに問い詰めてやろうという判断をしている自分に気づいた。だが、これはとことんやった方がいいだろう。判断をしないことを意識するのはそれからにしよう。そう思うのだった。
判断 シヨゥ @Shiyoxu
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