第2話 カップルの成立と俺の落胆
翌日の放課後。青ざめたタカキが教室を出ようとする。俺たちがいつもつるむカフェかゲーセンかカラオケにサナエを呼び出すつもりなんだろう。LINEを使わないとか古風な奴め。
俺は気を利かせて家に直帰し最近やってなかったTVゲームなんかして時間を潰した。
その日は一日二人から連絡が来ることがなかった。きっとタカキはへこんで立ち直れなくなっていて、サナエはショックを受けてLINEどころではないに違いない。
ところが翌日、登校すると廊下でも校庭でも教室でも、学校中でとある噂が嵐のように吹き荒れていた。俺は我が耳を疑った。
それはタカキとサナエがつきあい始めたという噂だった。
俺はすぐにタカキの席に行った。
「おいタカキどうなってるんだ?」
俺の口調は厳しく問いつめる様な感じになっていた。
「マサヤ!」
タカキは席から立ち上がると俺に抱きつかんばかりの様子で満面の笑みを浮かべて言った。
「サナエからオーケーを貰ったんだ! ありがとう! それもこれも全部マサヤのおかげだ!」
「……マジなのか?」
俺は半ば呆然としながらタカキに問うた。
「マジだよマジ! そんな冗談言う訳ないじゃん! あ、サナエっ」
サナエが衆人環視のもとうちらのクラスに入ってくる。クラスの殆どの視線が突き刺さる。
「よっ」
サナエは俺に一言そう言うと、あとは俺から目を逸らしてタカキに話しかける。二人が何を話しているかなんて俺にはもうどうでもよかった。
俺は負けた。その傲慢さゆえにタカキに負けたんだ。そう思うと腹の底から怒りがこみ上げてくる。俺が、俺が先に告白していればこんなことにはならなかったはずなんだ。
タカキとサナエが付き合うことになったのなら、俺はもう邪魔ものだ。独りになるかどこかほかのグループにでも入れてもらうかだ。その時の俺は独りのほうがずっと気楽でいいと思っていた。
ところがタカキとサナエが俺を引き留めた。今まで通り三人でつるみたいと言う。特にこれは二人が付き合ううえでのサナエからの条件だったとタカキは言った。
俺が渋っていると、サナエが俺の袖を掴んで懇願してきたのにはぎょっとしたし、少し胸が鳴った。結局サナエにほだされる形で俺らはまたいつも通りの俺らに戻った。ただタカキとサナエが恋人同士、という大きな変化があったが。俺はそれに少なからず居心地の悪さを感じていた。だが二人から誘われると俺としても断る理由はない。今までと同じようで全く違う時が流れていった。
▼次回
2022年6月20日 21:00更新
「第3話 ケンカと義理立て」
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