第2話 4月

「ん、ん~~っ! 久しぶりの学校、楽しかった~! でも、留年しててお前の後輩ってのは癪だけどな~。

 あ~でも、表向きじゃボクって死んだことになってて、同じころに両親を亡くした親戚の子を引き取ったって設定だったんだからしかたないか。

 ん、いい加減何があったのか説明しろって? ああ、わかったわかった。それじゃあ、お前んち行こうぜ」


「久しぶりにお前んち来たな~。あれ? おじさんとおばさんは?

 え、おじさんが海外出張でおばさんがついてった? うっらやまし~! ボクもひとり暮らし満喫してみたいなー!

 なに? 良いからとっとと説明しろ? ああはいはい、ったくガミガミ言うなよな」


「あー、つまりさ。ボクの病気って普通の治療じゃ治らない病気だったみたいなんだよね。

 それでもう死ぬしかないって諦めていたんだけどさ、世の中にって頭のおかしな科学者って居るじゃん?

 そんな人にボクは目を付けられたんだよね。それでその人がしたのはさ、違う世界に居るボクをコピーして、今の体に上書きするっていう方法だったんだ。

 けど最悪なことに他の世界のボクって同じ病気になってるか、もしくは死んでしまってるのが多かったんだよね。

 で、病気にかかったこともない……というか、元気なボクが居る世界を探した結果、見つかったのがこの体だったってわけ」


「ん? 大変だったな? あーうん、大変だったよ。

 だってさ、病気とコピーできる体探しで半年ベッドの上、でそれから変なカプセルに入れられて3か月。でもってコピーが終わったら、今の体に慣れるまでリハビリの日々。

 あのLINEした二日前にようやくまともに歩けるようになったんだよ」


「ってことでさ、ボクは娯楽を所望する―。

 ん? なんで嫌そうな顔してるんだよ? 前も普通に部屋に入れてくれただろ?

 え、男と女が同じ部屋にふたりきりなんて? あははっ! お前な~、ボクを女として見ちゃってるわけ? そういえば、出会った瞬間に告白してきたよなー?

 俺の黒歴史だ? まあ、そう言うなよな? 珍しい経験だって思えよ。ってことで部屋に行くから!」


「あ、この漫画の続き出てたんだ! 気になってたんだー。お、新作ゲーム? あとでプレイしようぜ! ってことで今は漫画~、ダーイブ!

 ん? なんで顔赤くしてるんだよ? は? パンツ?

 あー、もしかしてボクのパンツ見て恥ずかしがってるってやつ? お前なー、気にしすぎだって。それともじっくり食い入るように見ても――ふぎゃ!? お、お前、頭叩くなよ~!

 ……わかったよ。スカートめくれないように気を付けますぅ~! え、懲りてない? アハハ、キノセイダヨー?」


「……はは、こうしてると帰ってきたって、思える。

 え、おかえり? ……うん、ただいま」

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