約束~彼女の初恋の人~

 あの、さ。

 キミの初恋の人って、かなり活発な人って、言ってたよね?

 ・・・・私、そんなに活発だった?!

 まぁ、大人しかった、とは言わないけど。

 えっ?!

 ガキ大将っ?!

 ちょっと、失礼なっ!

 そんなはず、ないでしょっ!

 え?

 褒め言葉?

『ガキ大将』の、どこが褒め言葉なのよ?

 ・・・・優しい、ガキ大将?

 ま、まぁ。いいわ。

 確かに、ね?

 色々ヤンチャな事も、していたことは認めるから。

 でも、優しいって、なんで?

 え?

 私が?

 キミを、守った?

 いつ?

 ・・・・そっか。


 あれ?

 もしかしてそれが、恋に落ちるきっかけだったりして?

 なんか・・・・

 あまり、ロマンチックじゃ、ないねぇ?

 ふふふっ。

 ま、いっか。


 そう言えばキミ、小学校の頃は、ちっちゃかったよね。

 だから、よく揶揄われたり、いじられたりしてたっけ。

 私、人が嫌がることする奴、昔から大嫌いなの。

 だからね、キミが嫌がることされているのが、我慢できなかったの。

 ただ、それだけだよ?

 それが、優しいの?

 ふうん・・・・そっか。

 でも。

 私からすれば、キミの方がずっと、優しかったと思うよ?

 キミはいっつも、周りの人を楽しませたい、喜ばせたいって、みんなに笑っていて欲しいって、思ってたでしょ?

 そして、ちゃんと行動もしてた。

 泣いている友達がいたら、必ず側にいて、話を聞いてあげてたし。

 困っている友達がいたら、必ず助けようとしてあげてたし。

 実際に助けることはできなかったとしても、手は差し伸べてあげてた。

 何とか助けてあげようとして、いつも頑張ってた。

 私ね、キミのこと見てたから、知ってるんだ。

 キミがどれだけ優しい人かってこと。

 だからあの時だって、風に飛ばされた四葉のクローバー、とっさに追いかけて行っちゃって、道路に飛び出しちゃったんだよね?

 私のために。

 キミは、優しい人。

 だけど、ものすごく、危なっかしい。

 だから、目が離せない。


 えっ?

 目が離せないのは、私の方?

 なんで?

 ・・・・だから、それは。

 ごめんって。

 急に居なくなっちゃったのは、本当にごめんね。

 ・・・・キミの事、忘れちゃったのも、悪いと思ってる。

 でも、よく分からないんだけど。

 私きっと、怖かったんだと思う。

 キミが居なくなっちゃうかもしれないって思ったら。

 それも、自分のせいで。

 そんなの、絶対にイヤだったから。

 だからね。

 逃げちゃったんだね、私。

 私の心が、キミが居なくなるかもしれない世界を、受け入れられなくて。



 約束したから、話さなきゃ、だね。

 そうだよ。

 私の初恋の人は、キミだよ。

 あの時。

 初恋の人の話をした時。

 キミが泣きそうな顔してたのは、私がキミのこと、忘れてしまっていたからだよね?

 ごめんね。

 え?

 違うの?

 初恋の人を思い出せない私が可哀想だと思った?

 ・・・・もう。

 どこまで優しいのよ、キミは。

 でも、良かった。思い出せて。

 でもね。

 私、思うんだ。

 思い出せなかっただけで、私、本当はずっと・・・・

 ううん。

 なんでもない。

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