初恋のひと。

平 遊

再会~彼女の記憶にいない僕~

 ねぇねぇ。

 そう、キミ。

 私、分かる?

 同じクラスの・・・・

 良かった、覚えててくれて。

『誰だっけ?』って言われたら、どうしようかと思っちゃった。

 え?なんでって?

 それは、ショックでしょ~、同じクラスなのに覚えて貰えてないなんて。

 でも、覚えててくれて、ありがとう。

 キミのお家、こっちなの?

 そうなんだ。私もこっちなんだ。

 じゃあ、一緒に帰ろ?


 あの、さ。

 変な事聞くようだけど。

 私たち、初めまして、だよね?

 あ、違うの、今日初めまして、という意味じゃなくて。

 高校に入って初めて会った、んだよね?

 実は私ね、小学校の途中からおばあちゃんの所で過ごしてて、高校進学を機にこっちに戻ってきたんだ。

 だからね、ここ、私の地元なの。

 色々と変わっちゃった場所とかもたくさんあって、びっくりしたけど。

 懐かしい顔がいっぱいいて、ホッとしたんだ。

 そうそう、私の幼馴染みもね、うちの高校なんだよ。

 クラスは違うんだけど。

 ぜんっぜん変わってなくって、嬉しかったなぁ。

 だけど。

 キミの事は見覚えないなぁって思って。


 あの・・・・キミ、さ。

 私の昔からの友達とも仲いいみたいだけど・・・・

 もしかして、私がおばあちゃんのとこに行った後に、どこかからここに転校してきたの?

 それとも、中学からこっちに来た人?

 ずっと、気になってたんだよね。ほんと、みんなと仲良さそうだから。

 だからね、私もキミとお話してみたいなって、思ってたの。


 ・・・・ん?

 どうしたの?

 私、なんか変なこと、言っちゃったかな・・・・

 え?

 なんで、って・・・・

 だってキミ、今ものすごーく、渋い顔してたよ?

 渋い顔、っていうか・・・・小難しい顔、っていうか・・・・

 すごく、複雑な顔。

 えっ?

 もともとこんな顔?

 いや、そんなことないし。

 え~?私の気のせい?

 そうかなぁ・・・・

 でも、キミがそう言うなら、ま、いっか。


 でもなんか、不思議。

 私ね、初めましての人と、そんなにすぐ仲良くなれないし、仲良くなるまではこんなにお話もできないんだ、普段は。

 人見知り、ってほどではないけど、すぐに誰とでも仲良くなれる、っていうほどでもなくて。

 挨拶とかさ。

 世間話的な?

 そういうのだったら、割と誰とでもできる方ではあるんだけど。

 でも・・・・ふふっ、なんでかな?

 キミとだとすごく、お話しやすいんだよね。

 全然、気も使わないで、自然体で楽に。

 ねぇ、気付いてた?

 さっきから私ずっと、一人で喋っちゃってるんだよ?

 キミは、私の話を聞いてくれているだけで、全然喋ってないの。

 こんなの、会って間もない人となんて、初めての事だよ、私。

 仲のいい友達とだって、お互いにお話して聞き合って、って感じなのに、こんなに私ばっかり一方的に喋るなんて。

 キミってさ、聞き上手って、言われるでしょ?

 ・・・・ウソだ~、絶対に聞き上手だと思うよ?

 でね、知ってる?

 聞き上手な男の子って、モテるんだって。

 ほんとだよ?

 女の子ってさ、ほとんどの子はたくさんお話したいし、たくさんお話聞いて欲しいものだから。

 女の子に限らないかな。

 誰だって、自分のことたくさんお話したいし、聞いてもらいたいもんね。

 だからね。

 お話をちゃんと聞いてくれる人は、みんなからモテるんだよ。

 だからキミもきっと・・・・あれ?

 もしかして、照れてる?

 顔、赤いよ?

 ふふふっ。

 照れ屋さんなのかな?


 あっ、私、こっちなんだ。

 キミは?・・・・そっか、そっちなんだね。

 じゃ、ここで。

 また明日、学校でね。



 ねぇっ!

 良かったらまた、一緒に帰ってくれる、かな?

 なんかね。

 もっとキミとお話したいなぁ、なんて。

 ふふふっ。

 じゃあね、バイバイ!

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