ゼオンとノアの色気より食い気

南山之寿

縁は異なもの味なもの

「なぁ、ノア。一つ聞いてもいいか?」

「何? ゼオン。何でも聞いて!」


「ちょっと前まで、俺に敬語を使っていたよな? 言葉使いにどうこう言うわけじゃないが、どうした?」

「え? だって私達、結婚したでしょ?」


「……」

「何、その沈黙は?」


「い、いや。結婚はしていないと思うんだが……」

「ひどい! 私を騙したのね! もてあそんだのね! あっ! 私の財産を奪うつもりかしら! 結婚してからの毒殺! 美人妻殺人事件!」


「違う!」

「何が違うのよ! 私がゼオンと勝負したときの約束は覚えてる?」


「ああ……。ノアが勝った場合、俺の妻と認める。ノアが負けた場合は、俺に一生ついてくる。だったな。どちらも押し付け感が半端ないんだが、気のせいか?」

「大したことじゃないでしょ! それに、私が提案した条件で勝負したわよね!」


「ああ、たしかに。結果、俺が勝った……」

「そうね! だから、一生ついて行くって決まったじゃない? ということは、もう結婚よね!」


「話が飛躍しすぎだろ!」

「あのとき、倒れた私を抱いて『俺についてこい!』って言ってくれたじゃない! キャッ!」


「便利な脳内変換だな……」

「えっ? 今さら、婚約破棄? ハネムーン離婚? もしかして他に女がいるのね……。ヘェ~!殴りコロス


「お、おいっ! 落ち着け? 落ち着いて、話そう! 話せば分かる!」

何が?射コロス


「確かに、『俺についてこい』とは言った! 結婚という意味ではなく、仲間として寂しい気持ちにさせないようにだな……」

だから?炙りコロス


「ノア! お、お前のことは嫌いではない! ただ、そういう関係になるんであればだな。『まずは友達から』というやつだ」

「……」


「な、何だ? その不気味な沈黙は……」

「真面目かっ! 意外ね、ゼオン! まあ、人生は長いんだし、ゆっくり行きましょう! あ・な・た!」


お、おぅ……ふぅ……助かったのか?

「ん?」


「いや、何でもない地獄耳か?

「そう! なら良いわ。で、ゼオン。私達は何で、再会できたのかしら? やっぱり、運命の赤い糸?」


「それが、良くわからん」

「どういうこと?」


「俺がお前たちに別れを告げて、世界樹ユグドラシルを目指した。そこにたどり着いてから、数十年はたったはずだ。魔人族も寿命が長いからな……大して長く感じないんだが」

「そうね……。世界樹ユグドラシルを出てからは、カドレニア王国にいたのよね? 私も聞いたことが無い国家だったわ」


「見た目が少年になってしまったのも、理解できていないんだが……」

「良いわ! 若いゼオンも素敵! 昔を思い出すわ……。私に挑みに来たときのこと」


「ああ、懐かしいな。あの頃は、強さにうえていたのかもしれん。東西南北問わず、強者に挑んだな……」 

「あの時近衛兵から『パンツ一枚の上半身裸の男が攻めて来ました!』って聞かされたときは驚いたわ!」


「近くで海水浴をしていたからな! ついでだ! ハハハっ…………ぐふぉっ」

「ついで、って何?」


「……肘で……水月にいきなり打ち込むな……」

「華麗なエルフ族の女王に求婚にくる者は沢山いたわ! でも、決闘を申込みにきたのはゼオンだけね」


「そうだな。って、話を流すな!」

「私の魔術に耐えるなんて、もうびっくりしたわ!」


「あの時は、酷かったな。いきなり、殺傷能力が高い攻撃を不意打ちされた……」

「どっからどうみても、変態! って感じだったから、有無を言わさず消し炭にするつもりだったの!」


「まあ昔のことだ……。それより、ノア? 三千年ほど自己封印していたわけだが。目覚めた後、違和感はないのか?」

「そうね……。私達がいた時代ではないけど、私達がいた世界とも何かが違うような……」


「だろ? 魔人族が、まず見当たらないんだ。人間族は見た目こそ同じなんだが、色々と細かい部分で違うんだ。それに、俺たちの国について何も記録が無い」

「確かにそうね……。わからないことが多いわね。そのうち分かる日がくるでしょ! それより今を楽しまないと損よ!」


「確かに。考えても解らん! 悩んでも無駄だな」

「そうそう!」


「しかしこうしてノアと話ているのも不思議なもんだ」

「縁は異なもの味なもの! って良く言うじゃない! もう二度と離れないから……」


「そんなことより腹が減ったな……」

「そんなこと?」


「ん? その魔術はやばくないか? 落ち着け! 街中で放っていいもんじゃないぞ!」

地獄の劫火ヘル・クリムゾンフレア!!」


「あっっつぃぃィィ!!!」

うふふふ!これからも宜しくね

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