流星の下、君に。

流星の下、君に。

作者 拓

https://kakuyomu.jp/works/16817139557524593434


 余命宣告を受けても生きようとする竹倉鈴の誕生日、ペルセウス座流星群が降り注ぐ夜に晶はプロポーズして彼女と結ばれる物語。


 悲しくも美しい話である。


 主人公は高校三年生の晶、一人称俺で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。ラストは竹倉鈴の一人称私で心情が書かれている。


 女性神話の中心軌道にそって書かれている。

 二年前に余命宣告を受けた竹倉鈴が好きな主人公の晶は、彼女が余命宣告を受けてから部活をやめ、毎日病院に通っている。宣告が正しければ、余命は残り二週間。

 クラスメイトから、夏休みの来月にペルセウス座流星群が来る話を教えてもらう。ちょうど竹倉鈴の誕生日に流星群が降るという。

 彼女に一緒に見ようと伝え、二週間毎日通った。

 主人公の前では笑顔の彼女も、疲れているのがわかった。

 余命を越えた日に「このまま生き続けてやる!」と豪語数r彼女をみて、本当に生きてくれる気がする主人公。

 だが、面会に行く前に電話があり、今日は会えないという。

 翌日会いに行くと、彼女はたくさんのケーブルに繋がれていた。

 特別に許可をもらい、鈴の誕生日に夜、病室を訪ねる主人公。看護師におめかししてもらった姿に気づいて褒める。

 二人して流星群をみながら、主人公はプロポーズしようとする。でも彼女は告白を止め、「そういうのはさ、同情や哀憫じゃなくて本当に好きになった人に言いなよ」と断ろうとする。

 でも主人公は「お前が大切だからだ! 好きだから、幸せになって欲しいから、幸せにしてやりたいからだ!」「俺と……結婚してくれ、鈴。お前の残りの人生、俺を隣に居させてくれ」と告白。

 鈴はもってきた箱をみて、「指輪、折角なんだからはめなさいよ」と左手を差し出す。

 彼女に引き寄せられ「もう引き返せないわよ」と聞かれても、「引き返すつもりなんて……ねえよ。好きなんだから」と答える主人公。

「……私も」 とつぶやく彼女を引きよせキスをする二人。

 祝福するかのように、流星が降り注いでいた。


 また、メロドラマと同じ中心軌道が使われている。

 主人公の晶と竹倉鈴には交通してクリアしなければならない障害が用意され、クリアすることで個々に成長し前に進むようになっている。


 今年の夏で余命宣告を受けて二年が経つ。

 竹倉鈴は、「高校を休学している」とあるので、高校生の時に病気になって以来、入院し続けているのだ。仮に高校一年の夏に病気になったのなら、現在は高校三年生。

 誕生日の日に、好きだと告白しながら「俺と……結婚してくれ、鈴。お前の残りの人生、俺を隣に居させてくれ」とプロポーズしている。

 主人公の晶は夏前には誕生日をむかえ、十八歳になっているのだ。

 

 二〇二二年のペルセウス座流星群がみられるのは八月十三日。

 教えてもらったのが一カ月前なので、七月十三日。

 それから二遊間後なので七月二十七日が、余命宣告残り二年の日だったのだろう。

 鈴が高校一年の七月二十七日、余命宣告をうけ、

「……ねえ晶あきら。私ね、まだやりたいことが沢山あるんだ。部活で活躍してみたかった、大学も行きたかったし、働いてみたかった。それと……幸せなお嫁さんになりたかった」

 と泣きながら話したのが冒頭のシーンなのだ。


「二年前のあの日の言葉を思い出していた。『まだやりたいことが沢山ある』と彼女は言っていた。そのどれもが『余命以上に生きる』ことが前提の事だった。だが、今の俺にならできることがある」


 彼女の願いとは「部活で活躍してみたかった、大学も行きたかったし、働いてみたかった。それと……幸せなお嫁さんになりたかった」である。

 元気にならないと、どの願いも難しい。

 でも年齢さえクリアすれば叶えられる願いが一つあった。

「幸せなお嫁さんになりたかった」

 主人公はこの願いを叶えるためだけに、二年間病院へ通い、高校へ行き、それ以外はこっそりバイトしてお金を貯めていたに違いない。

 

「彼女の薬指に指輪をはめる。サイズは寝てる時にこっそり測った筈だが少し大きかった」とある。

 入院中は点滴や薬の副作用など、むくむこともある。でもここは素直に、以前は元気だったけれども、現在は病気の進行からやせ細ってきたのだろう。

 余命宣告の二年を過ぎてから測ったのかもしれない。

 たくさんのケーブルをつけた頃から痩せていったのかもしれない。

 

 主人公が告白を止めて、「ありがと、けど言わないで。そういうのはさ、同情や哀憫じゃなくて本当に好きになった人に言いなよ」といったのは、主人公のためを思ってだろう。

 告白しても、いっしょに長く生きられる保証はない。

 いなくなったあとのことを気づかってだ。

 でも主人公は、彼女のためでもあるけれども、彼女が「大切だからだ! 好きだから、幸せになって欲しいから、幸せにしてやりたいからだ!」と心底思ってのことなのだ。

 人は、命を前にしたとき本音が現れる。

 彼の言葉、思いに偽りはないだろう。


 告白したあとに「……いつまで箱に入れてんの」感情的な場面から急に理性的になるところが、現実味を感じる。

 プロポーズはわかった、だから早く頂戴って彼女はいっている。

 言葉よりも、物の方がうれしいのだ。

 こういう、女の子の素直な一面が描かれている所が良い。


 彼のお陰で、彼女は願いがかなった。

 実に良かった。

 

 人が死ぬとき、「あれをしておけばよかった」「やっておけばよかった」と後悔することが多いという。

 そんな最期を迎えないためにも、元気で体が動ける内に、できること、やりたいことをしなくてはいけない。

 悔いのないように。


 



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