青春花火

青春花火

作者 雪蘭

https://kakuyomu.jp/works/16817139557876883466


 三十年ぶりに地元に戻った私は、青春時代を過ごしたあいつとのい日々を思い出す話。


 サブタトルに潮風とある。

 ときどき「失礼ですが、人生何周目?」と尋ねたくなる作品に出会う。

 本作もその一つかしらん。

 高校生だよね?

 また、ミステリーやサスペンスがはじまる書き出しのようにも感じる。



 主人公は四十八歳の女性、一人称私で書かれた文体。自分語りで思い出に浸っている。


 女性神話の中心軌道に沿って書かれている。

 失恋して上京とともに地元を去って三十年後。主人公は久しぶりに地元に戻った。

 夏の夜、花火を見ては思い出す。高校のときにあいつと線香花火をした夜のことを。

 潮風に吹かれて、あの日のあいつに会いたいと思いながら涙するも、答えるものはなかった。


 作者は三十年後の自分を思い浮かべたのかしらん。

 昨今の未婚化の流れを鑑みて作ったのかもしれない。

 

 主人公は「約三十年ぶりに地元へと戻った」とある。

 一時的に帰省したのではなく、戻ったのだ。

 普通は、地元には親が住んでいるので、こまめに変えると思われる。だけど本作の主人公は帰っていない。

 夏の花火をみたとき、「照らされるあいつの横顔を私は今でも忘れられない。次々と打ち上がる花火を見ているようで見ていないその視線の先には誰がいたのだろう」とあるように、あいつと呼ばれる人物には、だれかしら意中の人がいたのだろう。

「返ってくることのない問い、とめどなく広がる痛みのその全てを潮風のせいにして上京し、目を背け続けた三十年」つまり、主人公はあいつのことが好きだったけれども、あいつには好きな人がいたので失恋してしまい、あいつが住んでいる地元から逃げるように上京して、三十年の月日が経過したということだろう。

 今回戻ってきたのは、おそらく親が病気なり、他界するなどして、戻ってくる理由ができたと思われる。

 また、主人公は独身だと思われる。

 結婚していたら、旦那さんを連れに顔を見せに来るだろうし、子供ができたらなおさらだ。

 三十年も帰っていないようなので、その必要がなく、仕事に明け暮れて過ごしてきたのだと推測する。


「あの煙にでもなって、あの日のあいつに会いに行きたい」

 いま現在あいつには会いたくないのだ。

 結婚して家族もできて、年も取って、あんなに過去良かった彼もいまではみる影もなければ、千年の夢も一夜にして潰えてしまう。

 そのほうが、一人で泣いて過ごすよりは前に進める気がする。

 

 潮風がなにも答えない所が良い。

 哀愁を誘う。

 物寂しさがよくでている。


 男性は過去に生き、女性は今に生きるという。

 過去を引きずることはあまりない。

 ないけれども、この主人公は過去に取りすがろうとしている。

 

 一般的に、異性との接触が一番高いのは十代。

 二十代以降は、出会いは減る一方になる。

 しかも、声をかけられるのは二十代まで。

 男は常に若い子が好きだから。

 女性も年取ってくると、若い異性が好きになってくる。

 お互いさまである。

 かといって、結婚して子供がいれば幸せかというと、それはそれでまた問題も抱えもする。

 それに結婚していても、ふとしたときにさびしさに泣いてしまうこともある。ただ、一人より誰かとならば、強く生きられるかもしれない。

 

 本作の主人公を反面教師として、一人寂しく泣いて過ごす晩年をむかえないよう、若いうちに恋愛して男遊びをしておこうと伝えたいのかもしれない。


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