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 向日葵ひまわりは、ときの前の自身の椅子に座るとときの方に向き、机に肘をつきながらジッと見つめてきた。

 小さな事も逃すまいとする視線に居心地が悪そうに目を反らすと、隣に座っていた冬樹ふゆきと目が合う。


「あれ~?とき、頬に擦り傷があるよ?何でだろう?何でだろうね?」


 向日葵ひまわりは、鞄から可愛らしいウサギのチビキャラが載ったティッシュと消毒液、そして花柄の絆創膏を取り出し、傷の汚れを消毒液で濡らしたティッシュで拭き取ると優しく絆創膏を貼った。

 冬樹ふゆきは、ポカーンとその光景を見つめ、ときは絆創膏に手を添える。


「はい、完了。でもどうしたの?転んだとか?」


「あー……何か自殺志願者の女助けたときかもしんないな」


「自殺志願者?」


 冬樹ふゆきは、ときの方に向くと軽く身を乗りだし興味ありげに質問をする。

 頭をかきながら何と説明するべきか考えていると、向日葵ひまわりが顔を近づけジトッと睨んだ。

 重みのある視線に、何が何だか分からず気圧されそうになる。


「女の子助けたんだ?ふーん……ねぇ誰助けたの?」


「え?誰って……何でそんな事気にするんだよ……」


 ときは不機嫌そうに言うが、向日葵ひまわりは引く気はないらしく、ずっと見つめている。

 見つめ続ける視線に、ばつが悪そうに冬樹ふゆきに視線をそらすが、冬樹ふゆきは黙ったまま首をブンブンと横に振り、手を合わせゴメンという合図を送る。

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