『大怪獣 たくあんvs.たくわん』

やましん(テンパー)

『大怪獣 たくあんvs.たくわん』


 たくあんは、沢庵和尚(1573~1646)さまの発明であった。  


 と、伝わるものの、正しいかどうかは、必ずしもはっきりはしていないとか。


 もっと、古くから、伝わる食べ物であるとも、言われるとか。


 ある日、ぼくは、お散歩にでておりました。


 すると、とある、伝統ある食糧品店で、バーゲンをやっていて、そこに、『名物 たくあん』というものが、売られておりました。

 

 あら、と、思ったのには、違う銘柄の『たくあん』さんが、ふた種類並んでいて、かたや、『たくあん』、かたや、『たくわん』。とされていました。


 お店の張った値札には、『たくあん』500円。


 『たくわん』550円、とされていたのです。


 さあて、ご飯のおつまみに、買ってゆこうか、と、思ったのですが、さて、どっちにしようか。


 内容量を見ると、『たくあん』さんのほうが、上品に少ないようで、『たくわん』さんは、かなり、あらあらしいお姿です。


 ぼくは、となりにいた、おばさまに、尋ねました。


 『たくあんと、たくわんは、違うのですか?』


 『違わないと思います。会社の都合でしょう。』


 『なるほど、会社の都合ですか。』


 たしかに、どっちも、原料は、だいこん。


 作り方が違うのかなあ。


 そこで、お店のママにも、尋ねました。


 『文語体がたくあん。口語体が、たくわん。とかもいいますが、まあ、でも、たくあん和尚さんが発明したなら、たくあんでしょう。まあ、ベートーベンとベートーヴェンの違いくらいです。ここには、製品に書いているとおりに、書いていますよ。つまり、同じです。会社によって、ちょっと、味が違います。それは、食べ比べたら、わかりますよ。』


 さすが、なかなか、インテリのママらしい。


 ただ、ぼくがおもうに、もし、口語体と文語体が原因ならば、逆ではないか。


 むしろ、新旧かなづかいの問題だろうか。


 しかし、広辞苑を見たかぎり、『たくわん』は、『たくあん』の訛り、とされています。


 まあ、旨ければ、それで良いのだ。


 しかし、いま、ふたつ買うほどの財力はないし。


 さて、ならば、安い方を先に買いまして、また、次回はもう片方にしましょう。


 そう、はでに、悩んで苦しむ課題ではないだろ。


 

 すると、なにやら、話し声が聞こえます。


 あら?


 だれが、話してるのかな?


 耳を傾けると、消えてしまった。


 気のせいだろうな。


 『ママ、そしたら………』


 『うわあ。両方ですね、ありがとう。さすが、やましんさん。ふたつで1000円にします。あと、消費税。』


 いやあ、ママには、かなわないです。


 消費税は、『下げる、か、無くしてしまう。』


 と、さきの選挙で野党各党がぶちあげたが、いつのまにか、またまた、上がって、15%になってしまったのですが。


 

  ・・・・・・・・・・・🥕ボクニンジン



 その、晩のことであります。


 まさに、草木も眠る丑三つ時。


 ぼくは、大概まだ起きている時間です。


 ちょっとした病気で、ぼくは、お手洗いが近い。


 便秘にもなりやすい。


 かつて職場では、なかなか理解してもらいにくかったが、まあ、年取れば、みんな、大概そうなるのだ。


 いい気味である。いや、そいつは、失言です。


 真っ暗な台所から、なにやら、話し声が聞こえてきます。


 あの、昼間聞こえた声です。


 『なんだろう?』


 いささか、不気味だな。


 しかし、テレビがついたままなんだろうと、思ったのです。


 それで、ドアを開けたとたん、いやまあ、ぶったまげたあ。


 そこは、果てしない荒野であります。


 オカルト系アニメには、良くあるシーンだ。


 しかし、まさに、緊張の場面。


 左側に、黄色の巨大たくあんさん。


 右側に、ちょっと、白っぽい巨大たくわんさんが、互いに睨みあっていたのである。


 『おいらが、正当なたくあんでし。』


 黄色の巨大たくあんさんが言います。


 『いいや、おらが、正当なたくわんである。』


 ばちばちばち。


 火花が飛び散る❗


 両方の周囲から、怪しい妖気が立ち上る‼️


 『うわ。臭い〰️〰️〰️〰️。』


 強烈な、糠の臭いです。


 『やるか?』


 と、黄色のたくあんさん。


 『おう。』


 白っぽいたくわんさん。


 両者、みあってみあって、たちました。


 たちあいは、互角だ。


 どっちも、足元は、細くてなんだか、危なっかしい。


 上半身でぶつかり合いだ。


 どすん。どすん!


 と、地面が揺れる。


 どんよりとした空が不気味だよ。


 太陽はいないが、この世界は、薄明かるいです。


 真っ赤な月と、青い月が、ふたつ空に上がっているのです。


 『ありまあ。たいへんだ。これは。たしかに、かつて地球には、お月さんがふたつあったかもしれないが、このふたつが、ひとつにぶつかったのは、地球誕生から数千万年あと、とか。』


 そういう学説があるようです。しかし、まだ、証明されたわけでもない。地球誕生は、46億年ほど前といわれます。人類はもちろん、いない。だから、たくあんもないです。


 幻月かな?


 いやあ、あまりに、違いすぎる。別の物体だろな。


 じゃ、ここは、なに?


 『ぶあ〰️〰️〰️〰️。』


 巨大な、たくあんさんとたくわんさんは、お互いの頭を絡ませて、闘っています。


 しかし、なんで、闘うのだろう。


 どっちも、大根さんだよ。


 食べ物の呼び方が複数あるのは、よくある話だけど、たくあんとたくわんは、地域的な違いではないみたいだな。


 ある通販サイトをみると、たしかに、たくあんが、圧倒的に多いが、なかに、たくわんと呼ばれるたくあんを売っているところがありました。


 それは、福井県の会社みたいです。


 たくあんの煮付けのようですな。


 同じ福井県でも、大勢はたくあんと呼んでいるように見えるので、地域的な特徴ではないような。


 つまり、呼び方は、ばらばらみたいです。


 いまのところ、特に、規則性はないと見ました。


 

 すると、巨大たくあんさんとたくわんさん、は、互いにほどきあい、小さなたくあんとたくわんにもどり、異世界は消えてしまったのでした。


 いつもの、台所であります。


 つまり、異世界を作っていたのは、ぼくなのかあ。


 『あらまた、またまた、おかしな、夢かなあ。』


 ぼくは、2階に上がり、ふとんに潜り込んだのでした。


 まだ、でも、なんとなく、しっくりと、しません。


 もう少し、調べてみよう。


 でも、まずは、食べてからね。



        🍚 🐟 🥗

         


        


 


 


 

 


 


 

 

 

 


 


 


 


 


 


 



 


 


 

 


 


 

 




 

 

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『大怪獣 たくあんvs.たくわん』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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