第8話 雀蜂の巣穴を蹴りて囲まれる

小学三年の頃、山道を通って通学していた。


その日も三年生2人、四年生1人の3人で山道を歩いて学校へ向かっていたのだが、途中に雀蜂の巣穴があった。


先頭を歩いていた四年生が突然、子供の度胸試しとばかりに巣穴へ蹴りを入れて逃走を始めた。


続いてもう1人が巣穴に砂を蹴り掛けて後を追う。


最年少だった私は取り残され、怒り狂う蜂の群れに囲まれてしまったのである。


子供であった私に引き返して逃げるという選択肢を思い浮かべる事は叶わず、暗愚にも剝き出しになった蜂の巣を跨いで学校へ向かう事しか考えられなかった。


呆然と立ち尽くす私の眼前に尖兵蜂が威嚇を始める。


本能的に、この蜂に危害を加えれば他の蜂が一斉に襲い掛かってくるのだという事は察知できた。


思わず払い除けてしまわないよう、腕組みをして脇で掌を抑え込み、当面は蜂達の怒りが治まるまで待つ他なかった。


怒りに奮え、周囲の草木の枝葉を捕まりながら毒針から毒液を撒き散らす個体もいる。


毒液を撒き散らした後に力尽きたのか地面に墜ちる姿に、若干の希望も見えてくる。


もっとも、数匹が墜ちると巣から次蜂が補充される具合で、快方に向かう気配はなかった。


結局、ソロリソロリと蜂の巣を跨いで学校へ向かう事に成功した。


途中、最初に巣穴に蹴りを入れた四年生が刺されて大人達に保護されていた。

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