第5話 信じたくない気持ちが理解できる話

「一度も鼻を穿ほじった事のない女性が実在する」


世間では偶に女性アイドルの信仰哲学に排泄不用論を見掛ける。

論うまでも勿く、冗談交じりに語られる場面が多い。


であるが、「実際に鼻を穿った事のない女性に出会った話」をすると、最初はなから信じて貰えた試しがない。


大学生の頃、どこの芸人の真似事なのかは知らないが「他人ひと前で鼻を穿り、別の指を擦り付けて驚かせる」という悪戯をする輩がいた。


当時の大学生なので適当にあしらわれていたのだが、飲み会の席で一際ひときわ過剰に反応した女性がいた。


周囲の人間も悪戯から女性を隔離しようかと集まり掛けた時だった。


「鼻に指を入れる事自体がありえない!」


その一言に周囲の、特に女性陣の眼の色が変わってしまった。


お酒の勢いも手伝い、問答の末にその場で「物理的に本人の小指が鼻孔に入らない」事が確認されてしまったのである。


その後フォローする側に周りながらも、彼女の綿棒ほどしか入らなそうな鼻孔への視線を送らずに過ごす事は不可能であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る