名状し難い躰の話
凸凹囙 回向
第1話 誰も鉄骨渡りの方法を知らない?
「賭博黙示録カイジ」という漫画作品に「電流鉄骨渡り」という賭博競技が登場する。
シリーズ映画化もされたので有名な作品であると思うのだが、それだけに恐ろしく感じた事がある。
要するに高層ビルに渡された鉄骨を平均台のように歩いて渡る競技なのだが、主人公のカイジは、事もあろうに靴のつま先に線を引き、両つま先を同一方向に向けて真っすぐ歩こうとするのである。
率直に言って自殺行為である。
片足で立って踏ん張りながら前後左右斜め八方向に倒れてみて欲しい。
前方向にしか踏ん張れない事を体感できるはずだ。
先に適解を述べると「重心を前傾に、つま先を直角にする」姿勢が一番安定する。
他に最適解があったとして、両つま先を同一方向に向けるのが一番不安定な姿勢である事は小学生体育の範囲でも体感できるはずでは、と思った。
論うまでも勿く「フィクションだから」で済む話なのだが、主人公の自殺行為を指摘する意見を見掛けない事が怖くなった。
私が小学校の頃に「遊動円木」という、多人数用ブランコのような具合に遊ぶ遊具があった。
後期の物は取っ手や足置きが付いて行儀よく座る他ないのだが、初期の物は吊るした丸太そのままで、しがみ付く事を想定していたようだ。
当然であるが子供達はその上を漕いだ状態で走り周り、どんじゃんけん等をして遊んだので上記の事は常識に近かった。
子供の頃の当然だった事が現代で特殊技能、特殊知識になりつつあるのでは?
と思い、雑多ながら書いてみる事にした。
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