アウトソーシング
ムラサキハルカ
第1話
私は恵まれていると
二十代中頃に結婚し、広いとは言えなくとも二人暮らしには充分な程度のマンションに住みはじめた。おまけに七つ年上の夫の
結婚……というよりも同棲当初は、夫が帰ってきてからもまだ料理が終わっていなかったり、逆に早く作りすぎて待ちぼうけを食らったりもしたが、今はなんとはなしに帰ってくるタイミングに合わせられるようになった。
「ただいま」
穏やかかつふっくらとした顔立ちの宏樹のその一言を玄関で耳にすると、たただた安心する。玄関から少し歩いたところにある洗面所で手洗いうがいを済ませた夫を居間に迎え入れてから、夕食の配膳を終えると、テレビでバラエティやニュースを見ながらともに食事を口にする。その際、宏樹からは仕事の愚痴などを聞かされたりしたがさほど深刻にはならない。丹精を込めて作った……と言えばやや大袈裟にはなるものの、栄養を意識した料理を、夫は毎回、おいしい、と言ってくれる。それだけで、胸が温かになった。
食事を済ませ、少し腹ごなしをしたあと、風呂に入る。大抵一人ひとりだが、時には一緒に入って、疲れを落とす。その後、気力があれば夫婦の営みにはげんだりもした。いずれにしてもゆるやかな眠気とともに一日が終わるのは変わりがない。
私は恵まれている。あらためて、優衣はそう思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます