天陽白花
玉宮妃夏
はじめに―― 草結の庵にて筆、了うこと。
私は
自死へ
するとカウンセラァを
全く、馬鹿げている事この上ない話である。精気盛んなこの男は、私を恋仲の女学生か何かかと違えているのではないだろうか。
私の旧家にやってきた
ないし無論、
しかし
其の家屋は、
そもそも私の様な
天川は、空き家は寿命を縮めるので、私に住んでくれと云う。そして清浄さえ保てば、僅だが月々の報酬も支払うとまで申し出た。其の提案には
屋敷は大小問わず、六つの建物で構成されている。外観や玄関、廊下と、木造建築の
私は求めずとも既に、海外を得ている。というのも、この屋敷における仏間のある母屋をのぞいた残りの五つの建物、室間はすべて、外観からは連想できぬような洋間となっていたからだ。例えば北西の茶室である。茶室ならば、畳や囲炉裏を思うがしかし。そこはフロゥリングに、英国紅茶やハァブティの茶葉が所狭しと保存されている、ロココ調の茶箪笥や食器棚が
ただ
まず、外観と母屋が大日本の象徴であれば、北東の居間なら米国北米を想わせ、南への渡り廊下をゆけば海峡諸国と豪州大陸が出現してくる。ははぁ、あれは広がるウルルの裏庭か。さながら世界各国の縮図であり、
であると前の家主は、
隣を歩く天川が、素足なのである。
一方の私は
私は天川の話を遮り、何故、君は
私は、馬鹿か。たしかに珍妙な屋敷だが、あくまでここは日本式の邸宅だろう。であるのならば
「まさか一足しかなかったのか」
「一足しかなかったからですよ」
私と天川の声は同時に、互いを貫通した。私は
私は、内装の奇怪さに気を取られていて、本質を見落としかねる処であった。なるほどこれが前の家主の、趣向か。私が云うのも難だが、奇天烈である。否、実に滑稽だ。嗚呼この一風変わった屋敷ならば、
ふたたび茶室を引っ掻きまわしていた私に、あろうことか天川は、この奇天烈な前家主との思い出を語りはじめた。私は
私は、茶葉で咽せかえっている天川に、この屋敷に居を移す旨を伝えた。したらば筆を走らす条件も呑んでやる。しかしながらそう頻繁にセラピィされては困るので、ふた月に
(空白)
(この三行は、後に、空白部に記されている事が判明した。厚紙を薄く剥いで、そこに字を記してから丁寧に蓋をされていた。)
して、天川よ。貴様を見直したぞ。
確かに、環境が変われば、生への活力も湧いてくるものらしい。そして口でなく筆となれば、思いを
手前、
ありがとう、と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます