第3話 四季咲夏樹

 ここよ、ここ‼️

 優一君、おはよう。さあ乗ってよ。乗ってよ。

 今日は君とドライブしたくてね。君を駅のロータリーまで呼び出したのよね。

 これが私の車よ。

 中古のボルボだけどお気に入り。

 約束通り、動きやすい服できてくれたのね。

 よしよし、お姉さんが褒めてあげよう。

 うん、何、私のデニム姿が珍しいの。

 ほら、見てよ、ポニーテールも珍しいでしょ。ごめんね、真冬や春花みたいに化粧っ気はないけどね。

 えっ、それもかわいいって。本当に口が上手ね。真冬や春花が気に入るはずだわ。

 さあ、じゃあまずはここをでましょうか。



 音楽かけようか?

 やっぱりアニソンがいいの。

 普段は車では音楽なんて聞かないんだけど今日は優一君がいるからね。春花がセレクトした曲をかけてあげるわね。


 晴れて良かったわね。


 まずは海沿いに出てみましょうか。コースは私にまかせてよ。運転は四人でも私しかしないから。

 真冬は仕事はできるけど他はからっきしだし、春花は生活力ゼロのオタクだからね。

 生活力があって炊事洗濯ができるのは私だけなのよ。運転もできるしね。


 ほら、見えてきたわ。


 今日は晴れて良かったわ。

 私、磯の香りって好きなのよね。地元が海沿いだったから懐かしいのよね。


 あっごめんごめん、自己紹介まだだったわね。

 もうデートは三回目だから、すっかり彼女の気分になってたわ。私は初めてなのにね。

 私は夏樹なつき。夏に樹木の樹で夏樹よ。よろしくね。



 優一君はアニメとかゲームが好きみたいだからあんまりアウトドアってしないでしょう。たまには外に出るのもいいものよ。

 ソロキャンプっていうの。

 私もよくやるんだよね。

 本当は誰かとキャンプとかしてみたかったけど真冬のせいで友だちもいないし。

 君が告白してくれてから今日がくるのを楽しみにしてたのよ。


 

 じゃあ、これからちょっと山道に入るわね。目的地はあともうちょっとだから。

 あっコーヒーでも飲む。水筒に入ってるから。


 どう、美味しい?


 優一君が甘い味のほうが好きって聞いたから甘めにしたんだよね。


 私もちょっとちょうだい。

 ふふっ、車で飲むコーヒーは最高ね。

 うんっ、間接キスだって。

 そんなの気にしないわよ。優一くんならなおさらね。


 それにしてもアニソンってのもいいものね。

 いろんなジャンルがあって、アニメを知らなくても歌だけでもけっこう楽しめるのね。


 アニメの内容を知っていたらもっと楽しめるのね。

 へえ、そうなんだ。

 じゃあさ、今度、家に来たときおすすめのアニメでも見ましょうか。

 家に行ってもいいんですかってもちろんよ。

 お家デートもいいわね。まったりゆっくりね。



 さあついたわ。うーん、車から降りてこの背をのばすのって気持ちいいわね。

 お願いがあるんだけど後ろの荷物持ってくれるかしら。目的の場所はここから階段を上がったところにあるのよ。

 あらっ、やっぱり男の人がいるといいわね。

 重い荷物も持ってくれるし。

 心強いわね。

 女の一人暮らしは買い物なんかもたいへんなんだよね。電球の交換とかも一苦労だしね。



 よいしょよいしょっと。


 ほら着いたわよ。すごい景色ね。

 ここが私のおすすめのスポット。展望台公園よ。今日は本当にラッキーね。

天気はいいし、人も少ないし。


 あの家族連れだけみたいね。


 あの人たちから見たら私たちもカップルに見えるかな。

 どうしたの優一君、急にせきこんで。

 あの木のテーブルのところにいきましょう。

 景色も見えるし、ちょうどいいわ。

 ほら、すごい。街も海も全部見えるわ。


 来て良かったって。ねえ、そうでしょう。


 真冬や春花じゃあこんなところに連れてはこれないよね。

 私だから来られたんだよ。



 さあさあお昼を食べましょう。

 じゃーん、ほらすごいでしょう。


 唐揚げにタコさんとかにさんのウインナー。ポテトサラダにハンバーグ。筑前煮におにぎり。おにぎりはおかかに梅干しにツナマヨネーズ。ほらおにぎりの上に具が乗ってるのが目印よ。


 これ、全部私が作ったんだからね。他の三人は料理なんかまるでダメなんだから。

 真冬が会社で食べてるお弁当も私が作ってるのよ。

 これから優一君のお弁当も私が作ってあげようか。いつもコンビニ弁当ばっかり食べてるでしょう。


 うーんこのから揚げ、我ながら美味しいわ。

 優一君、ほら、ポテトサラダも食べてみなよ。ほら、お口開けてあーんって。


 ねえ、美味しい?


 そう、美味しいの。嬉しいわ。

 あらほっぺにご飯つぶがついてるわよ。

 とってあげる。ふふっ、食べちゃおう。

 あらたいへん、のどがつまったの。ちゃんとお茶も持ってきたからこれ飲んで。

 美味しすぎて急いでたべちゃったって。

 嬉しいこといってくれるじゃない。

 毎日こんな料理が食べたいって。

 いいわよ、お姉さんが毎日君のために料理をつくってあげるから。

 だから他の三人よりも私といる時間を増やしてね。

 他の三人と違って私が一番家庭的で料理も掃除もできるんだから。

 私が一番お嫁さんにむいてるんだからね。

 ねえ、だから私を選びなさいよ。私を選んでくれたらなんでもしてあげるから。

 男の子がしてほしいこと全部やってあげるから。お願い、私といてちょうだい。




 ごめんごめん、オタク君。怖がらせちゃったね。顔つきが変わったって。

 そう、私よ、真冬。

 夏樹は家庭的で料理上手なんだけど性格がちょっとね、あんな感じなんだよね。

 でも根は悪い子じゃないから、私が落ち着かせるからデートを続けてあげてね。



 ごめんなさいね、私、興奮して変なこと言ったみないよね。

 真冬に怒られちゃったわ。

 ヤンデレ経験できて良かった。ありがとう優一君。

 とてもポジティブなのね。

 私もあなたのこと好きよ。

 とっても好きよ。

 好きよ、好き、大好き。大々大好きよ。


 あっごめんごめん、また、暴走しちゃうところだったわ。


 私も君とつきあうのは全然OKよ。

 一人暴走しちゃうときもあるけどよろしくね。

 私たちはあと、もう一人いるのよ。

 今度また一週間後にデートよろしくね。

 もし断ったら…………




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