第4話 四季咲秋恵

 こ、こんにちは……。


 宅間君ですか……。


 どうも、初めまして。私、四季咲秋恵しきざきあきえっていいます。男のひとと話すなんて何年ぶりかしら。すごく緊張しちゃうわ。でも宅間君、優しそうで良かった。


 真冬も春花も夏樹もずっと宅間君の話ばかりするから、とても会いたかったんです。


 き、今日はよろしくお願いします。


 えっ、この眼鏡ですか?

 そうなんですよね、なぜか私が表に出たときだけ視力がおちちゃうんですよね。

 眼鏡もよくにあってるって、本当にお世辞がうまいわね。

 でも、嬉しいわ。

 さあ、行きましょうか。

 宅間君と一緒に行きたかったところがあるんですよ。



 電車、混んでますね。

 やっぱり夏樹みたいに車のほうが良かったですか?

 電車もいいものですよ。

 

 良かった、宅間君も電車が好きなんですね。


 あっ、でもやっぱり揺れますね。それにまた人が乗ってきて、さらに混んできましたね。


 あの……。


 すごく揺れるのでつかまっていていいですか?


 そうですか、ありがとうございます。じゃあ、遠慮なく。


 あっ、また揺れましたね。


 もっとしっかりつかまって下さいって。いいんですか?


 じゃあ、遠慮なく。

 ふー、宅間君につかまってると安心しますね。それに温かくて気持ちいいですね。

 春花が気に入るのも分かるわ。

 あっ、ほら着きましたよ。



 あ、あの。このまま、腕をつかんでいていいですか。

 あっ、ありがとうございます。

 じゃあ、ここからちょっと歩いたところにその行きたい所があるんですよ。


 ほら、着きましたよ。ここです、ここです。

 神社なんですよ。

 見てください、ここの狛犬とってもかわいいですよね。

 ここも見てください。

 このお稲荷さんもかわいいですよね。

 写真撮りましょうね。

 あっ、私いわゆる歴女なんです。こうやって神社やお寺を見てまわるのがすきなんですよね。

 あと、鉄道も最近はまってましてね。宅間君が電車も好きで本当に良かったわ。

 春花みたいにアニメとかゲームはくわしくないから、話とかあうかなって思ってたけど。


 学校の授業で一番歴史が得意だったの?


 へえ、宅間君は歴オタでもあるんですね。


 私なんか歴史のテストだけやらされてたから、他の三人にね。

 あの子たちはいいように私を使うんだから。

 まあ、愚痴はこれぐらいにして、お参りしましょうか。



 パンパン、カランカラン……


 

 この鈴の音、いいですよね。

 ここの神社の神様は縁結びの神様ですって。

 私たちにぴったりじゃないですか。

 

 宅間君は何をお願いしましたか?

 

 恥ずかしくって言えないの。かわいいですね。


 私は宅間君とずっと一緒にいたいってお願いしたの。

 

 あれっ、どうしたのですか?

 顔が赤いですよ。

 えっ同じことをお願いしたの。

 うふふっ、気があいますね。

 じゃあ、御朱印もらいにいきましょうか?


 はい、二枚お願いします。

 二枚で千円ですね。じゃあ、これでお願いします。

 これ宅間君の御朱印帳。かわいいでしょ。

 これからも一緒に宅間君と神社やお寺に行けたらいいなって。


 あっ、ありがとうございます。


 ほら見てここの御朱印はね、お稲荷さんが後ろにいるのよ。とてもかわいいわね。

 また、御朱印もらいにいきましょうね。


 じゃあ、次の場所にいきましょうか?

 ここから歩いてすぐのところなんですよ。



 ほら、見えてきたわ。あの美術館なんです。

 今ね、日本刀の展示をやってるのよ。

 音声ガイドも有名な声優さんがやってるみたいなの。

 

 はい、大人二名と音声ガイドも二つお願いします。


 じゃあ、入りましょうか。

 ほら、はぐれないようにここでも腕をつかませてもらいますね。

 見てください、宅間君。この刀は平安時代に鬼を倒した刀なんですって。

 ゲームでも出てくるんですか。へえ、今度やってみようかな。

 

 あっ駄目よ。ゲームの話をしたいからって、春花、今日は私が宅間君を一人占めにする日なんだから。

 ごめんね、春花が話をしたいってうるさくて。でも、今日は私の日なんだから。

 四週間も待ったんだからね。


 この音声ガイドの声優さん、とてもいい声をしてますね。どこか宅間君に似てますよ。

 この刀は鎌倉時代のものですって。

 後に織田信長か所有して、徳川家康に譲られたんですね。

 時を超えて伝わるってロマンがありますよね。


 今日はありがとうございます。地味なデートでしたよね。

 そなことない、楽しかったですって。なら本当に良かったわ。

 この奥にミュージアムカフェがあるの。お茶していきませんか?



 ほら見て下さい。

 ここのオリジナルのマグカップなの。

 宅間君のも買ってきたわ。

 これでお家に来たとき、一緒にお茶しましょうか。かわいいデザインでしょ。この美術館はふくろうがイメージキャラクターなのよ。

 白いふくろうと黒いふくろう。私のが白ふくろうで宅間君が黒ふくろう。

二個でセットになってるの。

 あ、あの宅間君が頼んだケーキ一口もらっていいですか?

 こんなとき真冬だったら遠慮なんかしないんだけどね。夏樹なんか自分でケーキつくるんだから。


 えっ、そんな他の人のことばかり言わないでって。


 やだっ、宅間君、嬉しいわ。

 そうね、私ネガティブだから他の三人とすぐ比べちゃうのよね。

宅間君、私もあなたのこと完璧に好きになったわ。宅間君、とても優しいし、たよりがいあるし。


 あなたの告白、私も、いえ、私はOKよ。これからも私たちをよろしくね。

一週間後、私たちのお家に来てくれるかな。

 私たち四人であなたを歓迎したいのよ。

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