第21話 旦那様との仲も深まったと思ったのですが…
旦那様のご両親が帰ってから、1週間が過ぎた。夕食後、旦那様と一緒にお茶を楽しんでいる時、クリスがたくさんの果物を持ってきてくれた。
「旦那様、奥様、領地からたくさんの果物が届きましたよ」
どうやらご両親が、果物を送ってくれたらしい。
「これはスターフルーツですよね。こっちはマンゴーだわ。これは、ドリアンね。こんなにもたくさんの珍しい果物を送ってくださるなんて。早速頂きましょう」
今まで本でしか見た事がなかった果物たちが、目の前に並んでいる。
「そうだな、早速食べてみるか」
綺麗に切ってもらった果物たちが運ばれてきた。どれもとても美味しいわ。こんなにも美味しい果物、私たちだけで食べるのは勿体ない。
「旦那様、もしよろしければ、この果物を友人や実家におすそ分けしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない。果物はいくらでも取り寄せればいいんだ。好きなだけあげるといい。すぐに各家に送る手配を行おう」
「ありがとうございます」
基本的に私がする事に反対しない旦那様。それどころか、手助けまでしてくれる。領地に行く話しも、今は騎士団のお仕事が忙しくなってきたので、落ち着く半年後くらいに行こうと言ってくれた。
“半年も待たせて本当にすまない。出来るだけ早く仕事を片付ける様にするから”
そう言って何度も謝ってくれた。領地までは馬車で片道1週間かかる。滞在時間を考えたら、1ヶ月程度お休みを貰わないといけないのだ。騎士団長でもある旦那様が、1ヶ月もお休みを貰う事がどれほど大変か、さすがの私でもわかる。
それでも調整してくれる旦那様には、感謝しかない。そんな旦那様、最近は随分と私と一緒にいてくれる様になった。夕食後は一緒にお茶をしたり、領地のお勉強をしたりと、毎晩必ず2人の時間を作ってくれている。
相変わらず無口だが、それでもなんとか私と話をしようとしてくれる旦那様が、愛おしくてたまらない。ただ、夜の方はまだだ。こっちは焦らず、いつか旦那様が私を受け入れてくれる日まで、待とうと思っている。
この日も夜遅くまで一緒に過ごし、それぞれ寝室に戻った。
翌日、いつもの様に旦那様が騎士団のお仕事から帰って来た。
「おかえりなさいませ、旦那様」
「ただいま。実は今日、ちょっと出かけないといけなくて…すまないが、1人で食事を食べてくれるか?」
「今からですか?一体どちらに行かれるのですか?」
「実は夜会に誘われていて、どうしても断れない相手だったんだ…出来るだけすぐに帰る様にするから」
夜会…
通常夜会は、夫婦で参加するもの。でも旦那様は、1人で参加するの?どうして?
状況が理解できず固まる私に、急いで準備をして出発する旦那様。そんな旦那様を、ただ見送る事しかできない。
「奥様、夕食にしましょう」
玄関から動かない私を見たカリーナが声を掛けてきてくれるが、正直食欲がない。
「ごめんなさい、今日はちょっと疲れちゃったみたいだから、もう寝るわ」
そう言い残して、急いで部屋に戻ってきた。
どうして旦那様は、1人で夜会に行ったの?もしかして、私と一緒には参加したくない?きっとそうよ。私は社交界でも、いわくつき令嬢として好奇な目にさらされていた。そんな私を連れて、社交界になんて出たくないわよね。
気が付くと、涙が溢れていた。
私は何を悲しんでいるの?そもそも、結婚してもらえた上、最近では色々と話しもして下さっているのに。これ以上何を求めようとしているの?
頭では分かっているが、それでもやはり夜会に連れて行ってもらえなかった事が、ショックでたまらない。旦那様にとって、私はきっと恥ずかしい存在なんだ。だから極力、屋敷から出したくはないんだ。
私は結局、旦那様のお荷物なのかもしれない。
考えれば考えるほど、ネガティブな方向へと進んでいく。ダメよ、このままだと。そもそも私が食事をとらなかったと旦那様が知ったら、お優しい旦那様の事だ。もしかしたら、私が夜会に連れて行ってもらえなかったことにショックを受けたと気付くかもしれない。
そうなれば、次から嫌でも夜会に連れて行ってくれる様になるだろう。私といる事で、旦那様まで好奇な目にさらされるかもしれないわ。
とにかく、旦那様に嫌な思いはしてほしくない。ここは普通に過ごさないと…
急いで起き上がり、顔を洗うと、すぐに部屋から出た。
「奥様、体調は大丈夫なのですか?」
部屋の外に控えていたカリーナが、心配そうな顔で私の側に来てくれた。
「ええ、大丈夫よ。お腹すいちゃって、今からでも夕食は間に合うかしら?」
「はい、もちろんです。今すぐ手配させますので」
嬉しそうに笑ったカリーナが、急いで近くにいたメイドに指示を出している。彼女にもいらぬ心配をさせてしまったわね。私はすぐに感情に出てしまうところがある。これからは皆に心配かけない様に注意しないと。それに、旦那様にも…
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