第13話 旦那様と話しをしました

3人を見送った後、一旦自室に戻る。そして、今日改めて友人たちと話した事を思い出す。


確かに友人たちが言った通り、私は自分を卑下し、旦那様と向き合う事を逃げていた部分があった。でも、私たちは夫婦だ。このままではいけない。一度旦那様としっかり話をしよう。


話した結果、旦那様が私に何も期待していない、今まで通り、お互いあまり関わり合いたくないと言うのであれば、その時は…また皆に相談しよう。


とにかく、旦那様が何を考えているのか、まずはしっかり確認しておかないと。でも、私が話しかけた事で、嫌な思いをしないかしら?


ついそんな事を考えてしまう。自室で悶々とした気持ちを抱えている間に、旦那様が帰ってくる時間になってしまった。急いで玄関へと向かうと、ちょうど旦那様が帰って来ていた。


「おかえりなさい、旦那様」


「ああ…」


相変わらず私の顔を見ずに、さっさと部屋に行ってしまった。やっぱり私、嫌われているんじゃ…


そんな感情が沸き上がる。ダメよ、弱気になったら。たとえ嫌われていたとしても、一度きちんと旦那様と話しをしないと。


そんな思いから、食堂へと向かった。しばらく待っていると、旦那様がやって来た。


「あの…旦那様。私の為に、友人たちを呼んでいただき、ありがとうございました。久しぶりに友人たちと、話しに花を咲かせることが出来ましたわ」


「そうか…今後はいつでも友人を呼ぶといい」


「はい、ありがとうございます」


よし、とりあえず友人たちに関するお礼は言えたわ。ホッとしたのも束の間、相変わらず食べるのが早い旦那様は、猛烈な勢いで食事をしている。そして、あっという間に食べ終わり、自室へと戻ろうとしている。まずいわ、まだ何も話しが出来ていないのに。


「あ…あの、旦那様。この後、少しお話をしたいのですが、よろしいでしょうか?」


そのまま席を立った旦那様に、急いで話しかけた。一瞬大きく目を見開いた後


「…ああ。わかった。それじゃあ、居間で待っている」


そう言い残し、去って行った。よし、旦那様と話しをする機会を作れたわ。さあ、私も急いで食事を済ませないと。


食事を済ませ、旦那様の待つ居間へと向かう。なんだか緊張する。私、うまく話せるかしら?


旦那様の待つ居間の扉の前までやって来た。この部屋に旦那様がいるのよね。自分で呼び出しておいて、ものすごく緊張してきた。


意を決して、ドアをノックし、ゆっくりと開けた。


「あの…旦那様、急にお呼びたてして申し訳ございません。どうしても、お話ししたい事がありまして…」


「構わない。それで、俺に話しとは一体…」


なぜか私の方を見ず、俯いている旦那様。やっぱりこれは、私の事が嫌いなのかしら?そんな思いから、つい


「単刀直入にお伺いいたします。旦那様は、私の事がお嫌いですか?」


そう聞いてしまった。その瞬間、旦那様がものすごい勢いで顔を上げた。


「俺が君を嫌っているだって?そんな事はあり得ない。そもそも君の方こそ、その…俺に怯えているのではないのか?」


「私が旦那様に怯えているですって?そんな事はありませんわ。こんな私を妻として迎えてくれた旦那様には、感謝しております」


旦那様の目を見て、はっきりと告げた。


「君は…俺の目を見ても怖くないのかい?」


「特に怖いとは思いません。そもそも、旦那様を怖いと感じていたのでしたら、いくら侯爵でもある旦那様からの打診であっても、お断りさせていただいておりました。旦那様こそ、私とはほとんど目も合わせられませんし、私を避けていらっしゃった様なので…」


「別に避けていたわけではない。俺が君の側にいたら、君が恐怖を感じるのではないかと思って、極力一緒にいない様にしていただけだ!」


なんと!友人たちが言っていた通り、目つきの事を気にして私に話しかけてこなかったのね。とにかく、私の事を嫌いだった訳ではなくてよかった。


「私たち、お互い何か誤解があった様ですね。今日は勇気をもって、旦那様とお話しが出来てよかったです。あの…これからは少しずつでもよろしいので、こうやってお話しが出来ればと思っております。もっと旦那様の事、知りたいので…」


さすがに自分からこんな事を言うのは恥ずかしい。でも、これを機会に少しでも旦那様に近づけたら、そう思ったのだ。


「君が望むなら。でも、本当に俺の事が怖くはないのかい?」


「怖い訳がありませんわ。むしろ…」


「むしろ?」


「いいえ、何でもありません。そうそう、1つお伺いしたい事がありまして。最近領地についてクリスに色々と教えていただいているのですが、やはり私が領地について色々と勉強するのはお嫌でしょうか?」


ずっと気になっていた事を、旦那様に確認した。もし旦那様がお嫌なら、止めようと思っている。


「嫌という訳ではないのだが…そうだ、今後は俺も一緒に参加してもいいだろうか?俺もいつまでも領地の事を両親やクリスに手伝ってもらっている訳にはいかないし…」


「まあ、旦那様も一緒にですか?それは嬉しいですわ。それなら早速そう致しましょう」


まさかここに来て、旦那様と一緒にお勉強が出来るだなんて思わなかった。やっぱり皆が言っていた通り、自分の気持ちをはっきりと伝えてよかった。

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