終わった恋ほど美化される

大藤夢叶

第1話 布団で見る過去の夢

「よし、夜も遅いし今日はもう寝よう。」

そう言って、伸彦は布団に入った。


今までなら布団に入ったらすぐに寝付けるのだが、最近は中々寝付けずにいた。

そんな寝れない伸彦の頭の中には、”あること”が思い浮かんでいた。


「はぁ、今日もやっぱり出てくるか。。。」


そう、最近の伸彦が布団に入ると、菅らずと言っていいほど”あること”を思い出すのだ。


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その”あること”とは、学生時代に付き合っていた元カノのことだ。


伸彦は、学生の時に”麻衣”という女性と付き合っていた。

麻衣とは、出会ってから1年が経ったある日に麻衣から告白されて付き合い始めた。


2人は他にいないのではないかというレベルで、価値観や考え方、趣味、生活スタイルなどが合っていた。

その関係を見ていた友人やバイト先の関係者から、


「2人は長年付き合っているような関係性だね」

「そんなに仲が良いのは羨ましい」

「伸彦君は、麻衣ちゃんを逃したら他に良い人は出てこないよ」


と言われるほど、自他ともに認めるほどの仲だった。

もちろんそれは2人も自覚しており、喧嘩をする事もなく仲良く過ごしていた。


そんな中、お互いが社会人になり、半同棲していた生活が遠距離恋愛になったのだ。

会えなくなるのは寂しいが、既に結婚の話もしていたことから2人に不安などはなかった。


しかし、今まで常に一緒に居た生活から会えない生活になった反動からか、伸彦は寂しさを我慢できないようになっていた。

その寂しさを埋めるように、会社の同僚と遊ぶ時間を意図的に増やすようになった。


伸彦は、自身のキャラクターのお陰か、同僚から誘われることが多く、仕事終わりに飲みに行ったり、休日に遊びに行ったりした。

中には、自身の家に同僚が集まって遊ぶこともあった。


そんな生活を繰り返すうちヶに、伸彦はある先輩を気にするようになった。

気づけば目で追っているし、先輩の手伝いなども買って出るようになっていた。


そんな生活が数ヶ月続いたある日、伸彦は麻衣と電話をしていた。

伸彦と麻衣は遠距離恋愛をしているため、時々電話をしているのだ。


その日もいつも通りお互いの近況や次に会う日などを話していたが、伸彦は”あること”を伝える決意をしていた。

そして、意を決して言葉を発した。


伸「麻衣、ちょっと話したいことがあるんだけど良い?」

麻「うん良いよ、どうしたの?」

伸「・・・・・」

麻「・・・どうした?」

伸「麻衣・・・別れよう」

麻「・・・・・」

伸「・・・・・」

麻「えっ、嫌だよ!なんで?」

伸「じつは、、、」


そう言って、伸彦は話しだした。


遠距離で寂しくなっていたこと

そんな中、先輩を気になっていたこと


もちろん、麻衣は嫌がった。

しかし、伸彦の気持ちは変わらなかった。


急に言われても考えがまとまらないという結論になり、1週間の時間を置くことになった。


そして、1週間後。


麻「気持ちは変わらないの?」

伸「うん、変わらなかった。」

麻「そっか。。。」



麻「それじゃあ、別れよう。」

伸「ごめんな。。。」


そう言って、2人の電話は終わった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


なぜ、今そんなことを思い出すのか。

それは、伸彦が今でもその選択をしたことを後悔しているからだ。


なぜあの時、先輩に気が移ってしまったのか。

なぜあの時、もっと麻衣に寂しさを素直に伝えなかったのか。

なぜあの時、もっと麻衣と向き合って大事にできなかったのか。


今さらそんなことを考えても、覆水盆に返らず。

後の祭りなのだ。


だからこそ、戻らない恋愛だからこそ、今でも忘れられないのだ。

そして、戻らない恋愛だからこそ、伸彦の中で日に日に美化されているのだ。




そんなことを思いながら布団に入っていた伸彦は、気づけば寝入っていた。

そして、気づけば透明な窓ガラスから眩しい朝日が部屋に射していた。


「さて、今日も頑張るか」


眠そうな目を擦りながら、伸彦はコーヒーメーカーのスイッチを入れた。

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終わった恋ほど美化される 大藤夢叶 @ohujimuto

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