方言女子に愛される、のんびり2人暮らし~お兄さんは頑張っとるけん。ウチに癒されていいがよ?~

薄味メロン@実力主義に~3巻発売中

第1話 帰宅したあとで

「あっ、お兄さん、おかえりー。今日は早かったとね。もうすこしでご飯出来るけん──って、どげんしたと!? 顔色がひどいちゃね! なにかあったと!?」


「大丈夫って、そんなわけないちゃね……。声に元気がないとよ? 顔も疲れとるちゃね」


「全然疲れてないって、お兄さんは、ウチを騙せると思っちょるん? お兄さんと一緒に住み始めて1ヶ月やけど、ウチ、お兄さんのことは、それなりに知っとるとよ?」


「あんな? お兄さんが頑張っとる姿は、ずっと横で見てたけん。ウチを相手にかっこつけんくていいがよ。大丈夫やけん。ウチの顔を見て、ゆっくり深呼吸するちゃね」


「ん。ちょっとは落ちついたと?」


「いまの兄さんな? ウチが『高校のあいだは、お兄さんと一緒に住みたいが。都会は家賃が高いけん、あかんと?』って聞いた時と同じ顔しとるっちゃよ? 自分でも気付いとると?」


「気付いてない? 大丈夫? むう。ぜんぜん大丈夫じゃないが」


「お兄さんは、ホントに頑張りすぎやよ。もうちょっとな? 自分に甘くてもいいがいよ?」


「ん? 自分に甘くなるのは、ウチが方言をなくすくらい無理? そっ、それは言わん約束やけんね」


「これでもウチは、頑張っと……頑張ってるのよ? こっちの友達の前では、方言が出ん、出ないようにしてるの。……ほやけどな? 大好きなお兄さんの前では、素の自分でいたいと」


「ん? 大好きに驚いとると? ふふっ。そこはあんまり気にせんくていいちゃよ」


「あんな? 話を戻すとやけど。お兄さんは、すっごく頑張っちょるん。ウチはそれをずっと近くで見てたと。ほやから、ウチはわかっとるけんね」


「誰が褒めんくても、ウチだけは絶対にお兄さんを褒めるちゃね。ほやからな? お兄さんはもうちょっと安心していいがよ?」


「ん? もっと頑張らんといけんくて、手を抜きたくても出来んと? ……むぅ」


「まあ、いいっちゃね。お兄さんは大人やけん、仕方がない部分もあるんは、わかっちょるけんね」


「それに今日はお兄さんと住みはじめて1ヶ月記念日。お兄さんは覚えとったと?」


「忘れてた? むう~。まあ、いいちゃね」


「ほいでな? ウチもこの1ヶ月で高校生活に慣れて、余裕が出てきたけん。今日はお兄さんの疲れを癒せるように準備しとったん。ほやから、ちょうどよかったちゃ」


「晩御飯の準備はすぐに終わるけん。お兄さんは、先に座って待っちょってな? ん、その前に、鞄もウチが持つちゃね」


「今日もお疲れさま。リビングのドアもウチが開けるけんね」


「ん? ウチが掃除した事に気が付いたと? 今日はな? 学校が早く終わったけん、綺麗に片付けて、掃除をしてみたと」


「ほやけど、ウチ、掃除はあんまり得意やないけん。このくらいにしかならんかったと……」


「綺麗になった? ふふ。そう言って貰えると嬉しかね」


「疲れて帰ってきたお兄さんが、ちょっとでも安らげるようにって思って、ウチ、頑張ったんよ?」


「ウチが『一緒に住みたいが』って言うたときは『迷惑だ』って言うちょったけど、少しは見直してくれたと?」


「ふふっ。ウチ、いいお嫁さんになれるように頑張っちょるけんね。もっともっと頑張るちゃよ」


「あっ、そやったね。いつまでもここで話してる場合じゃないと」


「あとは盛り付けだけで晩御飯の準備も終わるやけん。うち1人で行ってくるちゃね。お兄さんは、テレビでも見ながら、ゆっくり待っちょってな?」




 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ 



「お兄さーん。できたけんね。前を通るとよ?」


「今日のメニューは、オムライスとタマネギのスープにしてみたと」


「どげんかな? 美味しそうに出来ちょると思わんとね?」


「ん? お店みたいに見えると? ふふ。お兄さんも、1ヶ月でお世辞が上手くなったっちゃね」


「一瞬だけ、黄身が破れちょる場所見てたん、ウチも気付いちょったよ?」


「ふふっ。そげん慌てて取り繕わんくてもいいっちゃね。見た目は失敗しちょるけど、味はウチが保証するけん」


「あっ、スプーンを持つのは、もうちょっと待っちょってな? これからお兄さんを癒すための仕上げがあるけん」


「さっきも言った通り、今日は1ヶ月記念日。ほやからウチな? いろいろ調べて、お兄さんの疲れを取る日にするって決めたけん」


「よいしょ……。ん。これでよかね」


「あんな? ウチ、お兄さんにお願いがあると。もうちょっとだけ横にずれて座ってくれんとね?」


「ん、ほしたら、横を失礼するちゃね。ほいでこうして……。1つの椅子に2人座れたちゃね」


「お互いの体が触れるとやけど、ちょっとの時間だけやけん。我慢して欲しいと」


「ん? お兄さん、どうしたと? 耳が赤いけんね?」


「ウチと体が近いのはダメ? それは、どういう意味やの?

……お兄さんは、ウチと近付くんがイヤやの?」


「イヤやない? そうじゃなくて、ウチのことが心配? ウチにイヤな思いをさせてる?」


「ん。それなら大丈夫やけん。ウチはお兄さんと近付けて幸せやよ? 近くで見上げるお兄さんの横顔、かっこいいちゃね」


「ふふ。お兄さん、照れとると?

そんな姿もカッコイイっちゃよ」


「ほしたらな? この『ウチ特性オムライス』を『お兄さん専用の癒しのオムライス』にしていくけんね?」

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