書き手サイド振り返り

伝えたかったこと伝わった? やりたかったことできた?

 というわけで、筆者は最終的に以下の3作で参加しました。


【No. 086】木蘭を返せ【残酷描写あり】

【No. 140】犯人はヤス【ポートピア連続殺人事件ネタバレ要素あり】

【No. 164】ヤツは死なない。何度でも蘇る。


 それぞれ、振り返ってみます。




【No. 086】木蘭を返せ【残酷描写あり】

[考えてたこと]

 当初はこれ一作だけで勝負するつもりでした。

 コンセプトは「再会から始まって、最後に再会の真相がひっくり返る」。

 テーマの性質上、再会場面が後半または最後にくる作品が多数だと予想されたので、出だしにいきなり再会を持ってくることでインパクトを狙いました。

 中華風にしたのは……なんでだったろう……思い出せませんが、元々三国志等の中国歴史ものが好きなので、無意識に選択したのかもしれません。

 破滅的な「再会」による、なにがしかのやりきれなさが最後に残るように、と考えて書いたように思います。

 組み立てた話は、2500字にはちょっとキツめの感じでしたが、筆者にだけ通用する魔法の呪文「ベリーソースよりは楽」(※1)を唱えつつ超圧縮モードで乗り切りました。


[得られたこと]

 最終的には多くのコメントをいただけましたが、投稿からしばらくはPVも応援もなかなか伸びなかったですね……。ハートは結構いただけたのですが、その割にコメントがつかない。

 寄せていただいたコメントで気付いたのですが、「話があまりにも重苦しすぎてコメントしづらい」「主人公の性格付けに難がある」あたりが影響していたかもしれません。

 中国の古典小説って、三国志演義にしろ水滸伝にしろあっさり人が死ぬので、そのあたりの感覚で書いてしまっていた気がします。万人向けとは言い難かった……。

 とはいえ、刺さる人には深く刺さる話にはなってくれていたようです。とても熱量の高いコメントをいくつもいただいて、もうこれだけで企画参加したかいがあった! と、感激することしきりでした。ありがとうございました!




【No. 140】犯人はヤス【ポートピア連続殺人事件ネタバレ要素あり】

[考えてたこと]

 木蘭がしばらくPVも応援も伸びず、このままでは終われない! と、リターンマッチを決意した後半戦。

 しかしどう戦えばいいか、しばらく迷走が続きました。心温まる現代ドラマや、美しい文章の作品が好評なのを見て「自分もこういうので挑戦してみよう」と着手したはいいものの、全然ぱっとしない話にしかならなかったり(※2)。

 そもそも、後半参戦作は前半に比べて読んでもらえない。まずは読んでもらわないと、勝負が始まりすらしない。とすると、まずはタイトルでインパクトを出さなきゃならない。


 そんなことを考えつつ、リアルでは自宅の片付けに追われていたのですが……整理していた二次創作同人誌の山の中に「ポートピア連続殺人事件」の本を見つけまして(マイナーゲームの同人誌が好きで、昔よく買っていたのです)。

 これだ! と、ひらめきを得た次第です。


 タイトルが決まれば、主題はすんなり決まりました。

「犯人はヤス」というフレーズを聞いたことがある人は多いけれど、実際のゲームのストーリーをきちんと知っている人は少ない。

 ここで「広く流布した表層的な虚像と、実像とのギャップ」がテーマになりました。


 ここまで決まれば、あとはディテールを固めるだけ。

 筆者は昭和生まれのリアルタイム世代なので、当時の記憶をいろいろ拾って細部を詰めました。「側溝が泡立っててなんか臭い木造ボロアパート」は実際に近所にありましたし、「病気の親御さんに代わって弟や妹の世話をしていた子」は実際に同級生にいました(女の子でしたがゲームが好きでした)。



[得られたこと]

 木蘭に続いての重苦しい話でしたが、深く心を動かされた旨のコメントを多数いただいてとても感慨深かったです……ただ、実は本作「ベストタイトル賞」を密かに狙っていたのですが、そちらの方向では票が入らなかったですね。

 いただいたコメントを拝読していると、作中の「ヤス君」のありようが多くの人に刺さったように思われました。昭和の細かなディテールから組み上げた彼の姿は、いつしか、タイトルを忘れるほどに強い力を持ったのかもしれません。


 なお、本文中のフレーズ「(顔の痣が)はねを広げた蝶に、見えなくもない」は、ネタ元のゲームで「犯人はヤス」を最終確定する要素が「左肩にある蝶の形の痣」であったのとリンクさせています(気付いてはもらえなかった感じですが)。




【No. 164】ヤツは死なない。何度でも蘇る。

[考えてたこと]

 木蘭~ヤスの間で迷走していた時期は、他にもいろいろと細かなアイデアを出していました。

 時間がなかったこともあり、それらの大半はメモどまりだったのですが、一本だけ、500字程度本文を書きかけていたものがありました。

 せっかく着手したんだし、どうせならこれも完成させて出したいなあ……と思い立ち、ギリギリながらも仕上げて最終日に滑り込ませました。


 コンセプトは「最終行で笑ってほしい」。

 それ以外の意図がありようもない一発ネタです(笑)



[得られたこと]

 最終日の賑やかしに、と、勝敗や得点は忘れて肩の力を抜いて送りつけた話でしたが、思いのほか好評で嬉しかったです。

 意外だったのが「展開が読めることがマイナス要因にならなかった」こと。

 少なくともコメントを寄せてくださった方は、オチが予測可能だったことも含めて楽しんでくださったように感じました。「お約束」の楽しさ、といいますか。

 話を書く時はどうしても、展開を読ませないように、予測を裏切るように、と考えてしまうのですが……予定調和の楽しさは、驚きの楽しさとは別腹なのかもしれません!


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(※1)拙作「笑顔のベリーソース」 https://kakuyomu.jp/works/16816927861260911907

 別サイトの自主企画向けに、当初の見積10000字以上のところを、強引に規定字数5131字に押し込んだものです……自分史上一番文字数上限がキツかった……。


(※2)この話は2000字を超えたところで没にしましたが、余裕があれば完成させて本稿のどこかで供養するかもしれません。

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