第51話 こそこそ聞き耳立てるより、堂々と雑談に参加するほうが楽しいじゃありませんか


 村から王国側の中継都市に行く人に鼠皮紙の束を預けて、北に向かう。

 鼠皮紙には、村に来た山賊集団の罪状がプリントされている。


 冒険者ギルドには一応報告だけにしてと言っておいた。

 まあ依頼金積んで『討伐依頼』出しても、帝国とのケンカなんて受ける人いなさそうだし。

 そもそもギルドに『帝国と戦争』なんて依頼票貼ってあったら、そのほうがヤバイ。




 わざと逃がした一人を、マーカーを頼りに追いかける。

 広域〈地図マップ〉にはキューサの村以北にはマーカーつけた一人だけ。

 帝国には行ったことあるけどそのときは王都から東に向かって教国経由だから、こちらの北回りは初めてだな。


 予想通りというべきか、マーカーはすでに止まっている。

 村から1日ってところか。

 地形的にはちょっと拓けた盆地になってるといったところ。中継の村かな?




 準備不足はなはだしいけど追いかけてきてよかった。

 1週間余裕があると思って準備に動いてたら後手にまわるところだった。


 おそらくは夕方、そろそろ動いて深夜に村に到着といったところか。




「アルファさん斥候職だよね?」


「はい。

 潜入調査でも威力偵察でもお任せください」


「こっそり隠密は?」


「楽しくないですよ?

 建物の影に隠れてこそこそ聞き耳立てるより、堂々と雑談に参加するほうが楽しいじゃありませんか」


「楽しいかどうかで決めるんだね」


「もちろん命令なら従いますが」






 前方から一人、なかなかの速度で走ってきている。



「アルファさん、〈鑑定〉で相手の犯罪歴みたいなの調べるのはどの距離までいけるの?」


「マスターと同じ位階レベルのスキルだと思いますので有効距離も変わらないかと。

 スナイパーライフルのスコープ越しであればライフルの射程までは伸びますね」


「そのスコープ外して、前から来てる人見えます?」


「やってみます。・・・ああ、見えますね、『殺人』は無いようです。

 ライフルの射程の半分以下になってそうですが通常の鑑定の倍以上の距離といったところでしょうか」



「次は素で〈鑑定〉飛ばしてみて。俺も今のところは射程外だね」


「了解しました」


 こっそり衣装箪笥ポーターバッグにフォーメーションチェンジ。



「「・・・」」


「今!」

「見えました」



「ん、ほぼ同時だね。距離に関しては〈鑑定〉の位階に差は無い、と。

 穏便にすれ違ったら背後から拘束してね」



 皮鎧だけどしっかりした作りの帝国兵デザイン。

 馬車がギリギリすれ違える程度の幅の林道、道の端に寄って相手に譲る。

 関係ないけど日本と同じ左側通行だ。旧帝国の建国者が日本人っぽいからなのかな。




「貴様ら、この先になんの用だ」


 向こうから絡んできた。


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