愛しています、私のユルグ
「ふう」
仕事が一段落した俺は、大きく背伸びをする。
疲れたし、ちょっと昼寝でもするか。
寝室に向かった俺は、ベッドに横になる。
ベッドは、前はふたつだったか、今は大きなベッドひとつになっている。夫婦仲は良好なので当然だ。
「ん?」
横になって手を伸ばしたら、手に何かがこつんと当たった。
記録装置だ。
日記などを記録する奴だ。フェリスの私物か。
勝手に見るわけにもな――と思い、拾ってテーブルに置こうとした所、変な所をさわってしまったのか、再生が始まった。
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私は運命の出会いをした。
どうしてそうなったかの経緯は覚えていないしどうでもよい。
ただ、その少年は私たちを、私を守ろうと、その身を投げ出して戦った。
それを強烈に、鮮烈に記憶している。
私の胸は高まった。
これが、恋なのか。
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彼の事を調べたが、どうにも見つからない。
下級貴族が活躍したというのが都合が悪いのだろうか。
これだから、宇宙貴族という連中は。
とにかく、冒険者たちにも手を回して、彼を探さねば。
会いたい。
もう一度会いたい。
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学園に入学した。
彼の姿は無いかと期待したが、いなかった。
私の学園生活は、色褪せたものになりそうだ。
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一年が経過した。
新入生に、私の探していた者の縁者がいるとのことだ。妹らしい。
神の采配か、エーテルの導きか。
とても楽しみだ。
将を射んとすれば馬からと言うし、じっくりと彼女から攻略していくか。
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ユクリーンと接している過程で、特待生のアリシアと仲良くなった。
身分を気にせず、物怖じしない、元気な少女だ。私を先輩先輩と慕ってくる、子犬のようだ。とてもかわいい。癒される。
ついつい贔屓してしまうな。
今度、パーティーにも誘おう。
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殿下とアリスが仲良くなっているようだ。
きっかけは、私がアリスを連れて行ったパーティーのようだ。そこで何かあったらしい。
私はもしかしてとんでもない過ちをしてしまったのかもしれない。
私と殿下はある意味では似ている。お互いに恋愛感情も微塵もない、親が決めただけの婚約者だったが、話してみると色々と共感したのは覚えている。
男としては少しも興味が持てなかったが。
似ているのは境遇であり、性格は絶対似ていないが。
むしろ学園生活の上では相容れない敵でしかなかったが。
しかし、殿下とアリスか。
……正気か?
だが幸せというのは人それぞれだ。あの二人がうまくいくといいのだが。
何より、あのアホ殿下をもらってくれたら私としても嬉しい。
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私と殿下とアリスは、どうやら三角関係らしい。
馬鹿げた話だ。
婚約者ではあるものの、私は殿下に対して恋愛感情は全くなく、というか学園ではむしろ敵である。なんどぶん殴りたいと思ったことか。というか殴ったが。
そしてアリスに対しては友情と信頼しか感じていない。敵対心は全くない。嫉妬などする理由もない。
なのに世間というものは……度し難いな。
だが、これは使えるのではないか?
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計画はこうだ。
私は実は素直になれないツンデレである。
そして愛する婚約者、皇太子殿下に近づく女を、私は嫌い、迫害する。
そして、やがて私の悪事は露見し、皇太子殿下は激しく怒り、私に対して断罪し婚約破棄をする。
全ての罪を暴かれた私は、田舎貴族の所に嫁に出されるという罰を受け、追放されるという筋書きだ。
そしてもちろん、その田舎貴族というのは――
彼だ。
ユルグ・ノンヴィ・イナーカス。
私の愛する人。
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殿下とアリスと話し合い、計画は順調だ。
最初、二人は難色を示したが、私の本当の目的を話したら納得してくれた。
アリスに初恋をした殿下。
殿下に身分違いの恋をしたアリス。
とてもよく、私の想いを理解してくれた。
アリスがうまく殿下と正式につき合えるようにするために、私も使える手段は全て打っておかなくてはな。
アリス聖女化計画。
私ですら御せないバカ皇子が、アリスのおかげで更生しまともになるという筋書きだ。
その功績をもって、アリスを聖女に押し上げる。
上手く行けば彼女はそこらの貴族とは比べものにならない地位と権威を手にするだろう。
それが親友への、私からのせめてもの手向けだ。
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皇太子殿下の周囲で不審な動きがあるらしい。
あろうことか、皇帝陛下を害する為に動いている何者かがいるとか。
殿下はそれを知り、計画に組み込むとか言い出した。間違いない、あの男は今更ながらアホだ。
騒ぎを起こすことで、連中の動きを刺激し、行動に起こさせ、正体を突き止めて捕らえるとの事だ。
そしてその功績をもって、皇太子の地位を返上して逃げ出すとか。何を言っているんだろう、あのバカは。
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ついに私の悪事が白日の下に晒され、聖女アリシアによって断罪され、殿下によって私は婚約破棄された。
計画通りだ。
私は、適当にランダムに決められた――ということになっている――ユルグの元に嫁ぐ事になる。
そうなるように、父上たちにはしっかりと手を回しておいた。
我がローエンドルフ公爵家の醜聞とその証拠の全て――捏造も多分に含む――を全宇宙にばらされるよりは遙かにマシだと判断してくれた。
父上たちが逆らわない限り、この秘密は墓まで持って行こう。
ありがとう父上。理解ある家族を持ってとてもうれしい。私は幸せになります。
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私は彼の星へと嫁いだ。
ユルグはこの状況にとても戸惑っているようだ、無理もない。
星から逃げ出そうともしたらしいが、逃がさない。
彼は私のものだ。私だけのものなのだ。そして私は彼だけのものだ。
ああ、しかしどれだけぶりだろうか。三年ぶりか。
久々に出会ったユルグは、あの時と変わらず――いや、年を重ねているぶん、さらに素敵になっていた。
本当ならすぐに飛びついて抱きついてキスしたかったが耐えた。
好き。
好き。
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き!!
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小さな質素な結婚式。
それは何度も夢に見た光景。とても素敵な時間だった。
しっかりと記録しておいた。
誓いの口づけは、なんど再生しても見飽きないし、なんど思い出してもそれだけで絶頂しそうになる。
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新婚初夜は迎えられなかった。
しかし、それはユルグの優しさと誠実さだ。
私は、殿下を奪った恋敵に敗北し全てを失った悲劇の少女という設定だ。
そんな傷心の娘に手を出すような、卑劣で卑猥な男ではないのが、ユルグ・ノンヴィ・イナーカスという私の英雄、私の夫だ。
そりゃあ、手を出して欲しかったというのも正直な所ではあるが。
しかしとにかく、私の理想通りの素敵な人であり、シーツの中で忍び笑いを抑えるのが大変だった。
ああ、幸せだ。
私たちの幸せな夫婦生活が始まるのだ。
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ユルグの家族とは、友好的な関係を築けそうだった。
アリスの時も思ったが、私はどうも貴族社会にそまった者たちよりも、こういった普通の平民庶民に近い者たちが好みなのだろうか。
もし、彼らが不快な貴族だったり、邪魔をしてくるようなら静かにさりげなく“処分”する方向だったか、そうはならないようでよかった。
よけいな手間をかけるより、愛する夫と愛を育む事に集中したいからな。
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下級貴族の生活にも随分と慣れた。
この家のそこらにユルグの匂いが染み着いていると思うと幸せでならない。
ユルグの食べた後の食器を片づける時や、洗濯物を洗うと時は最高に幸せを感じる。
義姉の目を盗んでこっそりと食器を舐めたり、洗う前の下着を新品とすり替えたりしているのは、ばれてはいない。
まあばれたら記憶を消すだけだが。
そのための薬もちゃんと準備してある。抜かりはない。
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ユルグは未だに私とベッドを一緒にしようとしない。
なので寝る前に睡眠薬を盛っておいた。
ほかの家族にも同様だ。
帝室御用達の宇宙錬金術師から取り寄せた薬だ、よく利く。みんなぐっすりと眠っている。
たとえ刺し殺しても目を覚まさないと言われほどの薬だからな。
寝ているユルグを堪能する。
ああいい匂いだ。汗の匂いがたまらない。舐めたい。
というか舐めた。美味しい。
パジャマを脱がし、夫の全裸を堪能する。
日々の生活で鍛えられた無駄のない肉体をしている。めちゃくちゃ興奮する。指が止まらない。
ああ、叶うならいますぐ私の処女をここで散らしたいが、我慢だ!
お互いに見つめ合い、愛を語らいながら初めてを交換するのか私の夢なのだから。
今は見て触って嗅いで舐めるだけで我慢だ。
なので、夜が明けるまで存分に丹念に、見て触って嗅いで舐めた。
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ユルグの入浴中に、間違えて浴室に入った。
……という体で突撃した。
風呂場で見るユルグの裸体は良かった。
水も滴るいい男とはこういうことか。
ユルグも私の裸体に見入っていた。その後、慌てて出ていったのだが、そこがかわいい。
直前までユルグが使っていたお湯は、美味しかった。
その場だけでなく、後で紅茶にしても飲んだか、今まで飲んだお茶の中で最高の味だった。
うまく入浴の順番を調整すれば、またユルグだけが使った湯を堪能出来る。
次が楽しみだ。
その湯でパンを作るのもいいかもしれないな。
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ユルグが私の入浴シーンを思い出して、自分を慰めていた。
もちろんその姿はしっかりと記録している。最高だ。
私を想ってそんなになるのか!
そして、いずれそれが私のここに!
もうすぐだ、確実にユルグは私のものになる。
だが焦るな。ゆっくりと確実に育てていくのだ。
その時まで!
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アリスと連絡を取る。
私たちの結婚生活に刺激を与えるため、宇宙山賊をイナ―カスに誘導してもらうことにした。
辺境の戦士たちだ、宇宙山賊が来たところで深刻な事にはなるまい。そして私はピンチになり、ユルグに助けてもらう、あるいはかっこよくユルグを助けるのもいいな。
どちらにせよ、夫婦の絆は強くなるだろう。
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……そう思っていたころが私にもあった。
イナーカス準男爵の家は化け物ぞろいだった。
そしてこの一連の映像を見たアリスが笑い死にしかけていた。まあその反応になるのも仕方ない。なんだあれは。
そういえばシヴァイタール辺境伯も強いと聞いていた。直接、辺境の騎士や兵士たちの戦いを見た事が無かったからな。あんなんばかりだったのか。
だけど、それで意気消沈していた私に対して、役に立っているとユルグは言ってくれた。
LOVEだ。
気を取り直して次の、私とユルグの夫婦生活大作戦をアリスと話し合う。
シヴァイタール辺境伯の所に行くことになった。
あの男はバカ殿下と似ているので苦手だが、まあいい。そこでイベントを起こして、私とユルグの仲を深めるのだ。
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実家から荷物が届く。
“実家からの嫌がらせ”に偽装して、相棒のL3を運ばせた。
L3は高性能のガードロボットだ。
そこに今回改めて盗撮盗聴機能を追加したのだが、それが完成した。
L3をユルグも従わせて一緒にいさせたら、完璧だ。実に違和感なく盗撮可能ということだ。
ただ、義兄上に、あのゴミの山について違和感を持たれてしまったが。
誤魔化すことは出来たが、優秀な人間には注意しないといけないな。
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シヴァイタール辺境伯主催、『ワクワク★ビックリ領地マウント対抗戦』の開催が決まった。
あの辺境伯にも困ったものだ、という共通の話題でユルグといい雰囲気になった。私に同情して、中々手を出せなかったらしい。なんと奥ゆかしく優しいのだユルグは。
だが、そんな時にグリンディアナが邪魔をしてきやがった。
あの糞女が。潰すぞ。
何が心配だっただそんな事など微塵も思っていないだろうに昔から押しつけがましくなんと邪魔な女だ八方美人でいつも周囲にいい顔をして美味しい所を取っていこうとする意地汚く醜く浅ましい女だ貴族というのはこういう性根の捻じ曲がった豚が本当に多すぎて笑えるなにが派閥だ家柄や権力しか見ていない癖に矢幼馴染だとか笑顔で言って友達面をして擦り寄ってくる蛾やはり当然私が婚約破棄された時は悲しそうに同情するふりをして内心で嘲笑っていたことは私は知っている楽しかっただろうな婚約破棄され捨てられた女を見下すのはしかしあの婚約破棄が私たちの自作自演だと知らずに本当に滑稽な事だあの事件で本当に私の味方をしてくれた人間は数えるしかおらずこの緑豚は当然私を見捨てた側だ最初から理解しいたからやはりなとしか思わなかったがなそしてこの緑豚はよりによって愛するユルグを私から奪おうと雌の顔をして擦り寄っていく何がグリンダとよんでくださいだ潰すぞ殺すぞ消すぞ滅ぼすぞその頭に生えた緑色の貧層な巻き草を全部むしりとって除草剤かけて永久に荒野にでもしてやろうかさてはてどうやって始末してやろうか私の全力全身全霊で潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処す潰す殺す消す滅ぼす処すt
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私が緑豚をどう処すか思案していた時に緑豚がユルルグににに近づtいてくぁwせdrftgyふじこlp
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緑豚が何かアプローチしていたが、ユルグは相手にしていなかった。
『俺たちに子供出来るとしても随分と後になるだろうけどな、フェリス』
とか緑豚相手に言っていた。豚が眼中にないっぷりが素晴らしい、やはり私の夫だな!! 最高だ!! 好き!!
それでも一応釘を刺そうと話をしたら、あの女に近づくなという私の言葉に素直に賛同してくれた。
やはり私たちは運命で結ばれている。
夫が妻を信じないでどうすんだ。などと言ってくれた。L3にしっかりと録音させておいた。
私が緑豚を頑なに略称で呼んでいない事にも気づいていた。ユルグは私の事を好きすぎではないだろうか?
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ユルグは冒険者になりたいらしい。
まあ、一班の望みは素敵なお婿さんだろうが、それはすでに適っているしな。
冒険か。
妻として、夫の望みは叶えねばなるまい。
――殿下やアリスの“計画”に、ユルグを加える事も考えてみるか。
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まさか邪神の瞳が現れるとは想定外だった。
勇者でもなければ苦戦する神話級モンスター。
死を覚悟した。
ああ、だけどなんと、なんとなんとなんと、
「俺の妻に手を出すな」
と!!
ユルグがかっこよく駆けつけて、そしてなんとあの化け物をあっさりと倒した!!
あの時と同じだ。初めて会ったあの時と同じなのだ。ああ、やはり私たちは運命で結ばれている!!
そしてユルグは私を!! 優しく!! 抱きしめてくれたのだ、強く、しっかりと!!
お前は俺が守る。
なんて言ってくれたのだーーー!!!!
保存した。記録した。しっかりと!!
ああもう死んでもいい。なんだこの幸せは!!
この日私たちは、本当の意味で夫婦となった。
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今日も私とユルグの生活は充実している。
相変わらず、朝起きると、隣で全裸で寝ている私に驚いているユルグが可愛い。そしておはようと言うと真っ赤になって照れながら返してくれるのも最高だ。
もうお互い初めてを交換したというのに。初々しくてたまらないな。
仕事に行く夫をいってらっしゃいのキスで送り出す、なんという幸せか。
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アリスから連絡が来た。
殿下が襲撃されたらしい。三人で用意した婚約破棄追放騒ぎという導火線に火が付いたということか。
殿下はこのまま自分を囮にして犯人を刺激し炙り出す算段らしい。
殿下がどうなっても別にいいが、アリスの身に危険が及ぶのは避けたい。私も動かねばならないだろう。
それに、ユルグに冒険をさせてあげたい。
急に態度が変わり、立ち去る妻。意味ありげな言葉、不自然な態度。どう考えても裏がある。
声にならない叫び、言外のメッセ―ジ。その妻のSOSを感じ取り、愛する妻を助けに宇宙へと飛び立つ――
きっとユルグの求める冒険がそこにあるだろう。
そして冒険の先に、私たちはさらなる強い愛情で結ばれるのだ。
そのためには殿下が死んでも、まあ別にいいか、殿下だし。殿下もきっと本望だろう。
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ユルグは私を追って旅立った。そんなに私を愛しているのか……照れるな!
用意したヒントを的確に読み解いている。私の夫は天才ではなすだろうか。これも愛の力だな。
道中大変だったようだが、色々な冒険が出来たようでうれしい。
浮気もしなかったしな。当然だ。
偶然爆破テロに遭遇したのは驚いたが。
何はともあれ、ユクリーンと接触し、うまく話は進んでいる。
さあ、ユルグよ。冒険の始まりだ。
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まあ想定していたことだが、ユルグも殿下の正体に驚いていたな。
本当なら、殿下には最後まで、私を一方的に追い出しただけの男という認識でいてもらいたかったが、まあ計画変更なので仕方ない。
バレたところで、別段問題は無いだろう。
思ってたのと違う、とユルグは頭を抱えていたが……あんなのと婚約させられた私も大変だった。
恋愛感情? どうやったらアレにそんなものが沸くというのだ。洗脳装置でもなけれ無理だろう。
アリスがアレに恋をしたと聞いた時、病院を紹介したほどだ。ユクリーンも心配していたな。頭でも打ったのか、と。
だが、殿下はバカで阿呆だが、愚物でも悪人て゜もない。それは認める。そして私は、恋愛というものをとても素晴らしいと思う。アリスが殿下に本当に恋をしているならば邪魔などできるはずがないし、邪魔しようとする奴が現れたら全力で潰す。
なお「アリスが殿下を更正させた」というシナリオは私の筋書きだ。
殿下は更生など全くしていない。ただアリスのために、そして自分が皇太子をやめる計画のために我慢しているだけにすぎなかった。
惚れた女のために我慢できるとは、中々やるじぉいか。
だがしかし、ユルグたちの会話を盗聴していて思う。
ユルグは本当に私の事を好きなのだな!
ここまで信じて動いてくれるとは感動する。ユクリーンも立派だ。さすが私の義妹だ。近親相姦趣味なのも許すぞ。
必ず助ける――か。
ああ、待っていると当然だ、私はここだ、ここにいるぞ必ず助けてくれ私のユルグ、ああユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグユルグ♥
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父上の前髪が随分と後退していた。大変だな父上も。
まあ気持ちはわからんでもない。
客観的に見たら、詰んでいる。ローエンドルフ公爵家は終わるだろう。
なのに私を匿い続けるのは、私の握る我が家の醜聞の数々を世に出したくないためだろう。そういう判断が出来る理知的な父親で私も鼻が高い。
安心して欲しい父上。あのバカ皇子の立てた計画だ。そしてなによりも、愛しのユルグが私のために動いている。ハッピーエンドにならないわけがないのだ。まあ父上にはわからないだろうが、この領域の話は。
とりうえず、父にはよく効く胃薬を渡しておいた。
「これを渡しておこう、胃痛に耐えられなくなったら飲むがいい」
と伝えたら、死刑宣告された囚人のような顔をしていたが、なぜだろう。
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ふっ殺すぞズベタが。
何が昔からそうでした手に入れたものには執着しないだ何を知ったふうな事を人の男に吹き込んでいる手に入らなかったものは欲しがる強欲だとお前が勝手に私のものを欲しがっていた浅ましい豚だっただけだろうがこちらが仕方なく貴様が欲しがっていたものをくれてやった時もすぐに捨てていたのを知っているぞましてやそもそもその言い方は私が男をとっかえひっかえしているような言い方だな私はユルグと運命的な出会いをしたあの瞬間まで誰にも恋をしたことがなかったぞそれを勝手な事言うじゃないか私と夫の運命の出会いを侮辱する雌犬めどうなるかわかっているのだろうな貴様には死すら生ぬるい地獄を見せる事決定だしかもよりにもよって私が襲撃犯だという捏造画像を見せてそれでユルグの心を自分に向ける事が出来ると本気で
……ん?
……なるほど。
馬鹿な女だ。馬脚を現したか。L3がしっかりと保存したぞ。
さっそく殿下たちに報告しないとな。
犯人は貴様か。
グリンディアナ・フォンデルム・ヴァナルディース。
首魁でなくとも確実に、皇太子襲撃に関わる一味ということだな。
貴様の敗因はただひとつ――私のユルグへの愛を甘く見たことだ。
私が愛する夫を24時間見守っていないはずがないだろう。
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ユルグが皇太子殿下とアリスと接触した。
L3が学園のコンピューターに接続したら連絡を入れるように伝えていたからな。
殿下と出会うユルグはドン引きしていた。ああそれが正しいぞユルグ。そいつは馬鹿だからな。
そして私を婚約破棄し追放した事について、殿下に怒りを見せるユルグ。ノロケか。
ともあれ殿下は、用意していた設定を話し始める。
私が命を狙われていたので婚約破棄して身を隠した――という真っ赤なウソを。
命など狙われていない。
単なる後付けだ。ユルグに運命の恋をしたから、それ以外に理由など全くない。
緑の豚が丁度良く動いたから利用させてもらったがな。
とにかくユルグは緑のゴミの言葉に乗り、私の為に、私のために虎穴に入った。好きだ。
そしたら、殿下とアリスの偽物の襲撃があり、それを退けたユルグはゴミ屋敷へと行った。
見事な演技を行うユルグにたいして、豚はベラベラと計画を喋る。ああ、それはいいのだが、ユルグが私への愛を語っている。
殿下が今も配信しているんだぞ。
銀河中に私への愛を語っていることに気づいているのか?
いや私としては最高の気分だが!!
そして悪あがきした豚が邪神の瞳を使って巨大な醜い化け物になる。
無様だな。
だが、良い。危ないところだったが私もギリギリ現場に間に合った。
そして自分が銀河に私への愛を叫んでいたことを指摘したら、真っ赤になって悶絶した。可愛い。この場で押し倒したくなるのを耐える。私は自分の自制心を褒めたいね。
その後の戦いは、戦いというよりも私とユルグの結婚式だった。食えそうにないケーキだったがな。あの時のドラゴンが助けに来たのも驚いた。可愛い奴だ。つい娘と言ってしまった。
あと、ケーキ入刀の時。
私は嫌いではなかったと言ったが――
というか、特に認識してなかっただけだがな。
ユルグに近づいた瞬間に、敵として決定したか。まあ今となってはどうでもいいことだな。
私とユルグの最高の引き立て役になってくれて感謝しているよ、グリンダ。我が親友!!!
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殿下とアリスと私の立てた計画はここに完遂した。
殿下は殿下でなくなりただのバカ皇子となった。アリスは聖女の地位を失ったが、アリスも最初からそんなのはどうでもよかったしな。
そして私は、ユルグに最高の冒険をプレゼントできた。さらに私達の夫婦関係は銀河中に公認のようなものとなった。あのバカにも感謝せねばな。
あとどうでもいいが、実家の方も名誉回復した、むしろ前よりも勢力は増すそうだ。
そのおかげか、父上もユルグを非常に歓迎し、泣いていた。家族関係が良好なのはよいことだ。
ユルグはもはや英雄だ。
注意しないといけない。私は強欲な女だ。欲目をかすい変な野望を抱いたりしないようにせねば。
私は、ユルグに対して、地位だの名誉だの権威だのを求めてはいない。今回は、ユルグが冒険者になってみたかったというからその夢を全力でサポートしただけだ。
私はただ、ユルグの愛さえあればいいのだ。
この冒険で私たちの愛は深く強く結びついた。
それはイナーカスに戻っても変わらない。私は後始末にしばらくセントラリアに残る事になったが、離れている間、会えない時間がさらに愛を育てる。
L3がちゃんと、私に会えなくて寂しがってる姿、私を求めている姿を送ってくれていたしな。たまらん。愛を感じる。
イナーカスに戻った時の、ユルグの気の抜けた顔がかわいい。不意打ちでキスした時の反応がとても可愛い。
思わず――そのまま襲ってしまった。
ああもう――一か月ぶりのユルグ――――
好き♥
好き♥
好き♥
好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥好き♥♥♥♥♥♥
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……。
な、何だこれは……?
理解がおいつかない。いや、脳が理解を拒否している。
理解してしまったが最後――何かが。決定的に。
どうする。どうしよう。どうすればどうしたらどうして――!
「おや」
後ろから、声が聞こえた。
平然とした、凛とした、澄んだ声。
フェリスの声だ。
「見てしまったか。幸せのあまり舞い上がって、セキリュティロックを忘れていたか。
まあいい――」
俺はその表情を見れなかった。
振り返るより先に――
口元に当てられたハンカチ。
「安心しろ、ただの宇宙クロロホルムだ」
ああ――この少女は、悲恋に打ちひしがれた悲劇の少女でも、断罪された悪役令嬢でもない――
「目が覚めたときには、都合の悪いことは忘れている。ああ、そしたらまた愛し合いましょう、あなた――」
ただの、宇宙ストーカーだった。
そして、俺の意識はそこで途絶えた。
◇
「大丈夫か?」
ベッドで目を覚ました俺を、妻――フェリスが心配そうにのぞき込んでいた。
ずっと手を握っていてくれたらしい。
「俺は……どうしたんだっけ」
どうにも記憶が曖昧だ。思い出せない。
「疲れていたのだろう。なに、休んでいればすぐに良くなる」
「そうか――」
フェリスがそう言うのならそうなんだろう。
フェリスはそんな俺に、優しく微笑む。
どきりとする。
天使のような、優しい笑顔だ。
――これが、俺だけのものなんだなあ。
「――ユルグ」
フェリスが言う。
「私は、幸せでだ。色々あったが、あなたの元に嫁いで、私は――真実の愛を見つけた。
愛しています、私のユルグ」
「――ああ、俺もだよ、フェリシアーデ。俺のフェリス。愛してる」
俺は、二度と彼女を離さない。
どんなことがあろうとも。
口にするのは恥ずかしいけど――真実の愛は、そういうものなのだから。
――Fin――
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