第11話

前々回までのあらすじ。

私と日向は大学帰りに、自分達のエネルギー源となるBL本の新刊を買いに行ったところ。日向の王子様こと、旭陽太と。彼の友人Aのチャラ男こと、空井君と遭遇。

そして、空井君に誘われて。私は日向と旭君の喫茶店シチュエーションでの絡みシーンを見たいという誘惑に駆られ、日向と共にその誘いに応じたのであった。


「えっ、空井と旭って。地方民だったんだ!」


私と日向、そして旭君と空井君は小さな二人用のテーブルと椅子を二セット使って隣り合って座り。話に花を咲かせていた。


「そっ! 俺は徒歩五分圏内に海のある田舎で、陽太は雪国の田舎出身!」

「なんだよ、その雑な説明……」


空井君の説明に、呆れた声で言う日向。


「まあ、そんな最寄り駅まで車じゃないと行けないド田舎民だから。こんなオシャレなカフェとも、ほんの半年前まで全くご縁が無かったんだよね~!」

「なのに、そんなチャラい恰好してんだな」

「も~。恰好は別に関係ないっしょ、ヒナちゃん!」

「てか、ヒナちゃん言うなよな!」


お茶らけた様子で言う空井君に、日向がムッとしたように噛み付いた。私は二人の様子を眺めながら、空井君の隣側に座る旭君に目を向ける。

彼は日向とお揃いの飲み物のストローに口を付けながら、難しい表情をしていた。日向の味の趣向は、一応女子の私でもビックリするようなかなりの甘党なので。あまりの甘ったるさにビックリしているのだろう。

……チッ、仲良さげに話す日向と空井君に嫉妬する旭君――的なイベントは発生しなかったか。


「ヒナちゃんと真壁ちゃんは、バリバリの都会っ子なんでしょ?」

「バリバリって……まあ、一応。出身も育ちもこっちだけど……」

「真壁ちゃんは?」


空井君に向けられた質問に、私は咥えていたストローを口から離した。


「まあ、日向と一緒かな」


出身はお母さんの実家の都外の病院だから、生まれも育ちもってワケじゃないけど……。


「良いな~、都会っ子! 駅も徒歩で行けるし、オシャレなカフェも洋服屋もあってさ~」


言いながら、空井君は旭君へと顔を向け。


「陽太もそう思うだろ?」


と、尋ねた。


「俺は……」


旭君は空井君に視線を向けながら、口をストローから離し。


「どっちが良いとか、そういうのは無いけど」


そう言葉を続け。


「……けど、向こうに居た時より。今、日向達と一緒に居るのが楽しい……から。今のが良い、って思う」


と、少々ギコちなげに告げるのだった。


「ちょっと、陽太ったら~! ンな照れること言うなよ~」

「ホントだよ! ビックリするだろ!」


再びお茶らけた感じで言う空井君と、どう反応したら良いのか困惑した様子の日向。

かくいう私は、完全なる部外者として。気持ちは既に喫茶店の壁と同化しており。


(闇の過去を持つ攻め……これは、今後の展開への興味が増してしまうじゃないですかいっっっ!! 最新話ハリーアップっっっ!!)


と、一人心の中で勝手に悶えているのであった。

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