私は君達を見守る壁である!!
志帆梨
第1話
大学生になってから、2ヶ月過ぎた6月の頃。
「あっ、
友人を迎えに歩を進める私に、同学年の知人が笑い交じりにそう告げた。
私は友人への皮肉を冗談交じりに言いながら、知人へお礼を添え。友人——
日向と私は、高校からの友人だ。
男女間の友情は成り立たないと世間は言うが、一応女子である私と男子である日向の間には。友情以上の感情と関係は無い。
同じ趣味趣向を持つ、純粋な友達なのだ。
そして今日、私は新刊(BL本)を日向と共に購入しに本屋へと行く約束をしており。こうして別の授業を受ける彼を、わざわざ教室まで迎えに来てあげている…という状況だ。
なのに日向のヤツ…寝てるだと?
許さん!! 超胸キュン純愛BLのライトノベルを夜更しして読んでしまっていた…とかの理由でもない限り、許さんからな!!!!
そう内心で日向への制裁をどうしてやろうかと考えているうちに、私は彼が居る教室へと辿り着く。
ドアノブに手を掛け、扉を開けようとしたが。私はふと手を止めた。
ドアの上部に付いたガラス窓から教室内をちらりと覗いた際、日向以外の人影を確認したからだ。
室内には日向の他に、もう一人だけ。
この旭陽太という同級生、話したことは無いのだが知らない者は誰もいない傑物で。長身イケメンは通常装備、頭も良く運動神経も良いらしく、ただ立っていたり歩いているだけで殆どの女子は振り返り。熱い視線を投げ掛けるという。
正直、私には良く分からないが……。
まぁ、顔は綺麗な顔してるなぁ……受け攻めどっちでもいけそうなイケメン度だなぁ……とは思っているけどね。
と、まぁ。そんな旭君が、友人の日向と二人っきりで教室に居るわけで……二人っきりということは、二人以外には誰も居ないというわけでしてね。はい。
いや、普通だったら平気でズカズカと入りますよ? けど、なんか……なんとなーく、入りづらい気配を私の勘が察してしまった訳ですよ。オンナモドキを自覚している私でも、一応はXX染色体ではあるので。本能が告げる警告には、一旦従って立ち止まった次第な訳ですよ。はい。
……と、そんな事を一人思考していると。室内で動きが起こった。
教室の一番後ろの席(日向のヤツ最初から寝る気だったな)に座る日向は、私が居るドアの前から良好な視界で確認出来たのだ。
机に突っ伏して眠りこける日向の寝顔を、前の席に座ってジッと見詰めていた旭君が。突然腰を上げたかと思うと、静かに日向へと自身のご尊顔を近づけていく。
私は固唾を飲むのも忘れて、視力に全神経を集中させてその様子を見守った。
旭君は無防備に晒した日向の寝顔に、自身を重ねようとする。だが土壇場で動きを止め、熱の篭った眼差しで日向を見詰めると。そっと長い指で髪を掬い、頭部に軽く唇を触れさせた。
私は詳細な場面を余すことなく見ることが叶ったこのドア窓の位置に、心から感謝した。
それから、旭君は名残惜しそうな表情で日向から身体を離し。
「授業、終わったよ」
と、日向の身体を揺すり始める。
私は間もなく起き上がり、私の元へと慌てた様子でやって来るであろう日向への対応方法を脳内でシュミレーションしつつ。
(このままドアと同化して、あの二人を観察……もとい、見守る壁と成り果てたい……!!!!)
と、ガチで思うのであった。
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