普通に生きて普通に死んだ。そして神から【普通】というギフトを貰い異世界へ転生した。

youさん

普通に死んだ

よく生きた。


寿命というやつだろう。


私の命も、もう数分と持たないだろう。


思い返せば、良いことも悪いことも程ほどにあったが悔いの無い人生だった。


地方の役所に就職し、気が強いが根の優しい妻を娶り、3人の子宝にも恵まれた。


その子供たちも巣立ち、今では、かわいい孫達が5人もいる。


ああ、妻には苦労をかけた。常に頭が上がらなかったが感謝しかない。私の事を忘れろとは言わないが、早く気持ちを切り替えて笑顔で楽しい余生を送ってくれることを切に願っている。


子供や孫が私の名前を呼んでいる。


そうか、泣いてくれるのか。


忌野際でもう少し生きたいと願うのは人生に悔いがあるからなのだろうか。


いや、家族に看取られて逝ける。これ以上の幸せは無い。


「また、来世で会いましょう。」


私を呼ぶ声が遠くなるなか、妻の声だけは鮮明に聞こえた。


ああ、ああ、勿論だとも。伝えたいが、もう声を出せるだけの力が無い。


はは、ここにきて悔いが出来るとは、我ながら俗な性格をしている。


だが、笑顔で逝ける。


いい人生だった。


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