第4話・妖滅
「じゃあ、説明しようかね。今日の特別授業は、小花に特別授業の説明をして、理解してもらう事になるかな」
亘先生はそう言うと、チョークを手に取って黒板に、
『妖滅』
と板書した。ご丁寧に読み仮名を、「ようめつ」と付けてくれる。
「小花、特別授業っていうのは、この妖滅のための訓練だ。そして、ものすごーく簡単に言うと、妖滅っていうのは、悪者をやっつける正義の味方をするっていう事だ」
「漫画の話ですか?」
思った事をそのまま口にすると、
「俺も、西園寺家に連れて行かれて、その説明を受けたとき、そう思ったよ」
と、後ろの方からちい兄の声がした。
振り返ると、ちい兄は苦笑していて、簡単には信じられないよなあと呟く。
「でも、漫画やアニメじゃなくて、本当の事なんだよね。君たち四家は、妖魔を滅する役目を持っている。この周央学園は、そのための訓練校みたいなものなんだ。まぁ、半分は一般の生徒なんだけどね」
「へ、えー……」
嘘でしょ、と思ったが、亘先生も周りのみんなも、真面目な表情をしていた。
信じられないけど、どうやら本当の事らしい。
「四家は、東宮司、西園寺、南京極、北御門。そして一部の分家には、妖気を浄化し、妖魔を滅する力が備わっている。今ここに居る、東野、浦西、南条、北見は、妖魔を滅する力を持っている分家だね。他の分家……B班やC班は、四家が居るA班のサポートや、妖気の収集、妖魔の捕獲、術式の強化を行っている」
ますます漫画の世界だ、と思った。
亘先生は黒板に、東、西、南、北、その下に、東宮司、西園寺、南京極、北御門、と板書した。
そしてさらにその下に、裏東、東野、浦西、西那、裏南、南条、北浦、北見、と書き込み、「うら」が付く苗字に丸を付けた。
「四家と共に妖魔を滅する力を与えられているのは、この分家。丸を付けた方は、それぞれの分家の筆頭。ここで言うなら、浦西家は西の筆頭分家で、西園寺家の影」
「影?」
「そう。影の分家は、本家を守る者であり、共に戦う者」
「守る……」
そう言えば、前に渚ちゃんがそんな事を言っていたような気がする。
この特別授業で妖滅の事を知った今、渚ちゃんが言っていた「守る」というのは、本当に「守る」という事なのだろうと私は思った。
ちらりと隣の席の渚ちゃんに目を向けると、彼女は真剣な表情でこくんと頷いたんだけど、私は守られるだけじゃ嫌だと思う。
だって、渚ちゃんは友達だ。私だって、渚ちゃんを守ってあげたい。
「そして、四家をまとめる者として、周央がある」
亘先生は、東西南北をまとめてくるっと円を描き、その上に、周央と書いた。
それを見て、私は思った。
分家が本家を守るように、四家にも守るものがあるのだ、と。
そしてそれが、「周央」なのだと。
「わかった。四家は、周央を守っているって事なんだね」
私がそう言うと、亘先生は苦笑した。
「残念、ハズレだ。周央は四家をまとめる者、導く者ではあるけれど、守るべき者ではない。周央も、影なんだ。周央や四家、全ての分家が守るべき者は……」
「え?」
亘先生が周央の上に板書した苗字を見て、私は心臓が止まるかと思うくらい、驚いた。
亘先生が書いた苗字は、「真中」だった。
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