第7話 幼馴染はドン引く

「まあ、たしかに結構変わったからね〜。私だよ私、唯織いおりだよ」


「え、唯織姉さん?」


 俺は思わず間抜けな声を出してしまった。

 だって仕方ないじゃん?こんなん想像出来るわけ無いし。


「本当に変わったね〜」


「私ももう社会人ですから!」


 2人で話していると、美鳥が割り込んできた。


「ちょっと宗太郎、この人だれ!?」


「ああ、この人は荒崎唯織あらさきいおりさん。紗月さんの友人の娘さんで、よく家に遊びに来てたんだよ」


「へ、へぇ……」


 昔からスタイルは良かったんだけど、引っ込み思案な性格で黒髪だった。

 だいぶ垢抜けたと思う。

 というかなんか美鳥の様子がおかしい。

 ……どうしたんだろうか。


「ねーねー宗ちゃん!このことはどんな関係なのー?」


「宗ちゃん!?」


「普通に友達だけど……。それがどうかした?」


 何か美鳥が動揺してるけど、どうしたんだろうか?

 そんな様子を見て唯織姉さんはニヤニヤしてる。


「ふっふっふ……。これは面白いことになりそうだ……」


「??」


 俺にはよくわからんかった。

 とりあえず美鳥がうるさいので、落ち着かせるために部屋へ行くことにした。


「で、何がどうしてこうなったのかな?」


 俺は美鳥に壁に押し付けられていた。

 いや、なんかこういう展開前もあった気がするな……。

 ……デジャブを感じる。


「あの人とどういう関係なの、宗太郎」


 安定のお目々真っ黒ハイライト無し。

 俺はため息をつきつつ答える。


「だから、昔なじみのお姉さん。多分、美鳥も一回ぐらいあったことあるはずだけど……」


「おっ邪魔ー」


 そう言ってドアを開けて入ってきたのは唯織姉さん。

 ……タイミング最悪ーっ!

 美鳥は顔をグルンと唯織姉さんの方へ向けて、睨みつけるように見たと言うか睨みつけた。


「お熱いねー、お二人さん」


「あなたには関係ないでしょう」


 美鳥はそう、冷たい声で吐き捨てた。

 モウヤダホントニコワイタスケテ。


「関係なくはないよー。だって〜、宗ちゃんは私と〜婚約してるんだから!」


「「…………はい?」」


 チョットナニイッテルノカワカンナイ。

 そんなことした覚えがないんですけど!?


「宗太郎……本当?」


 ああやめてその目でこっち見ないで怖いから!


「そんな事実は一切ございません。……というか、なんでそんな嘘をつくの?」


 俺がきっぱり言うと、唯織姉さんはキョトンとした顔になった。

 そして、少し困ったような表情をした。


「え、だって宗ちゃん、小さい頃、私と結婚する! って、言ってくれたじゃん」


 ……記憶にねぇ。

 つか俺そんな事言ったのか?


「宗太郎……嘘だよね?」


 ヤバい美鳥がヤンデレモードに突入してる。

 目がマジすぎる……。


「い、言いましたかね?」


 俺がしどろもどろになりながら聞くと、唯織姉さんは身を捩らせながら答えてくれた。


「言ったよー。私が中学生の頃、まだ小学生にもなってない宗ちゃんが『ねえねと絶対結婚する!』って言ってくれたんだよー。ああ、もうあの頃の宗ちゃんが可愛すぎて可愛すぎて……。おっと涎が」


 唯織姉さんはそう言ったあと、自分の口元を押さえた。

 どうしようこの人めっちゃ気持ち悪い。

 美鳥も引いてるけど、お前に引く権利はないと思うんだ、俺。

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