第131話 謎のアンデッド集団


「五十ほどのアンデッドの群れが以前にアーガ王国を打ち破った平野で現れた。すぐに退治して欲しい」


 俺とバルバロッサさんは、玉座の間にてアミルダに命令されている。


 アンデッド。


 それは死者が稀に血肉を求めて暴れ回るという魔物の類だ。


 この世界でもちょくちょく出現したりするが、どういった理由で死体がアンデッドになるかは解明されていない。


 ただひとつだけ言えるのはかなり厄介な魔物であることだ。


 人に比べれば身体自体は脆い。だが既に死んでいるので、剣で腕を斬ったり腹を突いても平気で戦い続ける。


 奴らを倒すには足を切断するなどで動けなくするか、首を切断しきるか燃やして灰にするかをしなくてはならない。


「アンデッドの群れとは面妖でありますな。奴ら、なかなか数が集まらないのであるが」

「確かに違和感はある。だがアンデッドが出た以上は討伐せねばな。奴らは生きた人の血肉を求めるので放置はできない。リーズも念のためにバルバロッサについていけ。怪我人が出ていたら困る」

「確かにそうでありますな! ではいざ行かん!」


 こうして俺とバルバロッサさんは馬に乗って出陣した。


 朝の太陽が照り付ける中。馬を全速力でかけさせながら以前に野戦築城した平野へと急ぐ。


「うむ! このばん馬というのはよい! 吾輩が乗っても走れるのがよい!」


 バルバロッサさんが腕組みしながら、乗っているばん馬に感激している。


 あの人が両手を離しているのは今さら気にしてはならない。熟練の武者ならば両腕離しは普通にある。


 例えば日本の鎌倉武士は馬を走らせながら、両手で弓を放っていたのだから頭おかしい。何なら彼らは鎧を着ていたので重装騎馬弓兵とかいうロマンらしい。


 僕の考えた最強のユニット感あるよな。


「うむ! 吾輩に馬が与えられたのだから、今まで以上に働かなくてはならぬのである!


 更に無双を拡大するつもりなのかこの人……本当に魔王にでもなりそうだ。


 そんなことを思いながら俺達は平野へと到着した。


 周囲には野戦築城の跡である馬防柵などが残っているが、すでにアーガ兵の死体の類はない。


 それらはアミルダが片付けたのであろう。死体を放置していたら病気の原因になるからな。


「お、おおおおぉぉおぉ」


 辺りを見渡していると周囲から声が響く。平野の奥の森の茂みから腐った死体――アンデッド――が大量に出て来た。


 うっわ気持ち悪い……なんであんなのが動くんだよ。動くなよ。


「リーズよ、お主は見ているがよい! こんな者ども、吾輩ひとりで十分である!」

「まあそうでしょうね……逆に聞きたいのですが、バルバロッサさんひとりで十分でない敵はどんなのですか?」

「ドラゴンの群れが街を襲ってきたら、撃墜が間に合わずに困るのである!」

「それもう敵というか天変地異の類では……」


 ドラゴンが街に一斉に襲い掛かって来るって、もうそれファンタジー世界なら終焉の日とかそんなのじゃなかろうか。


「他にも敵の数が多すぎるなどあるがまあよい。むん!」


 バルバロッサさんが大槍を横に振るう。その空圧で敵のアンデッドが十体ほど、腰辺りで上半身と下半身に分かれた。


 この人って風魔法使いだよな。魔力無限の。


「おおおお! 我が威風を受けるがよい!」


 バルバロッサさんが槍を空に掲げると、プロペラのように回し始めた。


 これは必殺のバルバロッサ旋風だ。竜巻が発生して周囲のアンデッドは飲み込まれ、その風圧で粉微塵になった。


 威風(物理)なんだよな完全に。


「これで終わりなのである! なんとも張り合いのない!」

「お疲れ様です」


 随分とあっけないがこれで終わりか。


 まあアンデッドも相手が悪すぎたな。たぶんあいつらアーガ兵の死体のアンデッドだろうが、二度もバルバロッサさんと戦うことになるとは不運な。


「では帰りましょうか」

「うむ!」







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 バルバロッサの戦闘を遠くの高台から見ていた者がいた。


 ひとりはボラスス教皇。もうひとりはボラススの祭服を着ていて顔はフードで隠れている。


「あれがハーベスタ国の最強決戦兵器、バルバロッサです。ボラススの兵士で勝ち目はありますか?」

「ないですね、なんですかあの化け物は。アンデッドの方がよほど人間してはないでしょうか」

「それは否定できぬが、勝ち目がないでは困るのです」

「わかっています。兵士では勝ち目がないので、魔物を使うしかないでしょう。ポーションなどで超強化したドラゴンなどならば、あるいは肉薄することも可能かもしれません」


 フードの男は遠くをにらみながら呟く。だがその視線はバルバロッサではなく、他の者へと向けられていた。


「……教皇の仰っていたことは本当なんですね」

「もちろん、私は聖職者として嘘をつきはせぬ」

「なら全て本当なんですね……許せない。僕の全てを奪ったあげく、アーガ王国を裏切って大勢殺すなんて……!」


 フードの男は憎悪の声をあげ、ボラスス教皇はそれを愉悦そうに眺めている。


「そうでしょう。貴方の怒りは自由であらねばならない。貴方の全ては自由であらねばならない」

「許せない……僕はアレを許せないです」

「ならば復讐しなさい、アレを処分するために存分に腕を振るいなさい。貴方にはその権利がある!」


 彼の視線の先にあったのはリーズだった。



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そろそろ隔日投稿にしようか迷い中です。



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現在24話目です。

一気見しやすい文量になってきました。

よろしければ是非お願いします!

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