後日談 6話 溺愛していたはずの彼女が、なぜか俺にハーレム形成を要求してきた件

 「『混ぜてください』……ったって、そんなの灯花が許すわけ……」


「いいよ」


(へっ……?)


 俺は、裸を隠すようにして毛布ブランケットを胸元に抱える灯花を二度見した。


「えっ。ちょ、灯花ちゃん……?」


 おい待て。

 待ってくれ。


 今、起きたことをありのままに話すぞ。


「溺愛していたはずの彼女がなぜかNTRに目覚めて、俺にハーレム形成を要求してきた件……?」


「ふふっ、なんかラノベのタイトルっぽいね」


 うん。ちょっとそれっぽく言ってみたもん……


 ……じゃなくてさぁ!


「えっ、いやっ。どうしちゃったの、灯花?」


 頭に『??』ばかり浮かべる俺を、灯花は「驚いたゆきくんも可愛い♡」と言って、ひたひたと、前を隠した裸体のまま俺に擦り寄った。


「ゆきくんのこんな焦った可愛い顔が見られるなんて、思ってもみなかったよ。皆で暮らすのって、新しい発見があって楽しいね……?」


(えっっ)


 そういう……?


 灯花ちゃん……俺の彼女は。

 三年という月日を経て、ナニカに目覚めてしまったらしい。

 端的に言うと、天使が人界の欲に染まって、エロ――こほん。愛らしい堕天使になってしまったというか……


 灯花は、呆然とする俺の脇をすり抜けて、同じように目を見開くふたりの元に歩み寄ると、その手を片方ずつ握った。


「私にはできないことが、ふたりにならできるかもしれない」


「「!?」」


「ねぇ……綾乃ちゃんと涼子ちゃんは、ゆきくんにどんな顔をさせてくれる?」


(……!?)


「灯花……?」


 俺は思わず、ふたりの手をにぎにぎにこにこする灯花の手を奪い返し、自分の後ろ側に引き寄せて引っ込める。

 その様子に、灯花は嬉しそうな笑みを浮かべた。


「ヤキモチ……? ゆきくん、可愛い♡ そんなことしなくても、私の全部はゆきくんのものなのに♡」


「いやっ、これは……そうじゃなくて……!」


 なんかオカシイ気がして……!

 本能的な危険の香りを察知したっていうか――


 いくら俺が、最後には灯花のところに帰ってくるとわかっていても、ここまで許容してもいいものなのか?


 灯花ちゃん……

 ひょっとして、性癖が歪んじゃった――


 いや。いやいや。

 いくら性癖が歪んだとしても、だ。


「……俺は、灯花が好きだよ」


 ぽつりと、確かめるように呟く。

 握った手に、きゅう、と僅かな力を込めて。


「坂巻と荻野が可愛い――いや、魅力的だろうが、そうじゃなかろうが。もし仮に、ふたりとも俺のことをいまだに好きでいてくれているのだとしても。俺は別に、ふたりとシたいとかは思わないし……灯花がいてくれれば、俺はそれで――」


「……でも。ゆきくんもたまには――」


 言いかけて、ハッとしたように口を噤む灯花。

 多分だけど、「今の俺に何を言っても無駄だ」ということを理解してくれたのかもしれない。

 そう。俺は案外、一途な人間なんだよ。

 たとえ彼女が許可を出そうが推奨しようが、他の女と寝るなんて……

 気持ち的に、なんか無理。


 少なくとも、そう思ってる。


 口に出さずとも俺の気持ちをすべて理解した灯花が、困ったように扉の外を見つめる。その視線の先には、あんぐりと、しかしどこか期待するような眼差しでこちらの様子を伺う荻野と坂巻がいた。


 ……荻野。頼む。今だけでいい、涎を拭いてくれ。端から漏れてるから。


 坂巻……

 瞳の奥がきらきらしているように見えるのは気のせいか? 気のせいだと言ってくれよ。


(ああ……どうしてこんなことに……!?)


 俺は再び、最愛の彼女――灯花を見た。

 灯花と目が合う。

 長い睫毛に、大きな瞳をぱちくりとさせて……

 

 天使が、笑みを浮かべた――



※あとがき

 ちょっとご相談です。

 本編では、真壁は一途なことを一貫させていました。(の、つもりでした)なので、この先のハーレム展開を許すか許さないか、後日談なのでとどこまで遊んでしまっていいのか、悩みどころなのです。


 個人的には、ヒロインズが仲良く主人公とイチャついて、皆が幸せならいいかな~みたいな日々を綴れたらと思っているのですが(主人公の誠実さは残すつもり)、やるのか、やらないのか。一線を越えるのがアリなのか、ナシなのか。ギルティorノットギルティ。こんな「なんでも許しちゃう系彼女」アリなのかナシなのか。

 この作品を今も、後日談になっても楽しんでくださる読者様の意見を伺えればな、と思います。


 ナシが多いようなら【if後日談(ハーレムルート)】みたいな感じで、ハーレム無双が嫌な方はスルーできるように本編とは切り離して下の方にひっそりとぶら下げておいておきます。(元々後日談はそんな感じですが)


 コメント欄にて、この作品の読者様がどちら寄りが多いのか教えていただけると嬉しいです。今後の方針として。【アリ/ナシ】一言だけでもいいです。是非、よろしくお願いします。

(Twitterみたいな投票機能欲しいですね)


※次回は後日談は少しお休み、if◇◇編を公開予定です。よろしくお願いします。


※追伸、カクヨムからリワードお小遣いがほんのり入りました。これも作品を読んで応援してくださる皆様のおかげです、本当にありがとうございます。おかげで今月も好物のアイスが食べられます。ありがとうございます。

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