修学旅行
ta-KC
修学旅行
あれはまだ僕が高校生の時の話です。
幼いころから不思議なことと縁があり
高校生になってもそんな経験を何度かしていました。
霊感と言ってしまったらそうなのかもしれません。
現にあの時は霊感があるとその経験を友達に自慢気に話していたこともありました。
話すことで興味を持ってもらい
それに満足感すら感じていた・・・
そんな幼い考えがもしかしたらあの時のことを招いたのかもしれません。
高校生生活をとある私立高校で過ごした僕は最大のイベントと言ってもいい
修学旅行を迎えることになりました。
通っていた高校が日本の北側だったので必然的に南になるのですが
私立ということもあって他の公立などに比べるとすこし豪華なようで
まず国内と国外を選べることができて
国外はオーストラリア
国内は関西と沖縄
この話をするとほかの高校に通っていた友達は
「めっちゃ豪華じゃん!!」
と声を揃えました。
僕はもともと沖縄に興味があって国内を選びました。
「どうせなら海外に行けば?」
と言われましたが国内すらもあまり歩き回ったことがないのに
海外に行くというのはなんだがもったいない気がしたのと
沖縄のきれいな海やその気候に魅力を感じていたのが一番でした。
そんな期待の中やってきた修学旅行
たまたま仲の良い友達も国内の旅行にかたまり
グループを作りみんなで楽しい旅行が始まりました。
工程は全5泊6日
初日と3日目は関西で過ごし
そのまま沖縄で2日間過ごす。
教師は
「これも勉強の一環で、その地元の風土など・・・」
といろいろ話していましたがそれを凌駕するほどのレクリエーションが用意されていた。
関西の3日間
俗に一般的な修学旅行先の奈良の東大寺や京都の清水寺といったお決まりはあったが
ユニバーサルスタジオジャパンで一日過ごしたり
自由時間をある程度の
体裁を保ち自由に過ごすことができたりと
お決まり以外は友人との楽しい旅行だった。
そんな楽しい思い出をカメラに残しながら歩き回り
ホテルに帰るとそれもある意味お決まりの恋バナや
ホテルという状況からよくある
「おふだがあるんじゃない?」
みたいな怪談話にまでうつっていった。
その時は決まって僕の話を聞きたがり
僕もそれに自慢げに話をしていた。
だが特段その時は不思議な現象などはなく
ただみんなでその話に好奇心をもち驚かしたりと
なんというか本気でその話を信じてるとかではなく
雰囲気をみんなで楽しむといった感じだった。
そんな三日間を過ごし舞台はついに沖縄
テンションはこの三日間で一番の高まりを見せていた。
「楽しみだな~ね?僕君」(名前をふせるため僕とします)
と友人のS君は僕に話をふる
「本当に楽しみ!!またみんなで写真とかとろ!!」
そういって関西から沖縄へと移った。
到着初日
二日目が豪華なレクリエーションということもありこの日は
地元の風土の勉強でつぶれることに
だが初めての土地の歴史
特に“戦争”についての話・・・
日本でも沖縄は特にそういった歴史の濃い土地
好奇心とかではなく何となくそういった話は知っておいたほうがいいと
僕自身感じていた。
「うわ~南国だ~」
飛行機からおりて感じた肌をなでる風が暖かった。
その感覚はみんなが感じていたのかこの三日間のなかでも
さらにテンションは高く感じた。
「ではここからバスで移動する」
先生がバスへの誘導を行う
整列して歩く中
ここに来る前に話したS君がなにか気になった。
顔色が悪いとまでいわないが
なんというか雰囲気が暗いというか
彼の周りがなんとなく暗く見えた。
「・・・」
気にはなっていたがそのままバスに乗り込む
座る位置がたまたまS君の後ろの席になった。
「・・・・」
無言で彼の見ていた。
その空気というかオーラというか
彼はいつも明るいのになぜか彼はその時は
暗い感じだった。
「S君・・・大丈夫?」
後ろから彼に話しかける。
「うん・・・ちょっとね・・・」
なんだか気分が悪い感じがした。
その時
すっ・・・
彼の左肩に手が置かれる
「え!!!」
声が出てしまった
「どうしたの!?」
S君は驚いて僕に話しかけた。
「いや、あの・・・」
躊躇した。
明らかに置かれた手が次の瞬間には消えていた。
見間違えのように感じたがそれはあまりに鮮明で
そして人離れした色の白さだった。
「僕君?」
「いや、じつは・・・S君の左肩に手が・・・」
「え!!」
彼は驚きぼくの顔を見返す。
言ったあと後悔した。
こんなこと頭がおかしいやつ
もしくは嘘と思われるに違いない。
そんな風に思った矢先
「マジで?」
彼の顔は驚きで満ちていた。
その様子のおかしさに
「S君?」
疑問を投げかけた
すると声を小さくして僕の耳元に顔を近づけて
「あのね・・・実はさっきから左肩がすごく重くてね・・・それで気持ち悪いんだよね。なんだか・・・」
そういって言葉を終えて僕の顔を覗き込んだ
「「・・・」」
二人で黙りお互いの顔を覗きこんだ。
「まぁ・・・あの・・・見間違いかもだから・・・・」
そう言葉を返すことしかできなかった。
S君は
「うん・・・・そうだよね・・・」
歯切れが悪い返事
だがS君の顔色は悪いまま
おたがいに黙ってバス移動をした。
場所は空港からとある防空壕に
ひめゆり学徒隊や戦争の歴史
そんな資料館をめぐりその一環で防空壕も入ることに
地元の方が案内するなか
S君は今日一番で体調がすぐれない感じだった
「大丈夫?」
声をかけるが彼はうなずくだけだった。
そして僕自身も防空壕に入ってから
洞窟の冷たさとは違う悪寒を感じていた。
(ああ、なんか嫌な感じだな・・・)
目が回るような感覚
そして生徒でざわめくなかに交じる
子供の声
気のせいかもしれないが
僕は気になり集中をかいていた。
「僕君どうした?」
「・・・いや、なにもないよ」
他の生徒から声をかけられるが何もなんでもないそんな感じでごまかす。
そしてほかの生徒が行っているように僕も写真をとる
パシャ
フラッシュをたいて使い捨てカメラのフィルムをまき
何枚も気をまぎらわすようにとりつづけた。
そのように時間を何とかやりすごしてその日は終わった。
ホテルは今まで一番豪華できれいな感じがした。
夕食をとり入浴をすまして部屋で友達と過ごしていると
違う部屋にいるほかの友達も集まってきた。
「おい!なんかS君が体調崩してった!!!」
「え!?」
驚きの声を上げた
だが
彼が体調がすぐれてないのは知っていた。
でも話を持ってきた彼らの様子が少し普通ではなかった。
「S君結構な熱だして今動けないって!!」
「まじか!!」
「ああ、今先生がS君だけ別室に移したみたい。」
「・・・」
なんだか罪悪感が心をよぎった。
「明日が本番なのに・・・S君よくなるかな?」
「うーん・・・よくなるといいけど・・・」
彼らの一人の言葉に暗雲をこめて返した。
すっきりしない気持ち
その日の朝はなにもなかったのに突然変わった彼の体調・・・
それはただの偶然なのだろうけど
気になったのは彼に手の話をした後からの彼の体調の崩れかたの早さだった。
なんというか意識してしまった。
そのために彼は・・・
そんな気持ちを抱きながらこの夜は眠りについた
翌日は晴天!とはいかないでも
曇天の空にほのかな光がさしていた
そんな中でもきれいに透き通る海にみんな感嘆の声を上げた
しかしそこにはS君の姿はない。
何とか参加したいという意思をしめしてついては来たが
やはり体調がすぐれないということでバスで待機していた
「いや~マジで沖縄最高だな!!」
友達は、はしゃぎ海でのレクリエーションを満喫していた。
その中一人が
「S君、こんな時に体調崩すなんて・・・残念だな・・・」
「・・・そうだな・・・なんか・・・申し訳ないな・・・」
友達の言葉にそう返すと
「なんで僕君が謝るのさ?体調の問題なんだから仕方ないことじゃん?」
「うん、まぁ・・・なんかな・・・」
歯切れ悪く浮かない感じの僕にそのあと友人がいろいろ話をしてくれて
明るい雰囲気に僕も心も解けて何とかその場の空気を楽しむことができた。
その日を終えて最後の夜
S君の情報は逐一耳に入った
やはり気分はすぐれないとのこと
早期の帰宅も考えられたが本人の意思と明日で終わるということを加味されて
そのまま今日も別室での宿泊となった。
大切な思い出を作るはずの修学旅行
そのなかでも沖縄という最高のシチュエーションを彼は楽しむことなく
終わりを迎えるのであった。
後日談
修学旅行は終わり日常が戻ってきた。
S君は沖縄から帰るとまるでその体調の悪さが嘘だったように
ぴんぴんとして
「なんか重荷?っていうのかな・・・そんなものが取れた感じかな?」
と話しながらその日を終えた。
僕はそんなS君の様子に安堵し
そして病は気からという言葉
または言霊といこと物があるが
これ同じで彼に何かの存在を知らせたことで
彼に何かかがついたのではと感じていた。
しかしそれを決定するものはなにもない。
そのような思いが頭をよぎって幾日か
修学旅行の写真を現像に出してそれが手元に戻ってきた。
五日間たくさんの写真を友人ととり
沢山の場所をおさめた。
その一枚一枚に目を通していく。
そして友達と映っているのは友達にもいるかどうか確認しようと
あの時の楽しみと共にながめていると
「あれ?」
なんだかおかしい・・・
あれほど撮った沖縄の写真が少ない
「いや、これすくないっていうか・・・」
そのままフィルムを確認する
「・・・やっぱり・・・」
フィルムの一部がまるで撮ってなかったように真っ黒になっているのが続いてる。
そしてそれはあるところを撮影したときのだとすぐにわかった。
「防空壕・・・」
言葉が漏れた。
あの時確かに撮ったはずの防空壕内の写真は一枚も撮影されてなかった。
真っ暗な写真ということならわかるが
その部分だけなにも撮影されないでフィルムを巻いた
そんな感じになってしまっていたのだ。
あのとき確かにフラッシュをたき使い捨てカメラのボタンを押した。
カチっと音が鳴り撮影をしたことを知らせてくれていた。
なのに・・・
それに不可解なのは同じカメラでそのあとの防空壕に関わるところ以外は普通に撮影できているのだ。
頭の中はあの時の冷たい感覚と写してはいけない何かがあった恐怖
またそのような存在をネタに目立ちたいという僕の浅はかな考えに
死んだ者は写すことを拒んだのでは?と思いました。
これ以降あまり自分のために幽霊話を話すのは控えるようにしました。
おしまい
修学旅行 ta-KC @take0520
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