なめくじくんの冒険

こと。

第1話

 テレビを見ていた家主のおばさんは、窓の外が薄暗くなってきたのに気づき、夕飯の下準備をしようとソファーから立ち上がった。


 台所にやってきた家主は、蛇口を捻ろうとしてシンクに張り付いているなめくじを発見した。なめくじは小さく、まだ子供のようだ。


「……割り箸、割り箸」


 家主は割り箸を取ってくると、なめくじを割り箸で挟んで窓を開けた。


『いや〜』


 ぽいっと外に出されると、なめくじは水気の多いところに逃げて行った。


「ん?………気のせいか」


 家主は台所の窓を閉めると、料理の下準備に取り掛かるのだった。


☆★☆


『僕はなめくじ!まだ子供だよ。

 親?僕はずっと一人だよ。

 毎日、天敵の鳥やカエルに怯える日々。

 唯一安心できる家の中を冒険して、落ち着く場所を見つけるんだ!

 いつか、家主にも認めてもらいたいな』


 なめくじくんは今日も冒険をする。

 どうやって家に入っているのかは、なめくじくんだけの秘密である。

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