襲撃
いわき市を順調に北上する。道路がまだ綺麗だ。
その道路がだんだんと汚れていく。都市から離れていくことを強く実感した。
次の中継都市は南相馬市なんだけど、ちょっと遠いので二日間ほど車中泊をした。
その際ちょっと外に違和感を覚えたんだけど、野生動物が出てきても困るので放置した。
「給油所があるから給油していきましょ」
途中、給油所があったので補給していく。質素なご飯と簡素な寝る所。それでも車中泊よりは全然マシだね。
「二日車中泊してやっと給油所って、なんか補給間隔が長いね」
「北は第三次企業戦争からの復興があまり進んでないのかもね。私は北にはあまり行ってないからよくわからないわ」
そっかー、と思いつつ助手席でのんびりする。疲労の関係で希ちゃんと運転を代わってあげたいけど、後ろに積んでるコンテナが二トンくらい重量があって、普通の人じゃまともに動かすことが難しいのだ。重量に振り回される。だから任せるしかない。
「僕もこれくらいの重量を背負っても運転できればなあ」
「ま、結構田舎だし大丈夫よ。そんなに疲れてないし。――伏せて!!」
急に希ちゃんが怒鳴った。訳もわからず身をかがめる。希ちゃんは身をかがめながら運転を継続する。
すると――
凄い衝撃音とともに何かが当たった衝撃がやってきた。何だ!?
「バッドランダーズに狙われた!! 黒い煙を吐いてない馬鹿デカ車に巨大コンテナ、狙うのも無理はないわ!ニトロで吹っ切るから――」
また衝撃が走る。車のフロントパネルから火が見える。
「まずい、エンジンがやられた。燃料は自動遮断されるし自動消火が付いてるから脱出する必要はない!! 戦車砲でも撃ってきてるの!? 涼介、迎撃できる??」
「エタニディウスで迎撃はできる、でも発射地点がわからない!」
「飛んできた方向に撃ち込めばなんとかなるわ! お願い!」
エンジンがやられて急激に速度が落ちたピックアップトラック。それでも走行は続けている。インホイールモーターでなんとか走れているのだろう。
三発目の砲弾は超高速エタニディウス速射砲で撃ち落とし、そのまま溜めた一撃を撃ち込んでデカいクレーターを作る。
車が止まってそのまま乗り込もうという思惑で突撃してきたバッドランダーズの人間はそれを見て逃げ出した。重機関銃を撃ち込んで皆殺しにする。一二ミリの砲弾は当たれば人間ははじけ飛ぶ。
「核融合機関の出力を一五〇パーセントまで上げて振り切る!室内に熱がこもるけど我慢して!」
時速三〇キロメートル出ているかどうかの速度でこの場所から立ち去る。バッドランダーズは深追いしてこなかった。僕の砲撃と重機関銃という重武装を見て無理に襲うのはやめたのだろう。
「なんとか逃げられたわね。ここで止まるのはまずいから次の給油所かミナミソウマでエンジンを見てみるわ。はあ、大丈夫かなあ」
「目で捕捉したけど、戦車砲よりは小さかったよ。でも一般的な手持ち銃とは一線を画す大きさだった」
「戦車はこんなところ通らないから、防弾仕様を貫通する据え置き式の対物砲だったのかもね。二発食らったからなあ……」
「なんとか動けてるんだよ、都市で修理しようよ」
慰めながらピックアップトラックはゆっくりと進んでいく。核融合出力を通常に戻したから時速一五キロくらいしか出ない。それでも前に進んではいるんだ。
運良く給油所に着いたので早速ピックアップトラックを駐車場に駐めてエンジンルームの状況を調べる。
結果は最悪だった。V八エンジンは完璧に破損していて修復不可能。捨てるしかないとのこと。
エンジンルーム内もめちゃめちゃでこれを直すだけでも時間がかかりそうということだった。
「全部綺麗にして、ガラクタとしてくず鉄処分するしかないわね。これだけでもかなりの重量があるもの。この先はインホイールモーターに頑張ってもらうしかない。ここにはガレージなんてないからミナミソウマまではエンジンはこのままね。他は綺麗にするわ。はあ、私のV八が……」
「車の前面部にも大きな穴が二つ開いちゃってるしね。酷くやられちゃったもんだ」
「これは直せるわ、資材があれば。ミナミソウマかセンダイにあれば良いんだけど。完全に直すなら芳賀技術研工業行かないと駄目だけどね」
ここにいる意味もないので、一泊した後すぐに給油所を出る。
時速は二〇キロメートルくらい。急遽電圧などを調整するための道具でもあった核融合電池を外し、核融合機関とモーターを直接つないで出力を上げているので、これでも速いほうだ。電池を経由した方が安定するんだけどね。
黒い煙を吐くトラックに追い越されながら街道跡を進んでいく。
たまに馬鹿でかいディーゼルエンジンを積んだスポーツカーに煽られるけど、重機関銃を向けてあげるとあっさりと逃げていく。銃弾欲しいから煽ったんじゃないの? 違うの?
時速一〇キロメートル程度なら僕でも走行するくらいはできるので、夜間も走ることになった。距離としては夜間も走れば一日で南相馬市だ。
ライトは付けず、目に標準装備された暗視機能を使って進む。オプションの強化暗視機能があれば良かったな、標準装備のは一応付いている程度だから。
朝になり、運転を交代。希ちゃんの代わりに僕が寝る。どちらかが寝ているから無言の時間ばかりになっちゃうけど、これも新しいエンジンを積むまでの我慢我慢。でもどれくらいのエンジンを買うんだろう。最高のエンジンは芳賀技術研工業本社で買うよね?
そんなことを思いながら車は進み、無事に南相馬市に着いたのであった。
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