One day

佐楽

それから

昼間特有のぼお、とした空気が窓の外に広がる。

柔らかな光に目を開くと、そこは自室のベッドの上だった。

制服のまま、寝ころぶなど珍しいことだ。



今日、俺は死んだらしい。



気づけば目の前にトラックがあった。

その瞬間こそ記憶にないが、それほどまでの衝撃をもって俺は吹っ飛ばされたのだろう。

しかし、今の俺は制服どころか体にも事故の形跡はなくはねられたのは夢の中でだったと言われれば信じてしまいそうになる程だ。

しばし、横になって天井を見ていると頭の横に置かれていたスマホが鳴った。

誰からだ、と確認する。

ロック画面に映し出された名前を見て今度こそ自覚する。


今日、俺は死んだ。


起き上がり、スマホを尻ポケットに突っ込むと家を出た。



空は青く、白い雲がゆっくりと流れていく。

どこかで工事でもしているのだろうか、カンカンという金属を打ち付ける音がする。

パンパン、と勢いよく布団を叩く音も聞こえた。

いつだったか学校を早退したときに見た光景を思い出す。

唯一違うのは、それだけ生活音が聞こえるのにも関わらず人影が全く見当たらないことだった。

店も開いてはいるが、店員も客もおらずただ商店街のテーマが流れているだけだ。

人の姿だけではない、雀やカラスといった動物の姿も無い。

それでいて公園からは鳥が一斉に飛び立つような羽音が聞こえた。


噴水から射出された水が陽光に照らされてキラキラと輝く。

キャアキャアと子供の甲高い声までする。

ベンチに座りながらふと思った。

ひょっとしてここはあの世ではなく、透明人間の世界なのではないかと。

再び、スマホが鳴る。

画面を確認して、また歩き始めた。



河川敷にくると、案の定そこには誰もいない。

短い芝生を踏みながら川辺まで行き、適応な石を拾って川面に投げると石はピッピッと滑るように跳びはねていき、静かに沈んだ。



飛行機が頭上を飛んでいく。

あの中に人はいるのだろうか、と厚い空気を割いて進んでいくような音を聞きながら思った。

「 」

急に呼ばれて振り替えると、白いワンピースの少女が立っていた。

少女はにこにこと微笑みながら、口を動かす。

「 」

何故だろう。

何も耳には聞こえないのに、彼女が何を話しているかわかる。

吹き抜ける風に弄ばれる長い髪を耳にかけた少女に俺は目を細めた。

「よ、久しぶり」

彼女は数ヵ月前に亡くなった幼馴染みだ。

先程からスマホには彼女からの連絡が来ていた。

「 」



彼女と並んで、川にかかる大きな橋を渡る。

振り返れば、生まれ育った町があった。

もう戻れないであろう景色を目に焼き付けて、俺は前を向いて歩いていく。

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One day 佐楽 @sarasara554

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