第5話「魔女の眷属」



「早速ドレスを直しましょう。

 手が足りないわ、あなた達も手伝いなさい」


魔女様の足下には三匹の蛇がいた。


魔女様は蛇さんたちに金色の粉をかけた。蛇達の姿が人の姿に変わっていく。


「紹介するわね左からアインス、ツヴァイ、ドライ。

 全員あたしの眷属よ」


アインスさんは百八十センチを超える長身で、緑の髪にひまわり色の瞳をしていた。優しそうな感じの二十歳ぐらいの青年。


ツヴァイさんは身長百七十五センチぐらい、青い髪でサファイアの瞳。私と同い年ぐらいの少年。


ドライさんは身長百五十センチぐらいで紫の髪と瞳、半ズボンの似合う年頃の可愛い男の子。


「この中にあなたからゆで卵をもらった子がいるわ。

 どの子かわかる?」


「はい」


私はアインスさんの前に立った。


「アインスさんですよね?

 私の家に毎週来ていたのは」


「正解よ。よくわかったわね」


「アインスさんは私の唯一のお友達ですから」


すぐにわかりました。人の姿になってもアインスさんのたんぽぽ色の優しい瞳は変わっていないから。


「時間がないからテキパキ行くわよ!

 アインスあなたはこのお嬢さん、名前はなんて言ったかしら?」


「カランです。カラン・クーン」


私は魔女様にカーテシーをした。


「カランいい名前ね。

 アインスはカランの面倒を見なさい。

 あたしが調合した特性の薬剤を入れたお風呂に入れて、化粧水で肌を整えて、そのあとは寝室に案内しなさい。

 カランあなたは明日に備えてお風呂に入ったあとはベッドでゆっくり休みなさい。

 ツヴァイとドライは引き裂かれたドレスの修繕担当ね。

 逆光魔法を使えば簡単に治せるけど、それじゃ味気ないからね。 

 真心を込めて一針一針縫うのよ」


「「「承知いたしました。魔女様!」」」


アインスさん、ツヴァイさん、ドライさんが声を揃えて返事をした。


「あの……本当にいいんでしょうか?

 私お金持ってないんですし、それに外泊するわけには……明日の朝ご飯の支度や、妹のドレスの着付けもしなくてはいけなくて……」


「気にしなくていいのよ。眷属を助けてもらったお礼いって言ったでしょ?

 あなたの家にはあたしが行くわ」


「はいっ?」


そういうと魔女様がパチンと指を鳴らした。


私は目の前に鏡が現れたのかと目を見張った。


艶のない茶色の髪、黒い瞳、ソバカスだらけの頬、古びた焦げ茶色のドレス……間違いなく目の前にいるのはどこからどう見ても私だわ。


「変身魔法よ。

 あたしがあなたの代わりに屋敷に帰ってあげる。

 朝食の支度も妹のドレスの着付けもあたしがするから心配しないで」


魔女様はそう言ってウィンクをすると、再びパチンと指を鳴らし私の前から消えた。


「カラン様ご心配には及びません。

 魔女様は超一流の魔術の使い手ですから」


アインスさんがニッコリと微笑む。


アインスさんの笑顔を間近に見た私の心臓がドキドキ音と音をたてる。


お友達の蛇さんがこんなにイケメンさんに変身するとは思わなかった。


その後私は魔女様のお店で、いたれりつくせりのサービスを受け、ふわふわのベッドで朝までぐっすりと眠ることになる。




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