第4話「魔女が営むレンタルショップ」
絶世の美女とはこういう人のことを言うのだろう。
「こんばんは、あの……勝手に入ってすみません」
「いいのよ、あたしの眷属に案内されて来たんでしょう?」
「眷属?」
「あなたをここまで連れてきた蛇のことよ」
蛇さんはこの方の眷属だったのですね?
でも眷属とは?
「ここはレンタルショップ
ドレス、靴、アクセサリー、屋敷、家具、馬車、本、なんでも貸し出しているわ。
時には人も貸し出しているのよ」
「人も……?」
「あなたにはあたしの眷属が随分お世話になったみたいね」
「先程も気になったのですが眷属とは?」
「忠実な従者であり、友人であり、家族であり、仲間のことね」
「そうなんですね」
「話はあの子から聞いたわ。
あなたは今とっても困ってるみたいね」
「えっ?」
「とりあえず明日卒業パーティーに身に付けていくドレスとアクセサリー、学校まで送り迎えする馬車と従者を手配すればいいかしら?
それからパートナーも必要ね」
「あの待ってください。私お金持ってなくて……」
「お代は結構よ。
あたしの眷属がいつもあなたからゆで卵を貰っていたみたいだからね。
あの子は毎週楽しそうに出かけて行って、あなたからゆで卵を貰っていたのよ。 よっぽどあなたのことが気に入っていたのね。
家でもゆで卵は食べさせてるのに」
蛇さんが毎週私の家に来ていたのはお腹が空いていたからではないのですね。
蛇さんも私のことをお友達だと思っていてくれたのかしら?
そうだったら嬉しいわ。
「まずはドレスから選びましょう?
何色のドレスがいいかしら」
店内には色とりどりの高級そうなドレスが並んでいる。
「せっかくのお話ですがお断りします」
「あらどうして?」
「卒業パーティーに参加するならお母様のドレスを着ていくって決めていたんです。
お母様のドレスを着て式に出れば、お母様も天国から卒業式を見ていてくれるような気がしたから。
だからお母様のドレスじゃないなら卒業式に出る意味がないんです。
わがまま言ってすみません」
「事情はわかったわ。
それならあなたのお母様ドレスを直しましょう」
「ですがドレスは妹に破られてボロボロです。それにドレスは家にありますし」
「このドレスのことね。確かにボロボロだわ」
店主さんの手には私のお母様のドレスがあった。
「お母様のドレスがどうしてここに?
部屋に置いてきたはずなのに……!?」
「転移魔法を使えばこのぐらい造作もないことよ」
「転移魔法!?
あの失われた魔術って言われている……!?」
「四百年も生きてる魔女のあたしには、転移魔法を使うなんて簡単なことよ」
「四百年?!」
目の前にいる女性はどう見ても二十代前半にしか見えない。
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