第11話

ところ変わって、豊橋市藤沢町にあるナイトクラブのママが暮らしている家にて…


よしえは、お世話になったナイトクラブのママに『少々条件が悪くてもいいから、生きてゆくすべがほしい…』と泣きながらコンガンした。


よしえの言葉に対して、ナイトクラブのママは泣きそうな声で言うた。


「よしえちゃん、ソートーつらい想いをしたよね…今回のリコンも前回のリコンも年下の夫の甘ったれた性格が原因だった…また再婚しても同じことの繰り返しになるからしない方がいいわよ。」

「そうする…」

「よしえちゃんは、生まれた時から良縁なんかなかったのよ…よしえちゃんがうちにいたときもドーハンのトラブルばかりを繰り返していたことは、アタシもよく知ってるわよ。」


ナイトクラブのママは、ひと間隔を置いてからよしえに言うた。


「よしえちゃん、この際だから一度実家に帰ってみたら?」


ナイトクラブのママは、よしえに一度実家に帰ってみることをすすめた。


しかし、よしえは実家ヘ帰ることができないとママに言うた。


「アタシ…実家に帰りたくないのです。」

「どうして?よしえちゃんのご両親は、よしえちゃんのことを心配しているのよ。」

「ママ、実家の両親はアタシが帰ってきたら困ると言うているのです!!」

「そんなことはないわよぉ…『つらかったね…お帰り…』と言うてくれるわよ。」

「いいえ!!アタシに出ていけと言うわよ!!」

「どうして否定的になるのよ…アタシだって、一度は失敗して三瓶(みかめ・愛媛県西予市)の実家へ出戻った経験があるのよ…両親はアタシが都会で失敗したと言うたけど、やさしく出迎えてくれたわよ。」

「ママ、アタシの場合は違うのよ。」

「そんなことはないわよ…よしえちゃんのご両親はシンソコからよしえちゃんのことを心配しているのよ。」

「アタシの場合は帰れん理由があるからイヤと言うたのよ…」


よしえは、グスングスンと泣きながら、実家に帰ることがイヤな理由をママに説明した。


「実家に帰ることができない理由は…弟にお嫁さんをもらえない状態がつづいているのです…アタシが実家ヘ帰ったら…弟が結婚できなくなるのです…弟は…今まで…ずっとガマンしていたのです…弟は、職場のためにガマンした…職場の上司からの信頼が厚かったので…お仕事をたくさん任されていた…だから…弟はガマンして、ガマンして、ガマンして…ひたすらガマンをしたのよ!!」

「よしえちゃんの弟さんは与えられた仕事や待遇面が悪くても、文句ひとつも言わずに職場のためにがんばっていたのよ…もうすぐ、上司の人がごほうびとして結婚相手にめぐりあえる機会を与えてくれるのよ。」

「そこへアタシが帰ったら、弟の幸せが壊れてしまうのよ!!」


よしえが言うた言葉に対して、ナイトクラブのママは『そんなことはないわよ。』と言うたあと、よしえにやさしくさとした。


「よしえちゃん、もしかしたらよしえちゃんが思い込みをしている部分があると思うよ。」

「思い込みなんかしていないわよ!!」

「よしえちゃんの弟さんは、そんなことは思ってないわよ。」

「ママがそのように言うコンキョはなに!!」

「困ったわね〜」


ママは、ふりそでの帯にはさんでいたキャメル(タバコ)の箱を取り出しながらよしえに言うた。


「よしえちゃん、アタシのきょうだいたちのお嫁さんたちは全員リコン歴があるのよ。」

「そんなんウソよ!!」

「ウソじゃないわよ…」

「コンキョはなによ!!」


ナイトクラブのママは、やんわりとした声でよしえに説明した。


「よしえちゃん、アタシのきょうだいたちのお嫁さんたちは全員前の夫からDVの被害を受けたのよ…全員、緊急避難で実家へ帰ったのよ…そのうちのひとりは、弟さんが新婚ホヤホヤでシアワセイッパイだったのよ…だけど、カノジョは実家の家族に受け入れられたのよ…カノジョの弟さんは、おねえさまを助けるために愛媛県の弁護士会に頼んで助けたのよ…その後、うちのきょうだいのひとりとサイコンしたのよ…その後、ふたりの娘さんが生まれた…きょうだいたちは全員福祉関係の仕事についているからやさしいのよ…」


よしえは、ナイトクラブのママの話しをひと通り聞いたが、納得しなかった。


その後、ナイトクラブのママはよしえに新しい仕事を紹介した。


よしえは、ナイトクラブのママからの紹介で挙母(こぼ・愛知県豊田市)のにマヨネーズ製造工場で住み込みとして働くことが決まった。


それから10日後のことであった。


よしえは、マヨネーズ製造工場の仕事を通じて、人生をやり直すきっかけができた。


気持ちにゆとりができたとよしえはよろこんだが、長続きしなかった。


恐ろしい悲劇の最後の幕があがった。

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